共同研究・競争的資金等の研究課題

2016年4月 - 2020年3月

フェルスター型エネルギー移動を利用した新規高輝度赤色蛍光分析試薬の開発

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
16K05805
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,810,000円
(直接経費)
3,700,000円
(間接経費)
1,110,000円
資金種別
競争的資金

BODIPYとトリプタンスリンをポリエーテル鎖でつないだ以下の(1)と(2)の系を合成し,分子内のフルスタ―型エネルギー移動(FRET)と金属イオン認識能について検討した。(1)はBODIPYがFRETのエネルギードナー(D),トリプタンスリンがエネルギーアクセプター(A)であると想定した系,(2)は逆にトリプタンスリンがD,BODIPYがAであること想定した系である。(1)の系では,各種溶媒中で分子内のFRETが起ることが示唆された。しかし,Aの蛍光強度の著しい増大は観測されなかった。これは,励起波長がAの吸収極大波長に近いことが原因であり,Aの蛍光増大を起こさせるためには,Aの吸収を更に長波長側にする必要があったと考えられる。また,輝度は, 蛍光量子収率とモル吸光係数の積に比例するが,FRETの起こる系では,Dのモル吸光係数の値の大きさに関わらず,Aの輝度はAのモル吸光係数とAの蛍光量子収率の積に基づくことがわかった。
(2)の系では,極性の低い溶媒中では,基準物質との比較による蛍光スペクトルの変化からトリプタンリン(D)からBODIPY(A)への分子内FRETが確認された。一方,極性溶媒中では,分子内電荷移動(ICT)性の蛍光色素であるトリプタンスリンの吸収・蛍光が溶媒極性の増大に伴いレッドシフトすることで,BODIPYからトリプタンリンへの,即ちD, Aが入れ替わった逆のFRETも起こることを示唆する結果が得られた。更に,(2)の系については, 13種類の金属イオンに対する応答性についてアセトニトリル溶液中で調べた結果,Cu2+, Fe3+, Al3+に対して錯形成し,DからA及び,DとAが入れ替わったFRETのいずれもoffとなり,それに伴う蛍光スペクトルの変化により金属イオンの蛍光検出が可能であることがわかった。

ID情報
  • 課題番号 : 16K05805