研究最終年度の目標は、昨年度に構築したバブルを伴う２カ国経済の失業モデルの理論的結果を、数値シミュレーションを実行し、その頑健性を確認することであった。構築した理論モデルの重要な結果は、労働市場の発展の度合いを示す、賃金交渉力、失業手当、求人コストといった変数や、金融市場の発展の度合いを示す借入制約の強さが、２カ国の資本蓄積や失業に影響を及ぼすことであった。その理論的結果を数値計算による確認を行なった。上記で述べた変数の変化は、経常収支を通じて、２カ国の経済に影響を及ぼすと共に、比較的現実的なパラメーターのもとで失業率の動きを再現することができた。現在は、数値計算による結果をまとめ、海外ジャーナルへの投稿の準備を進めている。
また、最終年度は、昨年度に完成させた研究"Bubbles, uninsured risky production, and new growth-enhancing effect"を拡張し、さまざまな経済問題へと応用した研究も完成させた。既存の"Bubbles, uninsured risky production, and new growth-enhancing effect"を修正し、新しい理論的結果を加えた、"Short- and long-run impacts of bursting bubbles", "Asset bubbles, entrepreneurial risks, and economic growth"の二つの研究成果を発表した。また上記の研究は、バブルと総需要の理論的関係を分析した研究へと発展させることができた。
また、最終年度は金融市場の発展と経済の安定性の関係を分析した"Financial destabilization"を完成させ、現在海外ジャーナルへと投稿を行なっている。