2017年4月 - 2021年3月
比較史からみる生活の存立構造1600‐2000:家政・市場・財政
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
経済生活の維持・再生産の過程において、市場と個人の関係性の中では処理されにくい問題への対応がどのようになされ、それが当該の経済社会の政治・社会制度や人々の再生産の構造とどのような関係にあったのか。この課題への接近を深めるため、本年も月例の研究会を開催した。特に本年はプロジェクトの代表者・分担者個々の研究を進める点に重点をおき、各人の個別報告を積み重ねた。その中で、近世プロシアにおける早期の公的火災保険制度の導入の意義は領主の負担を国家が組織した互助組合が肩代わりしたことにあったこと、日本の領主(幕府・大名・旗本)の財政資料の中で、特に支出データの詳細な松江藩文書の分析から、庶民のために投下される資金はかなり限定されたものであったこと、17世紀後半~20世紀前半の村(大字)で作成された自治経費帳簿によれば、近世・近代の村落自治と村財政において、村人の生活保障の位置づけは高くなかったこと、そして家族・世帯の側からみれば、日常生活を成り立たせる要素は世帯・家族に担われ側面が大きく、それは「家事」労働の処理のされ方にも現れていたこと、などが明らかになってきた。本年度後半は、これらの個別研究の成果を、人々の「生活の存立」を支える「構造」の解明へつながる論点として整理・統合することを進め、その延長線上に、2020年春の社会経済史学会でのパネルの組織を企画した。企画案は採択されたため、代表者・分担者の4報告に加え、近代ドイツ都市史史・近世中国社会経済史の専門家にコメンテーターを委嘱し、今後の共同作業拡張への準備も進めている。
- ID情報
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- 課題番号 : 17H02548
- 体系的課題番号 : JP17H02548
この研究課題の成果一覧
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講演・口頭発表等
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社会経済史学会第90回全国大会パネル・ディスカッション「比較史からみる生活の存立構造ー17~20世紀の日本とプロイセンを手がかりにー」 2021年5月16日