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2009/11/23

ムダを減らすことはできないだろうか

Tweet ThisSend to Facebook | by tmiyakawa
事業仕分けが私たち研究者に波紋を投げかけています。仕分け人の方々の質問や結論が的を外しがちであったということは問題としてあるものの、こういった予算についての議論がオープンにされたことは非常に画期的で素晴らしいことであるのは間違いないと思います。
私は多数の学会や関係機関・団体より、予算を減らさないで欲しい旨の意見を文科省や総合科学技術会議に送ることを促すメールをいただきました。予算を減らさないでいただきたいのはやまやまなのですが、事業仕分けにおいての私たちへの基本的な問いをよく考えてみますとそれは、「ムダは無いのか、効率化できることはないのか」ということであると思います。その仕分け人の方々の個別の指摘に関しては適切とは言えないことがかなりあったと思いますが、研究者側の対応として、問いかけの核心の主旨には答えずに、個別の件に単純に反論して予算を減らさないようにして欲しいという姿勢については私は少し違うのではないか、と感じるわけです。
といいますのは、私がアメリカでの5年間の滞在の後に日本に帰国して以来、日本の研究システムにはなんとムダが多いことか、と強く感じてきたからです。

「ムダはないですか」という問いが主旨なのですから、「申しわけありません、確かにムダはありますので、改善する努力をいたします。しかし、重要なxxxやyyyの予算は減らさないでいただきたい」という姿勢で答えていくのが本道なのではないでしょうか。

ずばり、日本の研究業界のシステムにはたくさんのムダがあり、膨大な額の貴重な税金をムダに浪費している側面があると断言します。以下に私が思いついたものをリストアップしてみました。


・単年度予算の制度が巨額のムダを生んでいます。使い切らないと次年度減額される、ということで、不要なものを購入したりするわけです。その年度の予算にちょうどピッタリ合わせるように会計を一生懸命考える労力も多大なものでばかになりません。不正な研究費の プールが問題にされていますが、納税者の立場からすると自分がおさめた税金ができるだけ効率的に使われて欲しいと思うわけで、年度末の不要な物品の購入を促進するような制度そのもののほうが遥かに不正であるように感じます。

・先端的機器や輸入に頼らざるを得ない消耗品(抗体やキットなど)を北米・欧州から日本に輸入する場合、日本では間に輸入業者さんが入り高額のマージンを 取る、という日本特有の商習慣があります。この円高のご時世ですら、なんと、円ドルレート200〜300円 /ドル程度が普通に生じています。この排他的契約を持った輸入業者とさらに納入業者が間に入ります。先の大学向けの補正予算では、その多くが海外からの高額機器購入に使用されたと推測しますが、例えば、この円ドルレートを1.5倍程度(現在であれば135 円/ドル程度)を上限にするように規制を儲けるだけで莫大な額のセービングができるはずです。また、可能な場合は大学・研究機関が直接海外の製造元から購入するべきです。

・お古になった高額機器を全国レベルでオークションにかけるシステムを導入するべきです。私が以前訪ねた国内のお金持ち研究室では最先端の高額顕微鏡を 1〜2年毎に買い替えていらっしゃいました。ベンチに顕微鏡がずらりと並ぶわけですが、基本的に使っているのは最新のもののみ。最先端のすごい業績を出している研究室は最新の顕微鏡を常に持っていても良いとは思います。一方で、独立したての若手や裕福でない地方大学の研究者などにとっては、お古でもたいへん有り難いのです。使われなくなったお古は国内で有効利用されるべきでしょう。

・高額機器・高額設備は、できるだけ共同で使用するようにすべきでしょう。一部の裕福な研究所・研究室などでは、高額機器が多数設置されている一方で、回転率が悪くほこりをかぶっているようなものが多数あるという状態です。機器の共同使用によって回転率を上げることは、高額の機器が有効に使用されるようになるだけでなく、使用者間の情報交換などにより機器が使いやすい状態に保たれ、より容易に使用できるようになるという効果もあります。

・上の点と関連しますが、機関間の共同利用・共同研究を行いやすくするシステム・制度を拡充するべきだと思います。手前ミソになりますが、私たちの研究室では遺伝子改変マウスの「網羅的行動テストバッテリー」というシステムを用いて国内外の多数の研究室(80以上)と共同研究を行うことにより、独自の研究資源を効率的に活用することに成功しています。また、この種のものを効率的に推進するためには、研究室間、大学・研究機関どうしの研究費のやりとりを容易にするシステムが不可欠ですが、現在、これがありません。これは早急にトップダウン的に整備されるべきだと思います。

