基本情報

所属
国際日本文化研究センター プロジェクト研究員
学位
博士(学術)(2017年9月 総合研究大学院大学)

J-GLOBAL ID
201701020722745800
researchmap会員ID
B000282517

研究テーマ:国体論、身体技法、政治教育

近代日本の国体論を主たる研究対象とし、筧克彦の思想と実践を中核に据えながら、その形成・展開・変容を実証的に解明を試みている。筧の思想的影響は宮中から植民地にまでわたる広範な人的ネットワークを通じて社会に浸透し、戦前の身体修養運動とも深く結びついていた。また、筧の弟子たちによる戦後への継承という問題にも取り組んでいる。また、これらの国体論研究と並行して、戦前の政治教育運動の多彩な展開や南原繁の政治思想、近現代奈良の地域文化史にも目を向け、戦前日本における思想と身体、あるいは地域と思想の相互連関という視角から近代日本政治思想史の多様な側面を照射することを目指している。

 

研究キーワード
国体論、筧克彦、近代日本政治思想、政治教育、ナショナリズム

 

専門領域
①日本政治思想史:国体論:筧克彦を中心とする近代日本の国体思想の形成・展開・変容、および宮中から植民地にまでわたる人的ネットワークと実践運動の実態の研究
②戦前の政治教育:男子普通選挙・無産者対策を背景とした水野錬太郎・守屋栄夫による政治教育論の研究
③戦後国体論:占領期以降における国体思想の継承・変容・伏在(三潴信吾を中心に)
④地域文化史:上司海雲の観音院サロンを軸とする近現代奈良の知的・文化的ネットワークの研究

⑤南原繁の政治思想:地方行政経験に着目した思想形成の研究、およびキリスト教信仰と国家論・ナショナリズムをめぐる諸問題の検討
⑥高等教育研究:コロナ禍におけるオンライン授業の実践と記録

⑦史料研究・アーカイブ一次史料の整理・公開:柳澤健関係文書・茅原華山書簡群などの目録作成と公開

 

研究概要
① 筧克彦及びその周辺を中心とする国体論者の研究

近代日本の国家思想家・筧克彦(1872–1961)の思想体系を中核に据え、国体論の形成・展開・変容を実証的に解明する。筧の神道的国家論や『古神道大義』『神ながらの道』『大日本帝国の根本義』などの著作群や論文を精緻に読み解くとともに、その思想的文脈を同時代の法学・哲学・宗教思想との交差の中に位置づける。また、筧は貞明皇后をはじめ宮中にも信奉者が多く、二荒芳徳のような社会運動家や、満蒙開拓青少年義勇軍を指導した加藤完治を通して植民地にまでわたる広範な人脈を有している。さらには「やまとばたらき(皇国運動/日本体操)」と呼ばれるスウェーデン式体操の所作を取り入れた神道思想に基づく身体修養を教え子たちと展開するなど、当時の国体思想の実践普及にも取り組んだ人物である。そのため、単に筧の思想だけでなく、その社会的広がりや実践運動の影響も含めた形で、その人的ネットワークの形成過程や実態についても研究対象としている。なおこれらの研究は『躍動する「国体」――筧克彦の思想と活動』(ミネルヴァ書房、2020年)をはじめとする著作や論文にまとめている。


② 水野錬太郎と守屋栄夫を中心とする戦前の政治教育

内務次官・内務大臣及び文部大臣や貴族院議員を歴任した水野錬太郎、および水野の側近として活動した植民地官僚で衆議院議員、塩竃市長を務めた守屋栄夫を主な分析対象として、戦前日本における政治教育の実態と構造を解明する。守屋が筧克彦の教え子でもあったことは、①の国体論研究と本テーマとの思想的連関を示す重要な接点である。水野が男子普通選挙の実施に対応すべく政治的知識の向上を目的とした社会教育カリキュラムの整備を志向し、守屋が無産者対策としての社会政策の一環として政治教育を構想していた点は注目に値する。両者の構想はたんなる「臣民」形成論に還元されない複雑な位相を持っており、政策立案者の思想と行政実践の両面を丁寧に検討することで、戦前の政治教育が内包していた多様な論理を浮き彫りにする。植民地統治との連続性にも目を向け、内地と外地にまたがる政治教育の広がりを視野に収める。

 

