共同研究・競争的資金等の研究課題

2010年 - 2011年

マウス着床前初期胚におけるヒストンH3K79メチル化の機能

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
10J05945
体系的課題番号
JP10J05945
配分額
(総額)
1,400,000円
(直接経費)
1,400,000円

本研究ではこれまでに、マウス着床前初期胚ではHistone H3 lysine 79(H3K79)のメチル化が受精直後に消失し、その後も一定期間低いメチル化状態が維持されていることを報告している。本年度は、昨年度より継続してこの低メチル化状態の維持機構の解明を試みたのでその内容を報告する。まず、H3K79のメチル化に必須であるHistone H2Bのユビキチン化(ubH2B)とH3K79メチル化酵素であるDot1L(Disruptor of telomeric silencing 1 Like)について解析を行った。その結果、1細胞期胚ではubH2Bがほとんど見られなかった。一方、2細胞期胚では、Dot1LのmRNAの発現量が1細胞期胚と比べて65%程度まで減少しており、Dot1Lタンパク質が検出されなかった。これらのことから、1、2細胞期胚では異なる機構によりH3K79のメチル化が低く抑えられているものと考えられた。続いて、2細胞期胚ではDot1Lタンパク質を発現させることで、H3K79のメチル化が起こるのではないかと考えられたので、Flag-tagを付与したDot1Lのcatalytic domainを発現させたところ、2細胞期胚でのH3K79メチル化が検出されるようになり、これらのH3K79のメチル化誘導胚は2細胞期以降の卵割が起こらず、発生が停止した。
以上の結果より、1および2細胞期胚では異なる機構によって、H3K79のメチル化が起こらないよう制御されているというユニークな仮説を立てることができ、この現象は発生に重要であることが示唆された。今後は、H3K79メチル化誘導胚の遺伝子発現の異常の有無を解析することで、H3K79の低メチル化状態の初期胚での遺伝子発現制御機構におけるその機能を解明したいと考えている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-10J05945
ID情報
  • 課題番号 : 10J05945
  • 体系的課題番号 : JP10J05945