論文

2016年

高齢者における立位時体幹傾斜角と転倒の有無,身体機能との関係性について

理学療法学Supplement
  • 山本 貴裕
  • 室伏 祐介
  • 芥川 知彰
  • 近藤 寛
  • 髙橋 みなみ
  • 小田 翔太
  • 橋田 璃央
  • 前田 貴之
  • 片田 秦椰
  • 細田 里南
  • 永野 靖典
  • 池内 昌彦
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2015
開始ページ
1651
終了ページ
1651
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2015.1651
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【目的】高齢者において脊柱の変形が転倒リスクを高める要因の一つであることが報告されている。しかし,脊柱の変形と転倒,身体機能との関係性に関する報告は少ない。本研究の目的は立位時体幹傾斜角と転倒経験の有無,身体機能との関係を明らかにすることである。【方法】対象は特定健診に任意で参加された高齢者127名(男性49名,女性78名)で,年齢70±3.9歳であった。過去1年間の転倒経験の有無をアンケートにて聴取した。測定項目として,立位姿勢の評価はスパイナルマウス(インデックス社製)を使用し,立位時体幹傾斜角を計測した。身体機能の測定項目として,筋力は握力を計測し,バランス機能はFunctional reach test(以下FRT),Timed up and go test(以下TUG)を計測した。そして,過去1年間の転倒経験の有無により立位時体幹傾斜角,身体機能との差があるのかを2標本t検定を用い検討した。また立位時体幹傾斜角と身体機能との関係についてピアソンの相関係数を用い検討した。有意水準は5%とした。【結果】参加者のうち,転倒経験のある者は18名,転倒経験のない者は109名であった。転倒群と非転倒群の比較では,立位時体幹傾斜角は非転倒群(4.9±3.9°)より転倒群(6.9±2.9°)が高かった(p<0.05)。FRTは非転倒群(28.8±4.5cm)より転倒群(23.5±4.1cm)が低かった(p<0.01)。また立位時体幹傾斜角と身体機能との相関関係はFRT(r=-0.262)で負の相関が認められ,TUG(r=0.383)で正の相関が認められた。しかし,握力との相関が認められなかった。【考察】本研究において転倒群と非転倒群の比較では,立位時体幹傾斜角,FRTとの間に有意差が認められた。しかし,TUGとの間に有意差が認められなかった。このことから,歩行能力の低下が生じていない高齢者において,立位時体幹傾斜角が転倒リスクを高める一因になっていた可能性が考えられた。これまでの報告で脊柱の変形により重心が前方へ移動することや,姿勢の動揺性が増大することは知られており,今回の結果からも体幹前傾姿勢が転倒を引き起こしやすくしていた可能性が考えられた。一方,TUGに有意差が認められなかったことは,これまでの多くの報告と異なる結果となった。要因として,対象が特定健診の参加者で,活動レベルが高かったことが要因であったと考える。しかし,本研究より歩行能力低下の生じていない高齢者において,体幹前傾姿勢の予防に取り組むことで転倒予防につながる可能性が示唆された。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2015.1651
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005418692
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2015.1651
  • CiNii Articles ID : 130005418692

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