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2017/04/06

量子力学@高知工科大学H29 第1ー4回

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量子力学

授業の目標
1:量子力学の基本を学び、情報科学、材料科学、化学等の工学的応用に使えるように準備する
2:量子力学を通じて「確率現象」や「反直感的事象」について思考する力を養い、想像力豊かな工学者の道への一助とする

授業計画
前半:シュレディンガー方程式の運用法とその意味
   (シュレディンガー方程式、波動関数と確率分布、固有エネルギーと固有関数、
    無限壁と箱形ポテンシャル、調和振動子、散乱の理論、量子トンネリング)
中盤:さまざまな量子力学系
   (調和振動子、デルタ関数型ポテンシャルとその拡張、3次元系の量子論、
    角運動量、周期的ポテンシャルの量子論
後半:スピン、量子的観測、量子情報
   (スピン、多体系の量子論、エンタングルメント、量子暗号、量子テレポート)
前提知識
微分方程式、線形代数、確率論、力学
(これら題材の基礎知識は本来前提であるが、授業中に必要最小限は復習する)

授業資料はここ、すなわち
http://researchmap.jp/job3pr355-13619/#_13619
http://researchmap.jp/jor0b9h56-13619/#_13619
http://researchmap.jp/jotm4lp39-13619/#_13619
http://researchmap.jp/jobysk6gc-13619/#_13619
に絶えずアップデートしたものを置いてあるので、タブレット/パソコンで(もしくは打ち出した紙で)必ず事前に学習しておき、常時参照のこと。

参考書
D.Griffiths, Introduction to quantum mechanics, (Prentice Hall, 2005)
猪木慶治、川合光著「基礎量子力学」(2007、講談社)
他にも教科書類を授業中に適宜紹介する

成績評価
定期試験二回5/11(木)、6/5(月)の評価+授業で適宜課される宿題(試験成績ボーダーラインの場合考慮)

授業日程
4/10(月)〜6/5(月)の月曜木曜2限@C102
休講日:5/8(月)、5/15(月)

担当教員
全卓樹(B416)
ツイターアカウント @Quantum_Zen にて受講生からの質問&議論受付ける(タイムリーな返答は保証しない)

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第1回
「量子論はどのようなものか、またはシュレディンガー方程式について」

プランク定数、確率波

量子力学では、物の状態は「離散的」で「とびとび」の様態でしか安定的に存在し得ない。その「とびとびさ」を司るのが量子力学の基本定数プランク定数
  h = 1 x 10-34  [J・s = kg m2/s]
エネルギー/時間の次元(=角運動量の次元)をもった量
プランクが1900年に発見したのは、光子一個のエネルギーが 2π h ν という事実(プランク公式)。可視光(4×1014~8×1014Hz)の光子一個のエネルギーは 2.5 x10^(-19)~ 5 x10^(-19) J である。

量子力学は歴史的には、19世紀末の物理学の「原子の安定性」についての疑問、「原子の線スペクトル」についての疑問への答えとして発見された。

量子力学ではまた、安定状態にある系の物理量を測定しても、その値を確定的に予言することはできない。つまり同一の系について物理量を同一方法で繰り返し測定した時、得られる値は確率的に分布する。量子力学が予言するのは、この確率分布を与える「確率振幅」である。

確率振幅は複素数で、その絶対値二乗が確率分布を与えるが、複素数であるゆえに、そのままでは確率分布に現れない「位相」を持つ。位相は、測定方法を変えた時に古典力学にはなかった「干渉」現象を引き起こす。この干渉は波動現象に一般に見られるもので、言葉を変えれば、量子力学的な刑は、それが粒子であっても波動の性質を帯びることになる。

量子系に波動的性質を与える確率振幅を決定する方程式を、全盛期の両世界大戦間期に発見したのがシュレディンガーである。

シュレディンガー方程式は微分方程式であるが、「固有値方程式」である。安定的(定常的)な量子状態が「固有関数」で、「固有値」はその安定状態のエネルギーを与える。そして固有関数こそが確率振幅を与えている。


シュレディンガー方程式

* 前段 
ニュートン方程式の書き換えとしてのハミルトン方程式(簡単のため一次元のみ)
 ハミルトニアン H = T + V ; T = p^2/(2m); V = - \int dx F
   dt\d x = ∂p\ ∂ H ,  dt\∂ p = - ∂x\∂ H     ; ∂ partial derivative

例1 自由粒子 H = p^2/(2m)
  ハミルトン方程式は
  dt\dx = p/m,   dt\dp = 0  すなわち dt^2\d^2 x =0  、故にこの解は dt\dx = Const.