・各種の研究費の申請書・報告書に記載する情報には重複する部分・内容がたいへん多い一方で、それぞれの書類のフォーマットが大幅に異なっていることがムダを生んでいます。例えば、たいていの申請書にはその人物の研究分野、経歴、業績リストを記載するわけですが、この様式がそれぞれ異なっており、記載時、事務処理時のチェック、審査時に無用の労力を必要とすることになります。公的な研究費や民間のものも含め、これを統一することによって大幅なムダが省けることになるでしょう。これについては、まさにこのresearchmapのようなものを公的にデファクト・スタンダードのものにすることが良いのではないでしょうか。Researchmapの情報を常に最新のものにアップデートしておきさえすれば、研究者番号を申請書・報告書に記載するだけで良いということになれば、たいへん便利でムダが省けます。また、人事の公募時も各機関がそれぞれの様式のCVを要求することがありますが、これもresearchmapでの記載を要求するだけにする風潮が広まればムダに若手の労力を消費することがなくなり良いと思います(今の若手はたくさん公募に応募しなければいけませんので、この労力は無視できません)。

・研究費の報告書は、大幅削減か廃止すべきだと思います。まず、論文自体がそもそも究極の報告書になっているわけです。論文はオープンアクセスにすれば一 般の人も読むことができるようになりますので、少し高くついてもできるだけそのようにするべきです。一方、従来型の報告書はほとんど誰も読まない代物です。これのかわりに、発表した論文についてweb上でタイトル・アブストラクトとともに、一般の方々むけの簡単な日本語の解説をつけて公開し、 googleなどの検索エンジンでひっかかってくるようにする、というのが実質的で良いのではないでしょうか。特定領域統合脳の報告書については、Neuroinformatics Japan Centerが開発しているXooNIpsというシステムを使ってこれに準ずることを行っています。また、論文で発表した内容や関連する専門用語について Wikipediaかそれに類するものに解説を書くことを義務化する(その用語が未登録の場合)、ということも良いと思います。アメリカのSociety for NeuroscienceではWikipedia Initiativeを推進しているわけですが、そのようなことを日本でもやるのが良いと思います。

・実際の仕分けでも出てきましたが、研究費の種目について。現状では一つ一つが小さく、たくさん申請書・報告書を書かなければならずムダです。研究内容毎に申請書を書いているというよりも、一つ一つの研究費ではたりないのでたくさん申請書を書いているのが実体だと思います。これにより研究費取得に割かれている ムダな労力を削減することができます。ということで種目をシンプル化するということには賛成です。採択率が10%の種目があれば、90%の申請にかかった 労力はムダであったということですが、申請や審査には研究者の人件費がかかっている、ということを認識するべきであると思います。不採択に終わったときの徒労感も潜在的なムダと言えます。不採択の申請に要している労働力・心理的負担・費用は、潜在的な「埋蔵金」と考えることもできるでしょう。あと、申請書を書く必要 のない安定した後付けの基盤的研究費(過去の研究成果を反映した研究費)を創出するとさらにムダな労力を省くことができるように思います。研究費が「当たる」と か「外れた」というような言葉で一喜一憂するわけですが、もう少し安定したもの(評価に連動して額が決まり、all or noneにはならないようなもの)があったほうが良いと思います。

・日本には「出来レース」の研究費の公募というのがあるようです。トップダウン的に特定の研究を遂行するグループを決定する、という具合にしたほうが良い場合は確かにあると思います。その種の研究をアクティブに行っている研究室は日本では一つしかないかもしれませんので。しかし、その場合にはトップダウンで決めました、ということに公にすれば良いわけで、公募にしてムダな労力を多数の研究者に費やさせる必要はないように思います。「出来レース」の公募は大きなムダをうみますので、ぜひ廃止して欲しいです。トップダウンで決めるものは決めるもの、公募は公募、という実態にあった分かりやすいシステムにすることが全体の効率性を上げると思います。

・大学図書館で紙媒体の雑誌を購読するのはできるだけやめる方向にいくべきだと思います。非常に高額なわりには必要性は大幅に薄れてきていると思います。 国会図書館のような少数のところだけで購読しておけば良いのではないでしょうか。電子ジャーナルの購読についても、大学・機関ごとではなく国として出版社と交渉し、機関の規模による格差を是正して欲しいです。

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皆様、限られた研究資源で最大のアウトプットがでるような最適な仕組みをこの機会に考えてみるというのはいかがでしょうか?他にも各種の事務処理手続きや、教育・研究の仕組みで改良できること、潜在的なムダ、潜在的な「埋蔵金」や「埋蔵労働力」はないでしょうか?研究費の総額が今後、減ったとしても増えたとしても、それが限られていることにはかわりないわけです。
不思議なことに事業仕分けはこういったことを私たちが考える絶好の機会を提供してくれたように感じます。

And so...,
My fellow Scientists: ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.


