MISC

2021年

1.5 mL チューブを用いた安価で簡便な精子の凍結乾燥保存法の開発

日本繁殖生物学会 講演要旨集
  • 楊 力
  • ,
  • 伊藤 大裕
  • ,
  • 大我 政敏
  • ,
  • 若山 清香
  • ,
  • 若山 照彦

114
開始ページ
P-24
終了ページ
P-24
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.14882/jrds.114.0_p-24
出版者・発行元
公益社団法人 日本繁殖生物学会

【目的】精子の凍結乾燥保存には,これまでガラスバイアルやガラスアンプル瓶が使用されてきたが,消耗品として比較的に高価であり,ガラスのため破損の危険性及び熱封入操作の必要性などの欠点が普及を妨げる原因となっている。そこで本研究では,安い汎用品であるプラスチック製の1.5 mL チューブに着目し,高真空度での凍結乾燥精子の保存が可能か,保存後に産仔の作出は可能か検討した。【方法】採取した精子はHTF 培地にて30 分培養後に1.5 mL のチューブに50 μL ずつ分注した。チューブの蓋をテープで鋭角に固定し,液体窒素で凍結後密栓式真空乾燥機において3–24 時間乾燥した。その後,真空状態のチャンバー内でのチューブの蓋を閉め密栓した。チューブ内の真空度については,テスラコイル検出器による非破壊検査で作製直後及び保存中の真空度を測定した。一部のチューブは水中で開き空気混入量を測定した。チューブは室温,4℃,及び –30℃ で最長一ヶ月間保存した。顕微授精は加水直後に行い,胚盤胞への発生率及び卵管移植による産仔率を調べた。【結果】作製直後のチューブは高真空だったが,保存期間及び保存温度の上昇に連れて真空保持率は低下する傾向が見られた。乾燥は3 時間以降は重量が減少しなかったことから3時間で十分なことが分かった。チューブ内の凍結乾燥精子を用いた顕微授精はどの区でも可能であり,体外発生率に差は見られなかった。室温,4℃ 及び –30℃で3 日間保存した後に作製した顕微授精胚を2 細胞期に移植した結果,いずれの区からも産仔を得ることができた(18% vs. 11% vs. 15%)。さらに,–30℃ で一ヶ月間保存したチューブからも正常な産仔を得ることができた。【考察】本研究により,凍結乾燥精子が安価な1.5 mL チューブでも保存できることが初めて明らかとなった。現時点では室温保存は3 日間が限界であるが,国内輸送なら可能である。長期保存には冷凍庫が必要だが,膨大な量のマウス系統を保存するためには安価なチューブは効果的である。

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.14882/jrds.114.0_p-24
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390289697239963904?lang=ja
ID情報
  • DOI : 10.14882/jrds.114.0_p-24
  • CiNii Articles ID : 130008103806
  • CiNii Research ID : 1390289697239963904

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