2020年4月 - 2023年3月
アルツハイマー病と加齢性難聴に共通するシナプス機能低下の分子メカニズム解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
本研究では, アルツハイマー病 (AD) の原因因子である amyloid-β (Aβ)を内耳有毛細胞で発現する Tgマウス (Math1E-Aβ42Arc) を用いて, 聴覚細胞と神経細胞の共通性に着目し, シナプス機能低下の誘導メカニズムの解析を進めた. これまでに行った共焦点顕微鏡を用いた解析から, Math1E-Aβ42Arc の内耳有毛細胞において変性による細胞の欠落やシナプス数の低下は認められなかった. 一方で, β-actin 染色では, 有毛細胞感覚毛の微細構造まで明確に観察することができなかった. そこで, 新たに走査型電子顕微鏡を用いて感覚毛の微細構造を調べたところ, Math1E-Aβ42Arcの有毛細胞感覚毛における顕著な微細構造の異常は観察されなかった.
これまでの解析結果を踏まえて, ADと加齢性難聴に共通して働く因子として, シナプス小胞リサイクリングに重要なイノシトールリン脂質 PI(4,5)P2 の代謝および代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)7の機能に着目した. 具体的には, Aβが mGluR7 を介して Phospholipase Cγ(PLCγ) の発現を亢進させ, PI(4,5)P2 発現低下を誘導する分子機構を想定した. 当該研究室では研究課題遂行期間中に, ゲノム編集によって mGluR7をコードする Grm7 遺伝子欠損 (Grm7-/-) マウス を独自に作製し, 系統の樹立を行った. Grm7 遺伝子欠損マウスは homo 個体の多くで致死を示す可能性が高く, 稀に産まれる産仔は小さく生後2週程度で致死となる. そこで, Grm7 遺伝子欠損 hetero (Grm7+/-) マウスと, Math1E-Aβ42Arc を交配させることで, 聴力機能を解析し, mGluR7 を介した Aβの神経毒性を検証している.
これまでの解析結果を踏まえて, ADと加齢性難聴に共通して働く因子として, シナプス小胞リサイクリングに重要なイノシトールリン脂質 PI(4,5)P2 の代謝および代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)7の機能に着目した. 具体的には, Aβが mGluR7 を介して Phospholipase Cγ(PLCγ) の発現を亢進させ, PI(4,5)P2 発現低下を誘導する分子機構を想定した. 当該研究室では研究課題遂行期間中に, ゲノム編集によって mGluR7をコードする Grm7 遺伝子欠損 (Grm7-/-) マウス を独自に作製し, 系統の樹立を行った. Grm7 遺伝子欠損マウスは homo 個体の多くで致死を示す可能性が高く, 稀に産まれる産仔は小さく生後2週程度で致死となる. そこで, Grm7 遺伝子欠損 hetero (Grm7+/-) マウスと, Math1E-Aβ42Arc を交配させることで, 聴力機能を解析し, mGluR7 を介した Aβの神経毒性を検証している.
- ID情報
-
- 課題番号 : 20K11618
- 体系的課題番号 : JP20K11618