例2  バネ H = p^2/(2m)+k/2 x^2

宿題:
調和振動子 H = p^2/(2m)+k/2 x^2 の古典系の解を見つけよ
答: 
ハミルトン方程式は x''(t) + ω^2 x(t) = 0 (ただしω=√(m/k)である)を与え、これの解は
  x(t) = A sin(ωt) + B cos(ωt)
または
  x(t) = C e^( iωt ) + D e^( -iωt )

ハミルトニアンは系の全エネルギーを座標と運動量の関数として表したものである。全エネルギーがEの運動にあっては、
  H(x,p)=E
が成り立つ。古典力学に置いては、運動はポテンシャルの転回点 x_r たち( ただしV(x_r)=E )のあいだの、 E>V(x) をみたすxの領域でのみ起こる。なぜなら運動エネルギーは正でなければならない、すなわち p^2/(2m) = E-V(x) > 0 であるから。

ハミルトニアンは系の運動に関する全情報が含まれている。古典論ではハミルトニアンを用いてハミルトン方程式(ニュートン方程式と同等)を作ると、これが系の運動を記述する。量子論ではハミルトニアンを用いてシュレディンガー方程式を作ると、これが系の運動を記述する。量子論ではシュレディンガー方程式が古典論のハミルトン方程式に置き換わるのである。

* シュレディンガー方程式
  Hψ = Eψ
H = -h^2/(2m) dx^2\d^2 + V
 
これはH= p^2/(2m) + V で p -> h/i dx\d と置き換えたものになってる。
ψは座標 x の関数 ψ(x) で、「波動関数」とよばれ、量子的粒子に関する何かの分布を表している。
Eは全エネルギーを与える。

シュレディンガーの置き換えの意味するところは、物理量は位置 x にしても、運動量 p にしても、そしてエネルギーであるハミルトニアンにしても、実数値をとって計測できる量として理解すべきではなく、「演算子」という抽象的なものとして考える必要があると言う事である。これらの演算子は、それ自身単体では意味を持たず、座標xの関数に作用して初めて意味がある。具体的に言うと、たとえば p x - x p という量を論ずるには、それを任意の関数Φ(x) に対して作用させて作った新しい関数である
  (p x–x p) Φ(x) 
というものについて語る必要があるのである。もしこれが
  (p x–x p) Φ(x) = p x Φ(x) - x p Φ(x) = – i Φ(x)
を常に与える事を示せたとしたら、それを
  p x–x p = – i
と表現する、という具合である。

量子系の物理量は測定するたびに一般には異なる値が得られるが、波動関数が与えられれば、その状態にある粒子について物理量を測定した時の平均値が決められる。状態 ψ(x) にある粒子の物理量 A の平均値は
  <A> = ∫dx ψ(x)* A ψ(x) / ∫dx ψ(x)* ψ(x) 
で与えられる。(ここで * は複素共役を表している)

これを自然に解釈するには「波動関数の絶対値二乗が粒子の確率分布を与える」と考えると良い。粒子がxに見つかる確率分布関数P(x)が
  P(x) = ψ(x)* ψ(x)  / ∫dy ψ(y)* ψ(y) 
で与えると考えるのである。見通しよくするには最初から波動関数を「規格化」しておくと良い。つまり任意の複素関数 f(x) がある時、N=∫dx f(x)* f(x) を計算して
  ψ(x) = 1/√N f(x)
という定数倍した新しい関数 ψ(x) を作れば、これは  ∫dx ψ(x)* ψ(x) = 1 となることが保証されており、それゆえ、確率分布は
  P(x) = ψ(x)* ψ(x) 
で与えられることになる。

量子力学的な粒子に関しては
1)古典力学のように x(t) が求まる事はなく、 ψ(x) という関数で状態が特徴づけられる
2)シュレディンガー方程式が意味のある解を持つのは、一般にあらゆるEではなく、ある限られたE、多くの場合は離散的な(とびとびの)Eの場合のみである

量子的粒子の位置は確率的にのみ定まり、その確率は関数ψ(x)から得られる。シュレディンガー方程式が解を持つ離散的なエネルギーこそが、量子性の直接的表現である。

量子力学の基本を簡単にまとめるならば、プランク公式は光子一粒のエネルギーを与え、シュレディンガー方程式から電子一粒のエネルギーが求まる、両方ともにプランク定数が出てくる、ということになる。

宿題1ー1:人間一人1日あたりどれくらいの数の光子を食べて生きていけるものか?

