MISC

2015年

回復期後期における脳卒中片麻痺者に対する装着型ロボットスーツによる歩行能力改善効果

理学療法学Supplement
  • 吉川 憲一
  • 水上 昌文
  • 佐野 歩
  • 古関 一則
  • 橋爪 佑子
  • 浅川 育世
  • 岩本 浩二
  • 永田 博司
  • 大瀬 寛高
  • 井出 亮太郎
  • 小嶋 亮平
  • 井上 希衣
  • 韮澤 光太郎
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2014
開始ページ
0151
終了ページ
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14900/cjpt.2014.0151
出版者・発行元
公益社団法人 日本理学療法士協会

【はじめに,目的】近年,ロボットを用いた歩行練習が注目されており,効果が期待されている。CYBERDYNE株式会社で開発されたロボットスーツHAL福祉用(HAL)は筋電位,足底圧分布,関節角度情報を基に,アクチュエータによって関節運動をアシストする装着型ロボットである。HALを回復期脳卒中患者に適用したRCTでは,従来の平地歩行練習に比べて歩行自立度の改善を認めたとの報告がある。しかし,客観的な歩行能力指標の改善効果についてのエビデンスは未だ不十分である。回復段階の患者への直接的な介入効果の検証は,自然回復や通常リハとの判別が困難である。そこで本研究ではHALを用いた歩行練習(HT)を,歩行能力の改善率がほぼ一定となった回復期後期の脳卒中片麻痺者に実施し,HTによる改善効果を明らかにすることを目的とした。本研究は更なるRCTに向けた継続中の非ランダム化探索的研究であり,今回は継続中のデータを用いて報告する。【方法】対象者の適用基準は,脳出血又は脳梗塞の初回発症であり,介助歩行が可能である者とした。除外基準は,指示理解困難な意識障害,重度の高次脳機能障害,重度の下肢関節拘縮,その他理学療法の実施に高いリスクを有することとした。適用基準を満たした患者は介入開始時点を決定するために入院時から毎週10m最大歩行速度(MWS)を計測し,前週および前々週を含めた3週分の移動平均値の改善率を観察した。改善率が連続する3週間で10%未満,5%未満,5%未満,以降5%未満を満たした時点を介入開始点とした。2014年1月~10月に基準を満たした8例を介入群,2例を対照群とした。介入群は男性5例,女性3例,年齢は平均58±18.2歳,発症から介入開始点までの日数は平均137.1±21.6日,対照群は全て女性,年齢は63歳と43歳,発症から介入開始の日数は128日と151日であった。HTは1回の練習時間を20分,週5回,5週間実施し,この期間は通常の理学療法を40分間とし,HT期間外および対照群と理学療法時間を同一とした。HT中は,良好な歩容を維持できる範囲の最大速度で実施し,練習毎にHALのアシストトルクの大きさ等を最適値に調整した。疲労の訴えや理学療法中止基準に基づく所見を認めた場合は終了とした。更に,免荷機能付歩行器(All-In-One,Ropox A/S)を転倒防止目的で使用した。対照群は通常の理学療法を60分実施した。主要評価項目は10m最大歩行テスト(速度:MWS,歩行率:MWR,歩幅:MWSL),10m快適歩行テスト(速度:SWS,歩行率:SWR,歩幅:SWSL),2分間歩行テスト(2MT)とし,副次評価項目はFunctional Ambulation Category(FAC),Fugl-Meyer評価法下肢スコア合計(FMA),Berg Balance Scale(BBS),Physical Cost Index(PCI)とした。各評価は開始時点及び5週後の終了時点に行った。解析は,介入群の各項目を介入前後で,正規性を確認し,対応あるt検定にて比較した。有意水準は5%未満とした。対照群は症例数が少ないため,MWS,SWS,2MTのデータ推移を目視にて検討した。【結果】介入群のMWSは49.1±20.6から60.6・27.3m/分に(P<0.05),MWSLは0.49±0.12から0.57±0.17mに(P<0.05),SWSは41.5±16.9から49.7±20.9m/分に(P<0.01),SWRは84.4±17.9から96.2±19.2歩/分に(P<0.001),SWSLは0.45±0.13から0.51±0.15mに(P<0.01),2MTは78.9±33.3から100.1±40.6mへ(P<0.01)とそれぞれ有意に増大した。MWRは98.5±20.7から105.6±21.6歩/分,SWRは98.5±20.7から105.6±21.6歩/分,BBSは46.4±6.57から48.6±7.82点,FMAは23.8±3.69から24.5±4.34点,FACは3.3±0.89から3.63±0.92点,PCIは0.69±0.40から0.52±0.33拍/mと各々増大したが,有意差を認めなかった。対照群のMWSは,1例目が82.6から70.1m/分と減少し,2例目は65.1から65.7m/分と微増した。SWSは1例目が61.5から63.2m/分と微増,2例目が45.9から54.4m/分と増大した。2MTは1例目が118.5から127.9m,2例目が86.8から98.1mと両者とも増大した。【考察】介入群の主要評価項目ではSWR以外の全項目で改善を認め,歩行速度の改善が一定となった回復期後期の脳卒中患者に対するHTの歩行速度改善効果を確認した。一方,対照群は2例ではあるが開始時点以降のMWSの改善は少ないまま推移する可能性を確認した。現段階では対照群の数が少なく,前後比較試験の域を脱しないが,今後は対照群のデータを増やした非ランダム化比較の結果を得,プロトコルの更なる検討を行った上でRCTを実施する予定である。【理学療法学研究としての意義】HALの理学療法機器としての更なる有効性の検証は,HALのような新技術の普及と新たな理学療法体系を切り開くといった意義がある。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14900/cjpt.2014.0151
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390282680553821184?lang=ja
ID情報
  • DOI : 10.14900/cjpt.2014.0151
  • CiNii Articles ID : 130005247872
  • CiNii Research ID : 1390282680553821184

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