共同研究・競争的資金等の研究課題

2010年 - 2012年

昆虫の保有する共生器官-菌細胞塊の発生過程および特異的に発現する遺伝子群の解析

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
10J00282
体系的課題番号
JP10J00282
配分額
(総額)
2,100,000円
(直接経費)
2,100,000円

昆虫類は微生物との高度な共生関係をむすぶことにより新たな生物機能を獲得し、さまざまな環境や食物資源に適応していることがわかっている。そのような昆虫種の体内には共生微生物の維持のための特殊な共生器官が進化していることが知られている。中でも、昆虫の細胞内に共生細菌を維持する共生器官-「菌細胞塊」の分化・形成ついてはこれまで古典的な記載研究は行われていたものの、分子発生学的な解析が進んでおらず、その遺伝的基盤や発生学的な起源は未解明である。そこで本研究では、主にヒメナガカメムシの菌細胞塊を対象に、菌細胞塊に発現する遺伝子群を網羅的に解析する同時に、発生学的な解析を行うことで、昆虫類における共生器官の遺伝的基盤と進化発生学的な起源を解明することを目指した。
本年度は、これまで取得した器官・形態形成を制御する転写因子群について、ヒメナガカメムシの共生器官形成に対する影響を検証するため、Dll、Ubx、abd-AについてRNAiによる発現抑制解析を行ったところ、胚発生時の菌細胞塊形成に顕著な影響がみられ、正常な菌細胞塊の形成が阻害された。さらに、in situハイブリダイゼーションの結果、菌細胞塊に特異的な発現を示す遺伝子が明らかとなり、その遺伝子が菌細胞塊形成の制御に関わることが示唆されだ。また、次世代シークエンサーで取得したヒメナガカメムシ成虫の菌細胞塊と中腸に由来する配列データのアセンブルおよび相同性、発現解析を行ったところ、上述の転写因子は成虫の菌細胞塊にも特異的に発現していることが明らかとなった。これらの成果は昆虫類の共生器官形成に関するきわめて新規性の高い知見であり、今後の当該分野の研究発展が期待される。加えて、ヒメナガカメムシ類の組織より検出された新規任意共生細菌について、他のカメムシ類195種への感染を調査したのち、微生物学的同定を行いこの細菌の暫定学名を提唱した。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-10J00282
ID情報
  • 課題番号 : 10J00282
  • 体系的課題番号 : JP10J00282

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