共同研究・競争的資金等の研究課題

1998年 - 1999年

慢性呼吸不全患者の筋肉のエネルギー代謝に及ぼす酸素吸入の効果

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
10670561
体系的課題番号
JP10670561
配分額
(総額)
2,400,000円
(直接経費)
2,400,000円

本研究では、^<31>P-核磁気共鳴スペクトロスコピーによって運動中の高エネルギー燐酸化合物を捉えるとともに、筋肉の酸素化状態を近赤外分光法を用いて測定した。運動開始直後と運動終了直後のphosphocreatine(PCr)、酸素化ヘモグロビン/ミオグロビン(oxy-Hb/Mb)、脱酸素化Hb/Mb(deoxy-Hb/Mb)の動態に注目し、健常人と慢性呼吸器疾患患者群において、この動態に差があるかどうか、酸素吸入によりこれら3つの時定群がどのように変化するかを検討した。対象は、健常人8人、および慢性呼吸器疾患患者12人。3分の反復掌握運動を施行。患者群では、同一日に室内気と酸素吸入下の2回施行した。運動開始直後および回復期の筋肉エネルギー代謝の動態は、運動開始直後のPi/(PCr+Pi)の時定数{τPCr(on)}、運動終了直後のPCr/(PCr+Pi)の回復の時定数{τPCr(off)}で評価した。酸素化の動態は、運動開始時および回復期のoxy-Hb/Mb、deoxy-Hb/Mbがその変化量の半分に達するまでの時間(T1/2oxy(on)、T1/2deoxy(on)、T1/2oxy(off)、T1/2deoxy(off))で評価した。運動開始時は、τPCr(on)には差がなく、T1/2oxy(on)、T1/2deoxy(on)が患者群で早かった。このT1/2は、酸素吸入で筋肉エネルギー代謝が改善した患者群(酸素反応群)では、酸素吸入によりさらに早くなった。運動終了後の動態においては、PCrの回復が患者群でT1/2oxy(on)、T1/2deoxy(on)が小さい理由は、酸素や他の基質の供給制限が主な原因と考えられ、患者群では酸素の利用がはやく限界に達し、それ以降は嫌気的解糖が働き出すことを示している。酸素反応群では、酸素吸入により、T1/2さらに早くなっており、酸素利用がもっとなされていることを示している。従って、患者の筋肉代謝の変化には、酸素供給に問題がある群と、酸素以外に原因がある群があると推測される。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-10670561
ID情報
  • 課題番号 : 10670561
  • 体系的課題番号 : JP10670561