宿題1ー2:波動関数がψ0(x)=√(1/π) sin(x/2)(ただし0<x<2πの範囲で定義されている)で与えられる状態にある質量mの粒子の、位置 x 、運動量 p = h/i dx\d 、そしてエネルギー E=-h2/(2m) dx2\d2 の平均値を求めよ。また波動関数がψ1(x)=√(1/π) sin(x)についても、位置、運動量、エネルギーの平均値を求めよ。

宿題1ー3:波動関数がψ(x)=√(1/2π) eikx(ただし0<x<2πの範囲で定義されている)で与えられる状態にある質量mの粒子の、位置 x 、運動量 p = h/i dx\d 、そしてエネルギー E=-h2/(2m) dx2\d2 の平均値を求めよ。


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 第二回
「固有値と固有状態、またはシュレディンガー方程式の解き方教えます」

シュレディンガー方程式を解く
(今日の表題は私の恩師のひとり清水清孝先生の著書の題名です。いい本なので見かけたら買いましょう)

粒子の波動関数、粒子の量子性1

まずは自由粒子 V=0 のシュレディンガー方程式を解いてみる。
  -h^2/(2m) dx^2\d^2 ψ(x) =  E ψ(x)

これを ψ''(x) + k^2 ψ(x) = 0 ただし k=√(2mE)/h  と書き直すと、
古典的な調和振動子の座標の満たす方程式 x''(t) + ω^2 x(t) = 0
と同じ(これは偶然)。ゆえにこのシュレディンガー方程式の解は、波動関数
  ψ(x) = a_+ e^(ikx) + a_- e^(-ikx)
で与えられる。または別の書き方
  ψ(x) = b_s sin(kx) + b_c cos(kx)
でもよい。「波動関数」の名のごとく波を表しているらしいことが見て取れる。
ここに出てくる k は「量子」(波であり粒子でもある何か)の波の波数を表しており、
  p = h k  (→ 書き換えるとλ = h/(2πp):物質波の波長を与えるドブロイの式)
は量子の運動量、そして
  E = p^2/(2m) = h^2/(2m) k^2
は量子のエネルギーである。

波動関数で表される粒子の存在形態を「量子状態」(あるいは単に「状態」)と呼ぶ。

自由粒子にあっては、Eの値としてはE>=0をみたす全ての連続的な値が許される。(連続スペクトル)

ついで一定値 U を持つポテンシャル V(x) = U のある系を考える。シュレディンガー方程式は
  dx^2\d^2 ψ(x) + 2m/-h^2 ( E - U ) ψ(x) = 0
となる。 E > U ならば q = √( 2m(E-U) ) / h とおいて
  ψ''(x) + q^2 ψ(x) = 0
となり、その解は
  ψ(x) = a_+ e^(iqx) + a_- e^(-iqx)
である。一方 E < U のときは κ = √( 2m(U-E) ) / h とおいて
  ψ''(x) - κ^2 ψ(x) = 0
となり、その解は
  ψ(x) = c_+ e^(κx) + c_- e^(-κx)
で与えられる。ただしこの関数はc_+ = c_- = 0 で無い限り x = -∞、x = ∞ で発散するので、これが全空間における解を表す事は出来ない。つまり全空間において V(x) = U の系の E < U の解は存在しない。これは運動はすべてE > U の領域のみで起こるという古典的な直感と整合する。ただし後に見るように、ある限定された空間における解として、この形が可能になる場合がある。

固有値と固有関数、粒子の量子性2

つぎに
  V =  ∞ ( x < 0 )
  V = 0 ( 0 < x < L )
  V =  ∞ ( L < x )
という「壁型ポテンシャル」のシュレディンガー方程式を考える。

F = - dx\dV から考えて、この鋭いエッヂの無限の高さのポテンシャルというのは、x=0、x=L におかれた、どんなエネルギーの粒子であれ無限の力で跳ね返す、決して透過をを許さない壁、と解釈できる。
  
壁の向こうで波動関数は0と考えると
  x = 0 と x = L で ψ(x) = 0  (境界条件)
と考えるのが自然。そして 0 < x < L では「自由粒子」
  -h^2/(2m) dx^2\d^2 ψ(x) =  E ψ(x)
なので、解は ψ(x) = b_s sin(kx) + b_c cos(kx) の型。境界条件を満たすのは
  k  =  k_n = π/L n  (n=1, 2, ...)
の条件が満たされるときに限る。

いいかえるとエネルギーが「固有値」  
   E_n = (hπ)^2 / (2mL^2)  n^2  (n=1, 2, ...)
の値をとる場合に限って、シュレディンガー方程式に解
   ψ_n(x) =  a_n sin( π/L n x)   (n=1, 2, 3)
が存在する(固有状態)。状態を指定する整数 n を「量子数」と称する。量子数 n = 1 の、エネルギーが最も小さい状態を「基底状態」、それ以外の状態を「励起状態」と呼ぶ。

