2006年
有痛性外脛骨障害の4症例
関東甲信越ブロック理学療法士学会
- 巻
- 25
- 号
- 0
- 開始ページ
- 103
- 終了ページ
- 103
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- DOI
- 10.14901/ptkanbloc.25.0.103.0
- 出版者・発行元
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
【はじめに】外脛骨は1605年にBauhinにより報告された舟状骨内側に存在する過剰骨である.有痛性外脛骨障害への移行は急激な運動負荷や外傷を契機として起こることが多く,また足縦アーチとの関連性も指摘されている.今回,有痛性外脛骨障害と診断された4例5足について手術的・保存的治療の経過と疼痛改善のメカニズムを中心に報告する.<BR>【症例紹介】舟状骨内側部に疼痛が認められ,有痛性外脛骨障害と診断された4例5足.性別は男性1例・女性3例で平均年齢13.5歳(11-17歳).疼痛発生契機は,2足が過度な運動負荷・3足が捻挫によるものであった.5足とも外反扁平足であった.<BR>【X-P所見】5足ともVeitch分類:TypeIIであった.<BR>【初診時理学的所見】疼痛検査では, 全例において舟状骨内側部の圧痛,後脛骨筋の収縮時・伸張時痛,歩行時痛が認められ (VAS:80-90),疼痛のためつま先立ちは不可能であった.関節可動域検査でも, 全例において底屈・背屈ともに軽度制限が認められ,徒手筋力テストでは,足部外在筋・内在筋とも3から3+レベルであった.歩行時フットプリントは,全例において横アーチ低下が認められ,内側縦アーチは低下例・低下しない例が混在していた.<BR>【治療と経過】手術的治療(経皮的ドリリング)は1足に対して,保存的療法(後脛骨筋ストレッチ・足部内在筋強化・足底挿板療法)は4足に対して施行された.手術的治療の1足は,術後4週B-Kcastで固定され,術後8週より徐々にスポーツ復帰,疼痛は完全に消失した.保存的治療の4足は,スポーツ活動継続しながら4-5週(治療回数3-6回)で疼痛改善・消失したが,過度な運動負荷により軽度疼痛がみられることがあった.<BR>【考察】有痛性外脛骨障害は,外脛骨と舟状骨の線維性癒合部にストレスがかかり不安定性を引き起こし疼痛発生することが多いとされている.本疾患の疼痛改善には,外脛骨・舟状骨間の安定性の獲得,あるいは不安定性を引き起こすメカニカルストレス軽減の二つのメカニズムが考えられる.手術的治療(経皮的ドリリング)では骨癒合促進による安定性の獲得,保存的治療では後脛骨筋ストレッチ・足部内在筋強化・足底挿板療法によるメカニカルストレスの軽減により疼痛が改善した.今回,手術的・保存的治療例とも良好な成績が得られたが,手術的治療ではスポーツ活動不可やそれに伴う二次的な筋力低下,改善期間の長期化,保存的治療では再発の可能性や運動後の疼痛などの利点・欠点があり,これらを考慮した患者に合った治療が選択されることが重要である.
- リンク情報
- ID情報
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- DOI : 10.14901/ptkanbloc.25.0.103.0
- ISSN : 0916-9946
- CiNii Articles ID : 130006949294