2017年2月
【ウイルスの増殖・病態発現機構に関する最新の知見】 AIDSウイルスとヒトの進化的軍拡競争 ウイルス蛋白質とヒト蛋白質の相互作用からみえてくる進化的せめぎあい
医学のあゆみ
- ,
- 巻
- 260
- 号
- 6
- 開始ページ
- 513
- 終了ページ
- 517
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- 医歯薬出版(株)
ヒト免疫不全ウイルスI型(HIV-1)はレトロウイルスの一種であり、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因ウイルスとして周知されている。近年の細胞生物学的研究から、ヒトはHIV-1に無防備なわけではなく、その複製を強力に抑制する蛋白質を有していることが明らかとなっている。そのような蛋白質は制限因子(restriction factor)、あるいは内因性免疫(intrinsic immunity)と称され、その代表例としてヒトAPOBEC3ファミリー蛋白質が知られている。細胞性シチジン脱アミノ化酵素であるAPOBEC3蛋白質は、放出されるウイルス粒子に取り込まれ、HIV-1の複製を酵素活性依存的に強力に抑制する。一方、HIV-1はviral infectivity factor(Vif)という蛋白質をコードしており、APOBEC3蛋白質をユビキチン/プロテアソーム経路依存的に分解することにより、その抗ウイルス効果を拮抗阻害する。ヒトは7つのAPOBEC3遺伝子を保有しており、うち3つが強力な抗HIV-1活性を示す。加えて興味深いことに、ひとつのAPOBEC3遺伝子には多型があることが明らかとなっている。本稿ではAPOBEC3とVifの相互作用について概説するとともに、そこからみえてきた、ヒトとAIDSウイルス(あるいは哺乳類とレトロウイルス)の進化的なせめぎあいを紹介する。(著者抄録)
- ID情報
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- ISSN : 0039-2359
- 医中誌Web ID : 2017134862