家屋内では、トイレや浴室など前方空間が限定された中での立ち上がり動作となることがある。そこで、前方空間距離の違いが立ち上がり時足圧中心軌跡に及ぼす影響を明らかにする目的で研究を行った。移動式の壁を用い、前方空間距離を400mm、500mm、600mm、700mm、壁無しの5条件で重心動揺計上での立ち上がり動作を実施した。結果、400mm条件では他群と比較して、有意に総軌跡長の延長、矩形面積の拡大、単位時間軌跡長の増加が認められた。また身長、座高に相関し総軌跡長が延長する傾向が認められた。先行研究においては前方距離の制限により立ち上がりはより垂直化し、下肢筋の活動が早期化するとされているが、足圧中心はより速く、広く移動する必要があり、そのために足部機能も重要であることが示唆された。重心動揺の面からは前方空間距離は身長、座高を考慮し、600mm以上ある環境設定が望ましい結果となった。(著者抄録)