1.ピリジニルラジカルモノマ-ーダイマ-平衡と光化学
中性ピリジニルラジカルは、一般的にはラジカルとそのダイマ-との間に一つの平衡系をつくっていると考えてよい。時間分解ESR法によりダイマ-の光開裂時の初期過程を研究し、その光開裂が一重項ラジカル対を前駆体とする反応であることを明らかにした。その光反応系に三重項増感剤が存在すると三重項ー三重項(TーT)エネルギ-移動が起こり、この過程での電子スピン分極の保存について検討し、スピン分極保持TーTエネルギ-移動の新規現象を立証することになった。その結果、ピリジニルラジカル化学の研究を整然とした形にまとめることができ、本研究の重要な成果の一つである。
2.分子内スピン分極保持TーTエネルギ-移動の新規現象
三重項ー三重項エネルギ-移動過程におけるスピン分極の保存について、分子間過程について実験的に検証をしたので、新しい着想によりエネルギ-供与体・受容体間のスピン配向について研究した。その結果、分子内スピン分極保持TーTエネルギ-移動の新規現象を初めて実験的に立証し、その過程に関与する諸因子を明らかにした。
3.芳香族カルボニル化合物の光反応で成生する中間体ラジカルのスピン分極に関する研究、4ー置換ピリジン誘導体の最低励起三重項状態から起こる水素引き抜き反応機構、無りん光性トロポンの励起三重項状態の電子構造の解明を目的として研究を行い、種々の有機化学反応系の初期過程について明らかにした。