症例は50歳代男性で、検診のX線で異常を指摘され、CTで甲状腺右葉に腫瘍を認め、近医の穿刺吸引細胞診で甲状腺右葉乳頭癌と診断され、当院外科を紹介受診した。精査で甲状腺癌は甲状腺内にとどまっており、入院の上甲状腺全摘術が行われた。翌日夕刻から多弁、多動、不穏、感情不安定傾向が出現し、行動統制が取られず、脱抑制傾向となり、徘徊もみられるようになった。術後2日目当科への依頼で診察し、注意障害、認知機能障害を認め、せん妄と診断して介入を開始した。ゾルピデムを中止したが、不穏・幻覚状態を認め、緊急対応としてレボメプロマジン、塩酸プロメタジンで急速鎮静を行った。その後、家族の同意を得て精神科病棟に転棟した。家族との面談で30歳代から数度の精神科入院歴が判明した。転科後も著しい迷惑行為で保護室隔離とした。次第に認知機能の改善傾向を認め、易刺激性も軽減して隔離を解除した。試験外泊も問題なく経過し、転科32日目に退院した。