固有値と固有状態をグラフ化してみよ。弦の固有振動との類推。
  

完全反射の壁に閉じ込められた量子系では、可能なエネルギーEは全て離散的である。一般的な量子系では、エネルギーの領域によって、離散的なスペクトルと連続的なスペクトルの両方が見られる。古典的な運動を考えて、それが無限領域に広がれる様なエネルギー領域では連続スペクトルが見られ、有限な閉じ込められた運動になるエネルギー領域では離散スペクトルとなる。(ただし後に見るトンネリング現象のため、少し事情が変化する場合がある)

歴史的にはプランクの光の波動説の対偶の、ドブロイの物質波説をきいたシュレディンガーが、電子の波動の満たすべき式を見つけようとした結果の発見。

宿題2ー1:
ポテンシャルが
    V(x) = ∞   (L/2<x)
           = 0          (-L/2 < x < L/2)
           = ∞         (x < -L/2)
で与えられるシュレディンガー方程式を解け。(固有値と固有関数を求めよ。)ただしここで与えた座標をそのままに、最初から改めて求めよ。

波動関数の意味

粒子の位置を観測すると、それが地点 x で見つかる確率は、波動関数の絶対値の二乗に比例する。つまり | ψ(x) |^2 が地点 x で見つかる相対確率を表してる。

もし ∫dx | ψ(x) |^2 が有限なら、地点 x で見つかる確率は、確率密度
  P(x) = N | ψ(x) |^2
ただし 
  N = 1 / ∫dx | ψ(x) |^2
で与えられる。ψ(x) の定義を変更して(規格化因子√Nを掛けたものを改めてψ(x)と呼んで)
∫dx | ψ(x) |^2 = 1 になるようにしておけば
  P(x) =  | ψ(x) |^2
となる。

例1 自由粒子の量子状態
 
 ψ(x) = e^(ikx) 
を考える。これの絶海値の二乗は
  | ψ(x) |^2 = 1
なので、一次元空間の自由粒子は、エネルギーEによらず、直線上のどの地点で等確率で見つかる。

例2 無限壁内の粒子の状態
  ψ_n(x) =  √(2/L) sin( π/L n x)   (n=1, 2, ...)
を考えると、これは
  P(x) =  (2/L) sin^2( π/L n x)
を与える。(グラフ化してみよ)粒子が見つかる確率は、壁に挟まれた空間に限定され、 壁の向こうではゼロである(あたりまえだ )確率分布にはnに応じて腹と節がある。nが大きい状態では壁の内部での存在確率が縞々ではあっても均等に近づく。
  

宿題2ー2
一次元空間のなかで、x = –a および x = 0 に置かれた二つの無限壁の間に閉じ込められた質量 m の粒子の運動を考える。固有値のうちの最小のもの4つ、それに対応する固有関数ともに求めよ。各々の状態について、粒子を観測した時にそれが x= -a と x = -a/2 の間に発見される確率はどれほどかを求めよ。
宿題2ー3
前問の4つの波動関数を ψ1(x)、ψ2(x)、ψ3(x)、ψ4(x) としたとき
 Jn,m = ∫dx  ψn(x)  ψm(x)
ただし n, m = 1, 2, 3, 4 を全て求めよ

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第3回
「量子の奇妙さ、其の一:禁止領域の侵犯、そして非可換な物理量」

量子的な滲み出し

ポテンシャルが
  V = U ( x < -L/2 )
  V = 0 ( -L/2 < x < L/2 )
  V = U ( L/2 < x )
という箱型で与えられるシュレディンガー方程式を考える。
  
このポテンシャルの下にエネルギー E の古典的な粒子があるとすれば、E < U ならその運動は-L/2 < x < L/2 の領域に閉じ込められ、E > U なら粒子は x のあらゆる領域を運動することができる。

Uを非常に大きくした極限が先ほどの「壁の中の粒子の量子力学」になっているので、Uが大きいときはその答えと似ているだろうと想像できる。決定的な違いは、壁の向こう側でも粒子の存在する確率が0でなくなって、量子的な「滲み出し」が起こることである。

