共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2023年3月

失語症患者のコミュニケーション文脈に基づく喚語機能の促通・抑制メカニズムの解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
20K11165
体系的課題番号
JP20K11165
配分額
(総額)
2,470,000円
(直接経費)
1,900,000円
(間接経費)
570,000円

失語症者は、ある場面で特定の単語を話すことが困難であっても、同じ単語を意図しない場面においては話すことができるという「自動的行為と意図的行為の解離の現象」(Baillarger-Jacksonの原理)を示すことが知られている。我々は、この現象をコミュニケーション文脈による発話の変動として捉え、失語症者の喚語を促進・抑制するメカニズムについて自律神経活動との関連から検討することを目的としている。
失語症者の自律神経活動を調べた先行研究は、失語症者は覚醒状態が低く、これが言語パフォーマンス低下に関与する見解と、高ストレス条件下では高覚醒状態が引き起こされ発話が阻害されるとする指摘がある。我々は、健常者(N=29)に対し基礎的な喚語能力と生理的覚醒に関する予備的実験の分析を行った。健常群は、喚語が容易な場合には生理的覚醒は低く同時に覚醒時間は短く、一方で既知の単語に対し検索努力の高い課題で生理的覚醒が上昇し覚醒時間が長くなることが示唆された。また、単語への既知感が低い場合は、生理的覚醒は生じにくく、これは単語検索自体が生じないためと推察された。
これらの結果から、以下の仮説を検討した。1.失語症者は障害された言語機能を活性化するために、単語検索に負荷が高まると生理的覚醒が上昇し、言語機能を促進させる試みが生じる。言語機能が改善し検索努力が減少すると、生理的活性化は減少する。2.発話意図の高いコミュニケーション文脈では、喚語への負荷が高まり生理的活性化は上昇する。一方、コミュニケーション文脈が自動的な場合は、喚語はスムーズとなり、生理的活性化は減少する。
コミュニケーション文脈によって言語パフォーマンスの変動が予測され、喚語の促進と安定化のメカニズムを検証するため、実験プログラムの試案作成に取り組んでいる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K11165
ID情報
  • 課題番号 : 20K11165
  • 体系的課題番号 : JP20K11165