共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2021年3月

放射光X線を用いた分子性結晶の高圧下構造解析手法の確立とフロンティア軌道の観測

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
19J11697
体系的課題番号
JP19J11697
配分額
(総額)
2,300,000円
(直接経費)
2,300,000円
(間接経費)
0円

本課題では有機系・無機系物質を対象として、放射光X線を用いた常圧・高圧下の精密構造解析及び電子密度解析を行った。申請者が新たに提案しているコア差フーリエ合成(CDFS)法を用いた新規電子密度解析手法[S. Kitou et al., Phys. Rev. Lett. 199, 065701 (2017)]を用いることで、様々な物質中の電子軌道状態の解明を行った。さらに、複数単結晶試料を用いた高圧下X線回折実験を行うことで、高圧下単結晶構造解析手法の確立を試みた。常圧下及び高圧下のX線回折実験はそれぞれ大型放射光施設SPring-8のBL02B1及びBL10XUビームラインで行った。
ペロブスカイト型酸化物YTiO3における3d1軌道に対応した蝶々型の価電子密度分布の観測に成功した[S. Kitou et al., Phys. Rev. Research 2, 033503 (2020)]。また、原子サイト上に局在する原子軌道とは対照的に、分子上に空間的に広がった分子軌道の直接観測を行った。比較的単純な結晶構造を有するダイヤモンド、C60フラーレン、(MV)I2、(TMTTF)2Xにおける結合電子の定量的な評価に成功しただけでなく[S. Kitou et al., Crystals 10, 998 (2020)]、近年、バルクディラック電子系として注目を集めるα-(BEDT-TTF)2I3とα-(BETS)2I3のS/Se置換効果を電子密度レベルで観測した[S. Kitou et al., Phys. Rev. B 103, 035135 (2021)]。
二次元層状物質VSe2の複数単結晶を用いた高圧下X線回折実験を行った。その結果、超伝導を示す5GPa以上で相転移に伴う超格子反射の出現とピークの分裂が確認された。今後はこれらのデータを用いて結晶構造の解明を目指す。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19J11697
ID情報
  • 課題番号 : 19J11697
  • 体系的課題番号 : JP19J11697