2021年4月 - 2024年3月
ヒストン修飾異常がげっ歯類の統合失調症様行動異常を生じるメカニズムの解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
統合失調症は、幻覚や妄想、社会性の低下や認知機能の低下を特徴とし、人口の約1%が罹患する重篤な精神疾患であるが、その生物学的基盤は解明されていない。同疾患患者の脳ではGABA合成酵素GADが減少するなど、GABA機能の低下が示唆されている。発達期の感染症や低栄養、社会環境など様々な要因が統合失調症の発症に関与していることが知られるが、これらがどのような機序でGABA機能低下をもたらすのかは不明である。統合失調症の脳では、遺伝子発現を調整するヒストンの修飾異常が観察され、ヒストンからアセチル基を取り除き遺伝子発現を抑制するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の増加による遺伝子発現の抑制がGADの減少とGABA機能低下をもたらしている可能性がある。本研究では、ラットを用いてヒストンアセチル化とGABA機能の低下、そして統合失調症様行動との関連について検証する。
本年度は、統合失調症モデルラットの脳におけるHDACの活性とGABA機能の変化を調べた。新生仔期のラットにNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬を反復投与し、成体期に脳を採取し免疫組織化学染色および定量的PCRを行った。内側前頭前皮質のアセチル化ヒストンH3K9 (H3K9ac)、パルブアルブミン、GAD67の蛍光免疫染色を行ったところ、統合失調症モデルラットにおいてこれらの物質の蛍光強度が低下している傾向がみられた。また定量的PCRの結果、統合失調症モデルラットでGad1がやや減少していた。またGAD67とH3K9acの二重免疫染色により、GAD67陽性細胞にはH3K9acが発現していることが確認された。今後、HDAC活性の抑制がGABA機能および行動異常に及ぼす影響を調べることで、統合失調症とヒストン修飾異常、GABA機能低下との関連を明らかにでき、同疾患の病因の理解と新規治療法の開発に貢献できると期待される。
本年度は、統合失調症モデルラットの脳におけるHDACの活性とGABA機能の変化を調べた。新生仔期のラットにNMDA型グルタミン酸受容体拮抗薬を反復投与し、成体期に脳を採取し免疫組織化学染色および定量的PCRを行った。内側前頭前皮質のアセチル化ヒストンH3K9 (H3K9ac)、パルブアルブミン、GAD67の蛍光免疫染色を行ったところ、統合失調症モデルラットにおいてこれらの物質の蛍光強度が低下している傾向がみられた。また定量的PCRの結果、統合失調症モデルラットでGad1がやや減少していた。またGAD67とH3K9acの二重免疫染色により、GAD67陽性細胞にはH3K9acが発現していることが確認された。今後、HDAC活性の抑制がGABA機能および行動異常に及ぼす影響を調べることで、統合失調症とヒストン修飾異常、GABA機能低下との関連を明らかにでき、同疾患の病因の理解と新規治療法の開発に貢献できると期待される。
- ID情報
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- 課題番号 : 21K03136
- 体系的課題番号 : JP21K03136