ここではポテンシャルの箱の高さUがエネルギーEより大きい状況を考える
(I) まず x < -L/2 の領域を考える
  -h^2/(2m) dx^2\d^2 ψ(x) +( U-E ) ψ(x) = 0
略して ψ''(x) - κ^2 ψ(x) = 0 ただし κ=√{2m(U-E)} / h 。
この解は e^( κx) とe^( -κx) があり得るが、今 x → -∞ でψが有限であると仮定すると
  ψ(x) = c e^( κx)    ー> この状況でも解があり得る:波動関数が滲み出している。古典力学的に考えると、 p^2/(2m) = E-U が負になっているので、この領域を粒子群どうする事はあり得ない事に注意せよ
(II) ついで -L/2 < x < L/2 の領域を考える
  -h^2/(2m) dx^2\d^2 ψ(x) - E ψ(x) = 0
略して ψ''(x) + k^2 ψ(x) = 0 ただし k = √(2mE) / h 。
この解は e^( i kx) とe^( -i kx) があり得る。また同等であるが、sin kx と cos kx の組み合わせでかける。今はそっちを使ってみる
  ψ(x) = A sin(kx) + B cos(kx)
(III) 最後に L/2 < x の領域を考える
  -h^2/(2m) dx^2\d^2 ψ(x) +( U-E ) ψ(x) = 0
略して ψ''(x) - κ^2 ψ(x) = 0 ただし κ=√{2m(U-E)} / h 。
この解は e^( κx) とe^( -κx) があり得るが、今度は x → ∞ でψが有限であると仮定すると
  ψ(x) = d e^( -κx) 
 これら三つの領域の解は「全体でなめらかな一つの関数」になっているはず
→ x=-L/2 でψ(x)とψ'(x)が連続、また
x=L/2 でψ(x)とψ'(x)が連続
   κ = k (A cos kL/2 +B sin kL/2)/(-A sin kL/2 + B cos kL/2 )
  -κ = k (A cos kL/2 - B sin kL/2)/( A sin kL/2 + B cos kL/2 )
 この二つが同時に成立するのは(あ)B=0の場合(い)A=0の場合、しかない
(あ) κ = -k cot kL/2
(い) 
κ = k tan kL/2 
この方程式を(あ)、(い)の両方の場合に分けて解いてみる。これは解析的にはできず、数値解となる。グラフィックにとくのが最もわかりやすい。
まずκ^2+k^2=2mU/h^2という関係に留意して、Uを定めたときに、κをkの関数として書くことを考える。実際にはkに比例するz=kL/2という量で全てを書くことにする。 z^2 = mL^2/(2h^2) E、η^2 = mL^2/(2h^2) U と定義する。Uのかわりにηをつかう。
z=kL/2、η=√(κ^2+k^2) L/2 となって、κL/2 = √(η^2–z^2)なので上の関係式は
(あ) √{ (η/z)^2 –1 } = –cot z
(い) √{ (η/z)^2 –1 } = tan z
と書き直せる。左右の関数を、zの関数として図示して交点を求め、それを小さい順に並べて 
z_1、z_2、z_3、...
と呼べば、エネルギー固有値が
E_1 = 
(2h^2) /(mL^2z_1^2 、E_2 = (2h^2) /(mL^2z_2^2 、E_3 = (2h^2) /(mL^2z_3^2 
と求まる。
実際にこのような固有値がいくつ求まるかは、ηの値に依存する、すなわち U の値に依存する。当然のことながら、固有値は U を超えることがない。なぜならば E < U を前提として解を得たからである。Uが大きいほど多くの数の固有値が見つかり、Uが小さいと固有値の数は減る。Uがある値以下だと固有値が一個も存在しないこともある。

宿題3−1:
固有値が m個見つかるための U に対する条件を求めよ。
ヒント:まずは下の数値例を見て、ηに愛する条件を求めよ。

η = 9 の数値例を示した。エネルギー固有値を与えるz_1、..、z_6は次の図のように求まる。
   
固有状態の波動関数の例として、固有値 E_1、E_2に対応する ψ_1(x)、ψ_2(x) を描くと
  
が得られる。この絵ではL=2、つまり横軸の x<−1と1<xに高さUの障壁が立っている。この障壁の高さ U が有限の場合は、U 無限に相当する前の例と異なり、古典的には本来到達できない筈のこの障壁領域に、波動関数が滲み出しているのが判る。

演算子と物理量の平均的観測値

量子的粒子が状態 ψ(x) にあるとき、粒子の位置 x について、「 |ψ(x)|^2 を用いてその分布が確率的に与えられる」という言明以上の情報は与えられない。その場合でもxの平均値
  <x> = ∫dx x 
 |ψ(x)|^2 = ∫dx  ψ*(x) x ψ(x) 
は計算でき、さらにxの任意の関数の平均値、たとえばx^2の平均値、
  <x^2> = ∫dx  ψ*(x) x^2 ψ(x) / dx  ψ*(x)ψ(x)
を求める事もできる。

量子的粒子が状態 ψ(x) にあるとき、粒子の運動量 p はどのような値をとるだろうか。この場合も確定的な値は得られないで確率を持って分布しているのであるが、その平均値 <p> については、一見うえと同様に見える式
  <p> = ∫dx  ψ*(x) p ψ(x) / dx  ψ*(x) ψ(x)
で与えられる。ここで p は x の関数ではなく
  p = h/i dx\d
という「演算子」である。つまり
  <p> = ∫dx  ψ*(x) (h/i) dx\dψ(x) / dx  ψ*(x) x^2 ψ(x)
そもそも x の平均値を与える式も、「xを掛けるという操作の演算子」を右側の波動関数ψ(x) に操作して、それを左にある
ψ*(x)で掛けて積分して得られた、と理解する事もできる。