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コメント
K_Tachibana2009/11/23 14:59:55
こちらのブログエントリーを読んで感銘を受けたので,twitter等で紹介しましたところ,大きな話題を呼んでおります.

機器や消耗品に関して,円ドルレート200〜300円 /ドル程度というのは必ずしも現状のレートを表していないと思いますが,途中に中間業者が入ってマージン・・・という部分については,私も同意見を持っています.

研究費の今後のあり方について,根本的から見直すべき時期に来たものと痛感しています.
tmiyakawa2009/11/23 15:58:55
K_Tachibanaさん、私のブログを紹介していただき、どうも有り難うございます。twitter、拝見いたしました。こういった情報が波のように伝わっていく様子は、うまく表現できませんが、とにかく素晴らしいことですね。あっというまに投票が32票にもなっており、私も感銘を受けております。

円ドルレートの件ですが、ご参考までに以下に「神経科学者SNS」に最近私が書きましたエントリーをコピペしてご紹介させていただきます。なお、その中に出てくる1500万円の高額機器につきましては、私が業者の方に現在の不況の中でいかに税金によって成り立っている研究費が貴いものか、ということについてご説明しつつ、粘り強く交渉いたしました結果、900万円弱になりました。それでも円ドルレート200円/ドルを少し下回るくらいなのですが...。

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円ドルレート 1ドル300円
1ドル300円といっても昭和のことではなく、今現在のことです。

先端的機器や輸入に頼らざるを得ない消耗品(抗体やキットなど)を北米・欧州から日本に輸入する場合、日本では間に輸入業者さんが入り高額のマージンを取る、という日本特有の商習慣がありますね。これによって他国と比して随分研究が不利になっている、という要因があるのではないでしょうか。

例えば、われわれが最近導入することにした高額機器でも(計1500万円程度)、(後でわかったのですが)円ドルレートがなんと300円になっておりまして(米国では大学への末端の販売価格が計400万円程度)、発注を見合わせ値引き交渉をしている状況です。これは極端な例ですが、どのようなものでも研究関連のものはだいたい相場は150円〜250円/ドルくらいのようです。
日本のバイオ研究関連の仲介業者は、外国のメーカーとexclusiveな独占販売契約を結んでいることが多く、その契約をバックに値引きはしない、という強気な状況があるようです。上の例でも、米国のメーカー側は、そういう契約なので直接売ることは残念ながらできない、とおっしゃっています。同等のかわりになる製品がない場合は、涙をのんで購入をせざるを得ない場合も多いようです。仲介輸入業者さんは、ゴージャスな黒塗りの外車で営業にいらしたりしてびっくりしますが、この景気の時代のすきまで活躍する優良なニッチ産業と言えるでしょう...。

独占販売契約を結んでいない場合は、外国のメーカーから直接購入できることもありますが、われわれはこれをできるだけ行うようにしています。しかし、大学や研究所の事務では英語での手続きを避けたいという意向が強く直接購入は普及していません。事務の方々として余分な作業が増えることになりますので。

先日も、日本での販売価格1100万円くらいのものを500万円台でアメリカから直接購入することに成功しましたが、実際、それで困ることはほとんどないんですね。アメリカのメーカーの技術者はたいていは親切で、こちらから英語で聞けばメールやSkypeのようなもので、かなり丁寧に教えてくれます(日本の仲介業者に聞くよりもほぼ確実によい)。故障でパーツが必要であれば、フェデックスですぐ送ってくれます。

このことは、日本特有の現象で、研究の国際競争力を弱めている一つの要因になっているのは間違いないところだと思います。1つの機器の直接購入に成功するだけで、大学教員一名の年棒相当、若手A・1年分、若手B・5人分、首相の冬のボーナス以上くらいの額を浮かしてしまうことができてしまうわけです。そういう容易にセービング可能なものが全国では山のようにあると考えられます。また、こういうマージンも貴重な国民の税金ですので、節約する努力をする必要があるのではないでしょうか。うまく、海外からの物品購入を制度化することができれば、国全体では巨額のセービングができることになるのではないでしょうか。

こういうことはオフィシャルでオープンに議論したほうがよいというご意見をいただきました。資料を集めて整理し、意見を提出してみても良いかもしれない、と思っています。
もしこれに関連した何かの情報(米国ではxx$のものが日本ではyy円!など)や資料などがありましたらお教えいただけますと有り難いです。
norico2009/11/26 17:04:13
宮川先生のご意見を受けて、私も考えてみました。
http://researchmap.jp/arai_noriko/%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0/index.php?active_action=journal_view_main_detail&post_id=1406&block_id=78&comment_flag=1#_78