2006年 - 2008年
H/K-ATPaseの構造解析とイオン輸送の分子メカニズムの解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
豚の胃より採取したH/K-ATPaseを用いて、これまでに確立した結晶化条件により二次元結晶を作製し、極低温電子顕微鏡による構造解析を行うことで、6.5Åの分解能で立体構造を明らかにすることができた。同じP-typeファミリーに属するCa-ATPaseにおいては、今回の結晶化の際に加えたAlFxとADPの組み合わせはE1P-ADPの構造を模倣する阻害剤として用いられていたが、我々の立体構造はE2Pの反応中間体であることがわかった。今回明らかになったH/K-ATPaseの構造ではbサブユニットのN末端がaサブユニットのPドメイン周辺と相互作用していることが示唆されたため、この相互作用によりE2Pの構造の安定化に寄与していることが予想された。そこで、βサブユニットのN末端を欠損させた変異体を作製し、HEK細胞において野生型のαサブユニットと共発現させることで、E1P-ADPとE2Pの平衡反応にどのような影響を与えているのか機能解析を行った。
その結果、βサブユニットのN末端を8アミノ酸以上欠損させた変異体では、E2PからE1P-ADPの逆反応が生じやすくなっていることが明らかになった。これまで、βサブユニットはαサブユニットのフォールディングや膜輸送に関わると考えられていたが、今回の研究により酵素機能を担うαサブユニットとの相互作用により実際の酵素反応にも影響を与えるという新しい機能が明らかになった。また、今回見られた相互作用はNa/K-ATPaseの構造では見られておらず、H/K-ATPaseに特異的な機構であると考えられる。H/K-ATPaseの発現している胃壁細胞によって形成されるプロトン濃度勾配は100万倍という驚異的な値であり、これは他のトランスポーターと比較しても大きいことから、この研究によって明らかになったβサブユニットによる逆反応を防ぐ仕組みがこのような特殊な性質に寄与していることが考えられる。
その結果、βサブユニットのN末端を8アミノ酸以上欠損させた変異体では、E2PからE1P-ADPの逆反応が生じやすくなっていることが明らかになった。これまで、βサブユニットはαサブユニットのフォールディングや膜輸送に関わると考えられていたが、今回の研究により酵素機能を担うαサブユニットとの相互作用により実際の酵素反応にも影響を与えるという新しい機能が明らかになった。また、今回見られた相互作用はNa/K-ATPaseの構造では見られておらず、H/K-ATPaseに特異的な機構であると考えられる。H/K-ATPaseの発現している胃壁細胞によって形成されるプロトン濃度勾配は100万倍という驚異的な値であり、これは他のトランスポーターと比較しても大きいことから、この研究によって明らかになったβサブユニットによる逆反応を防ぐ仕組みがこのような特殊な性質に寄与していることが考えられる。
- ID情報
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- 課題番号 : 06J03248
- 体系的番号 : JP06J03248