量子力学では物理量はx や dx\d といったものを含む「微分演算子」
  L = L( x, h/i dx\d )
で表され、量子粒子が状ψ(x)にあるとき、その物理量の平均値が
  <L> = ∫dx  ψ*(x) L( x, h/i dx\d ) ψ(x) / dx  ψ*(x) x^2 ψ(x)
で得られる。

物理量を与える演算子のエルミート性 

量子力学での演算子の扱いについて、もうすこし詳しく見てみよう

運動量演算子 p = (h/i) dx\d の平均値の式を今一度見てみる。ここでなぜ p が右に書かれたψにだけ作用して、左のψ*に、ではないのだろうか。それでは対称性が悪いだろう。これを
  <p> = ∫dx  [p ψ(x)]* ψ(x) / dx  ψ*(x) x^2 ψ(x)
と表現する事もできるのではないか。そして実際、それは正しい。ここで複素共役*の取り方に注意を払う事が必要である。こうしないと上の式は成り立たない。

宿題3−2:
ψ(x) = e^( i k x ) で上記の事実を確認せよ。

位置演算子 x でも、当然同様である。
  <x> = ∫dx  [x ψ(x)]* ψ(x) / dx  ψ*(x) x^2 ψ(x)
こんな風に物理量を表す演算子は、ψに働くときとψ*に働くときで、常に同一の平均値を与えなければいけない。こういう性質を持った微分演算子の事を「対称微分演算子」、または「エルミート演算子」とよぶ。x もp もエルミート演算子である。物理量に対応する演算子は全てエルミート演算子だ、という事になる。

宿題3−3:
D = dx\d がエルミート演算子でない事を示せ。

二つの演算子を続けて関数に作用させると、どちらを先に作用させるかで、一般に結果が異なる。これを如実に示す例として、位置
演算子 x と運動量演算子 p=h/i dx\d を考えてみる。この二つの演算子は実は特別な関係にある。
  dx\d { x ψ(x) } = ψ(x) + x ψ'(x) 
から、演算子が右全体にかかるという了解のもと、関係
  
 x {h/i dx\d} ψ(x) -  {h/i dx\d} x ψ(x)  = -h/i ψ(x)
を得る。すなわち演算子xとpは次の関係を満たす
  [x p] = i h
ここで [ ] は「ハイゼンベルクの交換関係」
  [A, B] = A B - B A
である。

量子力学になにが必要だったかを、振り返って考えてみると
 * 物理量に対応する演算子 x, p=h/i dx\d, 一般に L(x,
h/i dx\d)
 * 量子状態を表す波動関数ψ(x) 
 * 物理系を指定し固有量子状態を決めるハミルトニアン H(x,p)
の三つの要素である。

xの関数としての波動関数ψ、xの微分として作用する運動量演算子pといったものは、実は本質的ではなく、単なる量子力学の表現の一つ、シュレディンガーによって発見された一つの可能な量子力学の表現形式にすぎない。シュレディンガーの発見にほんの少し先立って、ハイゼンベルクが
 * 物理量に対応する行列演算子 x, p, 一般に L(x,p)、ただしx p - p x = ih I
 * 量子状態を表すベクトル ψ 
 * 物理系を指定し固有状態を決めるハミルトニアン H(x,p)
を用いた「行列力学」を定式化していた。あらゆる事についてシュレディンガーの波動力学とハイゼンベルクの行列力学は同等な結果を予言する。

結局量子力学にとって本質的なのは、具体的な表現ではなく、物理量 L(x,p) が、その作用が交換しない(xp-px=ih)演算子xとpで与えられる、という点である事が、フォン・ノイマンによって与えられた数学的定式化で明らかになった。そこで出てくるのは
 * 関係 [x p ] = ih をみたす演算子の組 x, pと、それから作る一般の演算子 L(x,p)
 * 演算子が作用する複素ベクトル ψ 
である。物理系の固有状態を決めるハミルトニアン H(x,p) も、一般の演算子 L(x,pの一つである。

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第4回
「量子的散乱問題、そして量子トンネリング」

量子散乱入門:反射と透過

時間依存型シュレディンガー方程式

一般的には量子状態は時間的に変化する。それ故波動関数も時間の関数にもなっている筈である。そのような波動関数 Ψ(x,t) が満たすのが「本来のシュレディンガー方程式」
  i h ∂t\∂ Ψ(x,t) = H Ψ(x,t) 
である。時間的変化の特殊な一例として
  Ψ(x,t) = ψ(x) e^(–i E/h t)
 の形を考えると、波動関数の「時間によらない部分」である
ψ(x)は
  E ψ(x) = H ψ(x)
を満たす事は簡単にチェックできる。(やってみよ)これがここで今まで「シュレディンガー方程式」と読んできた物の正体である。区別を付ける場合はこっちの方を「時間に依存しない」シュレディンガー方程式、または「定常」シュレディンガー方程式と呼ぶ。

