共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

海藻産強毒素ポリカバノシドAとDの標的生物分子の探索を目指した合成展開

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
18K05450
配分額
(総額)
4,420,000円
(直接経費)
3,400,000円
(間接経費)
1,020,000円

ポリカバノシドAは、1991年にグアムで食用紅藻オゴノリが突然毒化して致死的食中毒事件が起きた際に原因毒素として藻体から単離された、マクロライド配糖体である。事件後速やかに藻体から毒素が消失し入手不能となったため、申請者による全合成で絶対立体配置が決定し(1998年)、合成品を用いた共同研究によりアグリコン部が活性中心であることが判明した(1999年)。しかし、その後に幾つかの全合成例(1999~2013年)があるにも拘らず、いまなお合成供給が難しく、致死毒性発現機構の解明が滞っている。
本研究では①ポリカバノシドAと最近藍藻から単離された新規類縁体ポリカバノシドDの量的合成供給法を確立し、②基本情報としてその細胞毒性を調査し、③合成品をプローブ(探針分子)として標的生体分子を探索・同定し、④致死毒性への標的分子の関与の機構を明らかにする。ポリカバノシド類は毒素であるが、その毒性発現機構を解明することで、生命維持に重要な新たな生物学的知見が得られると期待される。
2018年度は、ポリカバノシドDの上部構造、中部テトラヒドロピラン環、下部糖鎖のそれぞれの合成を開始した。上部については、パントラクトンを不斉原料に利用し、さらに別の不斉分子を連結して必要な立体構造を揃える経路を検討し、合成の目処がついた。中部テトラヒドロピラン環の合成については、現在ラセミ体を用いて検討中であるが、当初のPrins環化経路のための基質合成に課題が生じたため、環化法を改訂して検討を続けている。下部糖鎖については、申請者の以前の合成を踏襲して着実に合成を進めている。
2019年度中に全体構築の検討に入る見込みである。

ID情報
  • 課題番号 : 18K05450