電子伝達（酸化還元反応）と共役したプロトンポンプのエネルギー変換機構に必須な構造要因を解明することを目的として、電子伝達系末端酵素ファミリーに属する、ミトコンドリアのプロトンポンプ性酸素還元酵素（シトクロム酸化酵素）と細菌の非プロトンポンプ性一酸化窒素還元酵素の構造機能解析を進めた。
シトクロム酸化酵素の解析：酸素還元部位に阻害剤であるアジ化物が結合した酵素の構造を1.85Å分解能で決定し、論文発表した。単量体酵素の酸化型と還元型の構造を、それぞれ1.85Å分解能と1.95Å分解能で決定するとともに、単量体構造が活性型であることを明らかにした。酵素に結合するカルジオリピンの構造を決定するとともに、その他の脂質分子に含まれるリン原子の同定と1.3Å分解能での構造解析を進めた。カルシウムイオンが結合した酵素の酸化型と還元型の構造を、それぞれ1.7Å分解能で決定した。酵素反応中間体であるF型の構造を1.8Å分解能で決定した。酵素反応中間体であるO型の構造解析を進めた。
一酸化窒素還元酵素の解析：酵素による電子供与体（シトクロムc、ならびにアズリン）の酸化反応の速度論的解析を進めた。反応速度に対するイオン強度およびシトクロムcの酵素結合部位の変異の効果を明らかにした。酵素による電子供与体（ユビキノール、ならびにメナジオール）の酸化反応の速度論的解析を進めた。キノールアナログ分子による阻害様式、および酵素のキノール結合部位の変異の効果を明らかにした。X結晶解析により3.0Å分解能の電子密度図を得た。低温電子顕微鏡解析により9Å分解能の像を得た。