つまりエネルギーEが定常シュレディンガー方程式の固有状態ψ(x)である場合、波動関数の時間変化は
e^(–i E/h t)という因子で表され、この場合
  |Ψ(x,t)|^2 = |ψ(x)|^2 |e^(–i E/h t)|^2 = |ψ(x)|^2 
となり、この状態での確率分布は時間的に不変のままである。量子系が時間によらず安定的に存在するには、固有エネルギーを持った固有状態である必要があるのだ。

進行波と定在波

自由粒子 V = 0 の定常状態の二つの表記
  ψ(x) = a_+ e^(ikx) + a_- e^(-ikx)

  ψ(x) = b_s sin(kx) + b_c cos(kx)
を思い出してみる。これについて時間依存性まで含む「フルの」波動関数 Ψ(x,t) を書くと、それぞれ
  Ψ(x,t) = a_+ e^( i {kx–ωt} ) + a_- e^( -i i {kx+ωt}  )

  ψ(x) = b_s sin(kx) e^( i ωt ) + b_c cos(kx) e^( i ωt )
となる。ただし ω=E/h 。

形をみると sin(kx) e^( i ωt )、cos(kx) e^( i ωt ) は定在波を表している。

また e^( i {kx–ωt} ) は x の正の方向への進行波、e^( i {kx+ωt} ) は x の負の方向への進行波であることが了解される。

箱形ポテンシャルの散乱問題

ポテンシャルが
  V = 0 ( x < -L/2 )
  V =-U ( -L/2 < x < L/2 )
  V = 0 ( L/2 < x )
という箱型で与えられるシュレディンガー方程式を考える。

いつものようにk = √(2m E)/h を定義しておいて、
(I) x < -L/2 の領域で
  ψ(x) =  e^(ikx) + R e^(-ikx)
の形、そして
(III) L/2 < xの領域で
  ψ(x) =  T e^(ikx) 
の形をした解を探す事にする。一般解の中で特にこのような解を選ぶ理由は、以下の通りである。この解においては、(I)の領域に(相対的な)強度1の右向き進行波と強度 |R|^2 の左向き進行波があって、(III)の領域には(相対的な)強度 |T|^2 の右向き進行波がある。(この言明のちゃんとした証明は「流速密度」という概念を定義して行える)言い方を変えれば、これは x = -∞ から入射した粒子が確率 |R|^2 x = -∞ 方向に反射され、確率 |T|^2 x = ∞ 方向へ透過していく状況を表している事になる。つまり
  
 |R|^2  :反射率
   |T|^2  :透過率
である。
      
今の系で、実際に反射率と透過率を決定するには、領域 (I) と (III) の解を
(II) -L/2 < x <L/2の領域の解
  ψ(x) =  A e^(iqx) + B e^(-iqx)
ただしここで
  q = √( 2m{E+U} )
と繋いで全体で滑らかな解を作ると良い。すなわちψ(-L/2)、dx\dψ(-L/2)を連続にする条件
   e^(-ikL/2) + R e^(ikL/2) =  A e^(-iqxL/2) + B e^(iqL/2)
 k/q [ e^(-ikL/2) - R e^(ikL/2) ] =  A e^(-iqxL/2) - B e^(iqL/2) 
そしてψ(L/2)、dx\dψ(L/2)を連続にする条件
    A e^(iqxL/2) + B e^(-iqL/2) = T e^(ikL/2)
    A e^(iqxL/2) - B e^(-iqL/2) = k/q T e^(ikL/2)
から
  T = 2k/q e^(-ikL) / [ 2k/q cos qL - i (1+k^2/q^2) sin qL ]
  R =  i (1-k^2/q^2) sin qL e^(-ikL) /  [ 2k/q cos qL - i (1+k^2/q^2) sin qL ]
そしてこれから
  |T|^2 = (k/q)^2 / [ (k/q)^2 + 1/4 {1-(k/q)^2 }^2 sin^2(qL) ]
  |R|^2 = 1/4 {1-(k/q)^2 }^2 sin^2(qL) / [ (k/q)^2 + 1/4 {1-(k/q)^2 }^2 sin^2(qL) ]
が求まる(自分でやってみる事!)透過率に反射率を足すと |T|^2 + |R|^2 = 1 となっていて辻褄が合っている事が判る。
    
