2010年 - 2012年
運動が視覚認知機能に及ぼす影響とその脳内メカニズムの解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
ヒトやげっ歯類などの研究から、運動が種々の認知機能を向上させることがわかってきた。しかし、その神経メカニズムは明らかになっていない。運動はさまざまな神経修飾因子の脳内濃度を変化させることが知られており、それらの神経修飾因子が認知に関わる情報処理機能を促進させている可能性がある。そこで、神経修飾因子の一つであるアセチルコリンが、視覚認知機能に必須な一次視覚野(V1野)の視覚応答に及ぼす修飾効果をサルおよびラットを用いて神経薬理学的手法により検討した。結果は以下のように要約される。
(1)アセチルコリンは、サルのV1ニューロンの視覚応答を主に促通的に修飾する、
(2)ラットでは促通と抑制がほぼ同程度に観察される、
(3)各刺激コントラストに対する応答を元々の応答強度に比例して増加あるいは減少させる応答ゲインコントロールによって、刺激コントラスト-視覚応答曲線を変化させる、
(4)促通性および抑制性の修飾効果のいずれもムスカリン性受容体が強く関わっていること、
(5)ラットV1では高次視覚領野へ情報を送る2/3層ニューロンで抑制が優位であり、皮質下領域へ情報を送る5層ニューロンでは促通が優位になる。
このことから、アセチルコチンは並列階層的に行われる視覚情報処理の経路毎に異なる反応修飾効果をもたらしていることが予想される。大脳皮質のアセチルコリンは大脳基底核の下にある前脳基底部のマイネルト核のコリン作動性ニューロンを起源しており、それらのニューロンが大脳全域に分布していることから脳全体の活動調節などに関わることが考えられてきた。本研究は、アセチルコリンが各皮質領野において、これまで考えられてきた以上に細やかで特異性の高い神経活動調節を行うことを明らかにした。
(1)アセチルコリンは、サルのV1ニューロンの視覚応答を主に促通的に修飾する、
(2)ラットでは促通と抑制がほぼ同程度に観察される、
(3)各刺激コントラストに対する応答を元々の応答強度に比例して増加あるいは減少させる応答ゲインコントロールによって、刺激コントラスト-視覚応答曲線を変化させる、
(4)促通性および抑制性の修飾効果のいずれもムスカリン性受容体が強く関わっていること、
(5)ラットV1では高次視覚領野へ情報を送る2/3層ニューロンで抑制が優位であり、皮質下領域へ情報を送る5層ニューロンでは促通が優位になる。
このことから、アセチルコチンは並列階層的に行われる視覚情報処理の経路毎に異なる反応修飾効果をもたらしていることが予想される。大脳皮質のアセチルコリンは大脳基底核の下にある前脳基底部のマイネルト核のコリン作動性ニューロンを起源しており、それらのニューロンが大脳全域に分布していることから脳全体の活動調節などに関わることが考えられてきた。本研究は、アセチルコリンが各皮質領野において、これまで考えられてきた以上に細やかで特異性の高い神経活動調節を行うことを明らかにした。
- リンク情報
- ID情報
-
- 課題番号 : 22500573
- 体系的課題番号 : JP22500573