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2017

高圧処理による食肉タンパク質の改質と物性改善 (特集 食品高圧加工の基礎および応用)

応用糖質科学 = Bulletin of applied glycoscience : 日本応用糖質科学会誌
  • 西海 理之

Volume
7
Number
4
First page
197
Last page
203
Language
Japanese
Publishing type
Article, review, commentary, editorial, etc. (scientific journal)
Publisher
日本応用糖質科学会

加熱処理は,食品の保存・調理・加工のために太古から広く用いられてきた方法である。一方,食品への高圧処理は1987年に初めて日本で提唱されたもので,加工技術としてはまだ30年しかたっていない。しかしながら,非加熱的な食品加工(non-thermal food processing)技術の1つとして,数千気圧(数百MPa)の静水圧を利用する高圧処理技術が注目されている。高圧処理の一番の特徴は,食品の大きさ,形状,成分などに依存せず,食品の中心にまで瞬時に圧力の効果が伝えられることである。また,加熱に比べて高圧力のエネルギーはとても低く,同等効果を期待した場合で加熱の約1/10以下のエネルギー消費と考えられ,しかも圧力保持中にはエネルギーがかからない。高圧処理は,まだ一般にはなじみの少ない加工技術であるが,上記に加え,微生物の生育抑制・殺菌に役立つことに注目されて研究開発が進められ,さらには栄養分の損失や異臭・異常物質の発生がないことなどから,近年では保存料などの食品添加物をできるだけ減らしつつ賞味期限の延長を図るようなナチュラル志向食品への利用が進み,世界中で様々な高圧加工食品が市販されている。また高圧処理は,加熱と同様に,食品中のタンパク質や澱粉などの生体高分子の立体構造を変化させ,変性を誘導する。しかし,高圧処理に伴う生体高分子の変性挙動は,分子運動の激化による変性を導く加熱処理とは異なる。食品素材を構成する生体成分,特に生体高分子といわれるタンパク質や多糖や脂質や核酸などは,水などの溶媒とともに非共有結合を使って立体的な全体構造を作っている。このような生体高分子に静水圧を施すと,系全体の体積を減らす方向に変化が起きるため,その立体構造が変化し,さらに圧力を増すと不可逆的に変性する。この原理はあらゆる食品・食品素材の物性や機能性に影響を及ぼし,例えば,澱粉の糊化・老化,食品の保水性・結着性・ゲル強度といった食感や物性の改良,さらには酵素反応の制御などに適用できるが,市販されている高圧加工食品への利用例はまだ少ないのが現状である。本稿では,食品加工への高圧処理技術のさらなる利用性の発展を鑑み,高圧処理によるタンパク質の変性・改質ならびにこれを応用した食品開発(食品の高品質化)に関して,高タンパク質食品である食肉での成果を例に挙げて紹介する。

Link information
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/40021387279
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA12509099
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/028667576
Jamas Url
http://search.jamas.or.jp/link/ui/2018047651
URL
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010920386 Open access
ID information
  • ISSN : 2185-6427
  • CiNii Articles ID : 40021387279
  • CiNii Books ID : AA12509099

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