数値例として、m=1ととってL=0.5、U=4 としたものを示す。

古典粒子なら、E > 0 で左から右に進むものは全て、ポテンシャルのくぼみに関係なく、全部みぎに出て行って、反射して戻ってくる事はないであろう。つまり|T|^2=1、|R|^2=0 が予想される。そうなっていないのが量子粒子の波動性の不思議の一つである。

宿題4−1:
今の問題を E < 0 の領域で解け。(この時は離散スペクトルが得られる)

箱形ポテンシャルのトンネリング

今度はポテンシャルが
  V = 0 ( x < -L/2 )
  V = U ( -L/2 < x < L/2 )
  V = 0 ( L/2 < x )
という箱型で与えられるシュレディンガー方程式を考える。
  
今粒子のエネルギー E が箱の高さ U よりも小さい、すなわち
  E < U
場合を考える。左から粒子が入ってくるとすれば、エネルギーが足らなくて -L/2 < x < L/2 の障害物を超えられず、粒子は反射されてx = -∞ に戻る筈である。ことろが量子力学的な粒子であれば、障害物の領域に少し滲み出すせいで、ある確率で右の領域に達して x = -∞  へ透過して行く事が出来ることが予想される。これが量子的なトンネリングの典型的な例である。どれだけのトンネリングが起きるかは、前節と並行した議論で計算する事が出来る。

k = √( 2m E )として
(I) x < -L/2 の領域で
  ψ(x) =  e^(ikx) + R e^(-ikx)
の形、そして
(III) L/2 < xの領域で
  ψ(x) =  T e^(ikx) 
の形をした解を探す。そのためにこれを
(II) -L/2 < x <L/2の領域の解
  ψ(x) =  A e^(κx) + B e^(-κx)
ただし
  κ = √( 2m{U-E} )
と繋いで全体で滑らかな解を作る。すると
   e^(-ikL/2) + R e^(ikL/2) =  A e^(-κL/2) + B e^(κL/2)
 ik/κ [ e^(-ikL/2) - R e^(ikL/2) ] =  A e^(-iqL/2) - B e^(iqL/2) 
    A e^(κxL/2) + B e^(-κL/2) = T e^(ikL/2)
    A e^(κxL/2) - B e^(-κL/2) = ik/κ T e^(ikL/2)
が得られる。そしてこれをTとRについて解けば
  T = 4ie^(-ikL) k/κ / [ 2ik/κ{e^(-κL)+e^(κL)}+{1-(k/κ)^2}{e^(-κL)-e^(κL)} ]
  R = e^(-ikL) { 1+(k/κ)^2 }{e^(-κL)-e^(κL)} / [ 2ik/κ{e^(-κL)+e^(κL)}+{1-(k/κ)^2}{e^(-κL)-e^(κL)} ]
これから透過率と反射率が
  |T|^2=(k/κ)^2 / [ (k/κ)^2+1/16{1+(k/κ)^2 }^2 { e^(-κL)-e^(κL) }^2 ]
  |R|^2=1/16{1+(k/κ)^2}^2 {e^(-κL)-e^(κL)}^2 /[ (k/κ)^2+1/16{1+(k/κ)^2 }^2 { e^(-κL)-e^(κL) }^2 ]
と求まる。(これも自分でやってみる事!)
    
数値例として、m=1ととってL=0.5、U=4 としたものを示す。下にはこの例の E=2.5 において、波動関数の二乗を、ポテンシャルを背景に x の関数として描いたものを示した。トンネリング現象が明確に見て取れる。

宿題4−2: 
今の問題、すなわち箱形ポテンシャル
  V = 0 ( x < -L/2 )
  V = U ( -L/2 < x < L/2 )
  V = 0 ( L/2 < x )
のシュレディンガー方程式を、E > U の場合について解け。

宿題4−3:
ポテンシャルが
  V = 0 ( x < 0 )
  V = U ( 0 < x )
で与えられる一粒子系のシュレディンガー方程式を、E<Uの場合、E>Uの場合に分けて解け。
(1)E < U の場合、
  E = k^2 h^2/(2m)、U-E  = κ^2 h^2/(2m) として
波動関数を 
  ψ = e^( ikx) + R e^( -ikx)        (x < 0)
  ψ = A e^( -κx)                       (x > 0)
として反射係数Rの実部と虚部を求めよ。( |R|^2 は当然1である)
(2)E > U の場合、
  E = k^2 h^2/(2m)、E-U  = q^2 h^2/(2m) として
波動関数を 
  ψ = e^( ikx) + R e^( -ikx)        (x < 0)
  ψ = √(k/q) T e^( iqx)               (x > 0)
として、これで定義されるT、Rを求めよ。そして |R|^2+|T|^2 = 1 である事を証明せよ。

(original post 2014/4/16)(last update apr24, 2017)
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