共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2019年3月

唐話の流行から見る漢籍受容―岡白駒とその周辺

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
17J04697
配分額
(総額)
900,000円
(直接経費)
900,000円
(間接経費)
0円

本年度は①岡白駒・沢田一斎が手掛けた「和刻三言」について、②岡白駒の漢籍研究における白話小説の位置づけについて、以上二点を中心に考察を進めた。
①白駒と一斎が手掛けた短篇白話小説集「三言二拍」の和刻本三作(総称「和刻三言」)について、前年度に引き続き調査を進めた。まず白駒施訓の二作が基づいた版本について検討し、二種類以上の版本を対校しながら本文を作り上げた巻があること等を指摘した。次に白駒、一斎による序文を手掛かりに、掲載作品の選択基準について検討した。白駒は非現実的な要素を持つ小説を選ばないが、この背景には『文心雕龍』等からの影響があったと考えられる。一斎は非現実的な小説も採録しようとしていたと見られ、二人の意識の相違が窺われた。採録する小説を吟味するという態度は、白話小説を単なる唐話の教科書ではなく、内容も積極的に読むようになったことの証左であり、この変化は後の読本の展開へもつながると推測している。
②①を踏まえ、白駒が『文心雕龍』から受けた影響を更に検討し、彼の白話文の捉え方について考察した。『文心雕龍』に関する検討は当初の計画には含めていなかったが、①での考察の結果から、検証する必要があると考えた。白駒には字義にこだわることによって白話文を解しようとする姿勢が見られるが、その背景にやはり『文心雕龍』への傾倒があったことが推測される。以上二点を含むこれまでの研究成果を博士論文にまとめ、本年度末に博士(文学)の学位を取得した。
最後に「敦煌変文研究会」の研究成果が発表されたことを付記しておく。敦煌変文は唐代の白話文で書かれており、本研究が扱う明清の白話文よりもかなり古くはなるが、通じる所も多い。報告者は白話文の理解を深めるため、研究会に参加してきた。本年度は「大目乾連冥間救母變文」前半部に関する成果が発表され、続いて来年度には後半部の成果が発表される予定である。

ID情報
  • 課題番号 : 17J04697