基本情報

所属
九州大学 大学院工学研究院 准教授
東京理科大学 研究推進機構 総合研究院 客員准教授
学位
博士(工学)(2018年3月)

J-GLOBAL ID
201801015240903410
researchmap会員ID
B000327541

外部リンク

 

地球温暖化を始めとして環境保護の動きがより一層活発化しています。2019年のCOP25にて125か国・1地域が2050年までにカーボンニュートラルを達成する野心的な目標を掲げました。この時、日本や米国、中国などは声明を出しませんでしたが、2021年のCOP26で日本と米国は2050年、中国は2060年にカーボンニュートラル達成を目指すことを表明しました。

メディア等では、電化や水素化、二酸化炭素吸収技術、再生可能エネルギーの利用がフォーカスされています。これらの技術にはトライボロジー技術が基盤を担う部分が多数あります。例えば、電化では電気自動車の歯車が高速回転することによる疲労破壊、転がり軸受の電食が代表的です。水素化では、圧縮機等でシール部分において摺動により水素がリークしない必要があります。したがって、石油・石炭に代わるクリーンなエネルギーを安定に利用するにはトライボロジーの技術が重要であることは自明であるといえます。

一方で、これらの技術は2050年までにどの程度実現可能か見通せない状況であります。そこで既存機械システムにおける省エネも欠かせない技術です。トライボロジー分野において、摩擦係数を減らすことは直接的にエネルギー効率向上に寄与していますが、実際には産学官における長年の弛まぬ努力によりこれ以上の摩擦低減は厳しい状況である摺動部も数多く存在します。また、摩擦が低減したとしても、わずか0.01の摩擦係数低減ではエネルギー消費から考えるとインパクトは薄いです。そこで、従来の潤滑剤開発や材料開発とは異なる摩擦を制御する潤滑システムの構築を目指しています。具体的には、摩擦表面に電位を与えることで、潤滑剤の吸着構造を制御し、低摩擦かつ安定な摩擦状態の維持を目指しています。このシステムを構築することに成功した場合、吸着膜が脱離するような高温環境でも安定な吸着膜形成が見込まれること、水を主体とした潤滑油の利用が可能などが期待できます。また、摩耗も抑制することから製品寿命が延長され、LCA(ライフサイクルアセスメント)評価としてもカーボンニュートラルに貢献できると考えられます。摩耗に関連する研究として、摩耗の抑制だけではなく、自己修復やリサイクルといった関連で摩擦材料の開発を行っています。 

以上の研究は基礎研究・可能性検証に留まっています。応用研究としては、自動車等の機械システム向けにイオン液体の潤滑油添加剤の開発を行っています。現在ではイオン液体単体においては既存のエンジンオイルよりも低摩擦を示す物質群を見出すことに成功しました。また、宇宙観光・旅行市場の急激な成長に切り込むべく、宇宙用潤滑油添加剤としての開発も行っています。これも既存宇宙用潤滑剤より低摩擦を示すイオン液体群を見出しております。また、前述した摩擦制御を行うことで、摺動部におけるトラブルを回避することができ安全性を担保することができると期待できます。

一方で、エンジニアという観点から離れてサイエンスの観点から、固体表面上の水和構造の解析を行っています。もちろん、得られた結果から、潤滑油に水が混入した場合、水潤滑機械システムの構築など産業応用へも期待ができます。

また、大学教員は教育者でもあります。講義における教育や研究室に配属された学生の研究指導は言うまでもありませんが、トライボロジーを身近に感じる教育を試みている最中です。小中高生向けはもちろん、トライボロジーに触れたことのない大人・社会人への教育活動も非常に重要と感じています。現在では、VRやメタバースといった分野も加速度的に成長しており、これを活用できるのではと考えています。VRにおいてはリアリティさが向上していますが、触覚を利用することでさらにリアルに近づくと考えられます。例えば、材料を変更したことにより滑る距離が変わることが、”動画”ではなく”目の前”で認識していると頭に残りやすいと思います。実際にVRChatにてこれを行っているトライボロジストがいます。私は、実際にVRセットとしてキットを配り、外部電場等で摩擦係数が変わることを”実際に手を動かして”感じることが将来的にできると期待しております。


委員歴

  15

受賞

  15

論文

  37

MISC

  12

書籍等出版物

  5

講演・口頭発表等

  242

担当経験のある科目(授業)

  17

共同研究・競争的資金等の研究課題

  16

社会貢献活動

  14