2004年2月
高クロム鋼の材料特性試験(III); HCM12A(2001年度材)の熱時効後の機械的強度試験
JNC-TN9400 2003-113
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- 開始ページ
- 49
- 終了ページ
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 機関テクニカルレポート,技術報告書,プレプリント等
高速炉における荷重条件には、高温・低圧で過渡熱応力が主体的という特徴がある。実用化戦略調査研究では、これらの特徴を踏まえ、高温強度と熱的特性がバランスよく、耐熱過渡強度に優れる高クロム(以下、Cr)フェライト系鋼を、高速増殖炉構造材料として適用することが検討されている。本研究では、高クロム鋼のHCM12A(2001年度FBR熱処理材)について、長時間熱時効後の基本材料特性および組織安定性を評価することを目的に、受入材と熱時効材(600$^{\circ}C$-3000h/6000h)(以下、時効)の引張試験、硬さ試験、衝撃試験、リラクセーション試験およびミクロ組織観察を行った。これらの試験の結果、以下の結論を得た。(1)0.2\%耐力および引張強さは、時効により若干低下する傾向がみられた。しかし、時効後もHCM12A(火力)およびMod.9Cr-1Mo鋼の受入材のそれに比較して高い値を示した。また、0.2\%耐力および引張強さは、HCM12A鋼材料強度基準試案で定められたSu値およびSy値を上回っていた。(2)破断伸びおよび破断絞りは、時効によりわずかに低下する傾向が見られた。また、破断絞りおよび破断伸びは、HCM12A(火力)およびMod.9Cr-1Mo鋼よりもやや低い値を示した。(3)衝撃特性では、時効にともない上部棚吸収エネルギーは低くなり、受入材の110J/cm2程度に対して、600$^{\circ}C$-6000h時効材では、70J/cm2程度の値を示した。受入材における上部棚吸収エネルギーは、Mod.9Cr-1Mo鋼のそれに比較し、1/2以下、HCM12A(火力)のそれに比較し約2/3であった。(4)応力緩和挙動については、時効材は受入材に比較し、0.10\%および0.30\%ひずみ制御ともに応力緩和量がやや小さかった。(5)ミクロ組織観察より、HCM12A(2001年度FBR熱処理材)の時効による脆化は、主として旧$\gamma$粒界・パケット境界およびラス境界に凝集・粗大化する炭化物および時効中に析出するLaves相により導かれる可能性が示唆された。