共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2020年3月

オタマボヤ幼生の開口による3D形成と分泌による摂餌フィルターの3D構築

日本学術振興会  科学研究費助成事業 新学術領域研究(研究領域提案型)  新学術領域研究(研究領域提案型)

課題番号
18H04763
体系的課題番号
JP18H04763
配分額
(総額)
11,440,000円
(直接経費)
8,800,000円
(間接経費)
2,640,000円

本研究では、脊索動物ワカレオタマボヤ (以下、オタマボヤ) の特長を活かした3D形態形成の解明を進める。具体的には、(1) 内胚葉と外胚葉の上皮がつながり「くち」ができるしくみ、(2) 表皮細胞から、3D構造をもった接餌フィルター(ハウス)が分泌される原理、の2つの解明を進めている。
(1)「くち」の3D形成
オタマボヤの口は、数十個と少数の細胞でできている。また幼生の孵化から7時間以内に出来上がるため、イメージングに有利である。開口する過程を観察したところ、他の動物の例と異なり、外胚葉の貫入ではなく、内胚葉細胞 (oral plugと命名)が外部に露出することが分かった。さらに核やアクチン(細胞膜とほぼ同義)のライブイメージングを行ったところ、体幹部の前端に「背腹方向に分裂する表皮細胞(lip precursor cellsと命名)」が2つあり、それらの娘細胞がそれぞれ上唇、下唇になるという現象を見出した。
(2)ハウスの3D形成
オタマボヤは表皮細胞から分泌するハウスというフィルター構造の中に棲む。体幹部は、折り畳んだ状態のハウス (ハウス原基)を常に2-3枚まとっており、外側の1枚を膨らまして使用するのである。本年度は、ハウスやハウス原基の構造を把握することを試みた。ハウスはセルロースを含むことが知られている。そこでセルロースの蛍光染色を行ったところ、海水の入り口 (inlet filter)に縦糸・横糸でできた格子状の網目を見いだした。この格子構造は、ハウス原基にも存在していた。さらに走査型電子顕微鏡 (SEM)で観察したところ、これらの糸は、直径数十ナノメートルの繊維が組み合わさってできていることを見出した。またハウスの他の領域も、微細な繊維が編み込まれてできていることが分かってきた。これらの結果は、ハウスが「繊維状の素材」を構成単位としてできていることを示すものである。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04763
ID情報
  • 課題番号 : 18H04763
  • 体系的課題番号 : JP18H04763