共同研究・競争的資金等の研究課題

2007年 - 2008年

イオン液体中における分子集合系を利用する生体触媒反応

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
07F07133
体系的課題番号
JP07F07133
配分額
(総額)
2,200,000円
(直接経費)
2,200,000円

イオン液体(ILs)は、様々な陽イオンと陰イオンの組み合わせによって、既往の溶媒にはない興味深い性質を示す常温溶融塩である。近年、ILsは、酵素を用いた物質変換など広範囲にわたる応用において、環境への負荷低減可能な溶媒として注目されている。ILs中の酵素反応は、従来の有機溶媒中での酵素反応と比較して、高い転換率、高いエナンチオ選択性、高い酵素安定性を示すことが報告されている。しかしながら、酵素タンパク質は大部分のILsに不溶であるため、酵素をILsへ懸濁させたまま反応を行う一部の応用に留まっている。
これまでに我々は、陰イオン界面活性剤(AOT)と1-ヘキサノールを用いて、疎水性のIL([C_8mim][Tf_2N])中にナノメートルサイズの安定な水環境を提供するwater-in-IL(w/IL)型マイクロエマルジョンの調製に成功した(Chem.Phys.Chem.9,689,2008)。w/ILエマルジョンは、その微少水滴中に酵素を可溶化することができ、従来の油中水滴(water-in-oil:w/o)型エマルジョンと同様に、水と界面活性剤分子の層によって、ILとの接触による酵素の失活を防ぐことが可能である。
そこで我々は、w/ILエマルジョンに溶解したリパーゼPS(Green Chem.10,597,2008)と西洋わさびペルオキシダーゼ(Langmuir 25,977,2009)の2種類の酵素について、その触媒特性を検討した。その結果、w/IL型エマルジョン中の酵素活性は、イソオクタンとAOTを用いて形成する従来のw/o型エマルジョン中の酵素活性よりも高いことが確認された。また、w/ILエマルジョン中の酵素活性は、基質濃度、W_o(界面活性剤に対する水のモル比)、pH、1-ヘキサノール含有量といったパラメータに依存することを確認した。
本研究で開発したw/ILエマルジョン系は、酵素反応場、分離技術、タンパク質リフォールディング、ナノマテリアル合成、薬物送達技術など様々な分野に展開が可能な新たな分散系として、広範な応用が期待される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07133
ID情報
  • 課題番号 : 07F07133
  • 体系的課題番号 : JP07F07133