③筧の弟子三潴信吾をはじめとする戦後国体論の研究

筧克彦の門下生・三潴信吾らの活動に着目し、国体論が敗戦後の占領期・復興期にいかに継承・変容・伏在したかを実証的に跡づける。GHQの民主化政策の下で表面上は後退を余儀なくされた国体論が、学術・宗教・地域社会の各層においてどのように命脈を保ったのかを解明する。戦前思想の戦後的変容という問いに正面から向き合い、戦前と戦後の連続・非連続を問い直す。これは今後問うて行きたい課題でもある。


④上司海雲の観音院サロンを中心とする戦前戦後を通じての近現代奈良の文化史

華厳宗の僧侶・上司海雲(1906–1975)が東大寺観音院に形成した文化サロンを軸に、奈良における近現代の知的・文化的ネットワークを解明する。海雲は青年期において、当時奈良に在住していた志賀直哉や谷崎潤一郎、吉井勇らと親しく交流を有しており、志賀が東京に戻ってからは、海雲の塔頭である観音院が旧交を温める場となり、いつしか観音院サロンと呼ばれるような交流圏を形成していた。また、入江泰吉、杉本健吉、須田剋太をはじめとする写真家・芸術家たちとも仲が良く、戦後直後に窮乏していた彼らを支援し、雑誌『天平』や天平の会を主宰し、彼らに作品発表の機会を提供していた。このように、文人・宗教者・政治家・学者が交錯するこの場を通じて、近現代の奈良においていかなる文化が形成されたのかを追う。そして、地域文化史の視点から近現代日本思想史を再照射する。


⑤南原繁の政治思想研究

東京帝国大学総長を務めた政治学者・南原繁(1889–1974)の政治思想研究。西田の南原研究はもともと、南原が富山県の郡長を務めていた時期の地方行政経験に着目したことに端を発する。排水事業の推進や射水郡立農業公民学校の創設を通じた自立した公民の形成といった具体的な事績を検討するとともに、儒教と無教会派キリスト教信仰に根差した理想的な政治への希求という南原の政策思想の根底にあるものを明らかにしようとするものであった。こうした地方行政経験から思想形成を辿る視角は、その後ナショナリズム研究へ、さらには筧克彦の国体論研究へと発展する西田の研究軌跡の出発点となっている。なお、主対象を筧とその周辺としつつも、南原については現在もキリスト教信仰と国家論との緊張関係、戦時下における抵抗と協力の問題など、多角的な視点から注目を続けており、息長く取り組んでいきたい研究対象の一人である。この点から南原思想を読み解くとともに、近代日本の政治思想史的に位置づけることを試みている。


⑥ コロナ禍でのオンライン授業の取り組み

2020年以降のコロナ禍において複数の大学で実施したオンライン授業の実践を省察・記録した研究領域。政治思想史・近現代日本史などの人文系授業をオンライン環境へ移行する中で生じた課題と工夫を整理し、対面授業との比較を踏まえつつ教育実践の記録として論文化した。非常勤講師として複数機関を掛け持つ立場から、高等教育のICT化による可能性と課題を明らかにした。


⑦ 史料整理と目録作成

一次史料の発掘・整理・公開という研究基盤の整備にも積極的に取り組んでいる。戦前期の文化外交において活躍した外交官・詩人の柳澤健に関わる文書群については、その目録作成を行い、日文研オープンアクセスを通じて公開した。柳澤は外交と文学・芸術の双方にまたがる人物であり、近代日本の国際文化交流の実態を解明する上で重要な史料群である。また、大正から昭和戦前期にかけて活躍した言論人・茅原華山が佐賀県唐津の酒造業経営者・山内俊美に宛てた書簡群を中心とする文書についても、現地調査を経て目録化に取り組んでいる。


⑧ その他

上記7テーマの周縁に位置する研究・活動として、近現代日本の地域思想史・宗教史に関する論考、書評・史料紹介、学会発表などが含まれる。日本史研究会・日本思想史学会・大阪歴史学会・日本宗教学会・日本政治学会・東海宗教研究フォーラムをはじめとする多様な学術ネットワークへの参加を通じた研究交流も積極的に行っている。また、JSPSの科研費助成を受けた研究活動を継続しており、今後成果公刊を目指したい。

 


委員歴

  4

主要な論文

  21

主要なMISC

  22

主要な書籍等出版物

  20

主要な講演・口頭発表等

  52

担当経験のある科目(授業)

  14

所属学協会

  13

共同研究・競争的資金等の研究課題

  9