共同研究・競争的資金等の研究課題

2014年11月 - 2016年11月

既存不適格工場緑地はオフ・サイト里山保全につながるか?

住友財団  環境研究助成  

担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
1,200,000円
(直接経費)
1,200,000円
(間接経費)
0円
資金種別
競争的資金

本研究では工場立地法制定以前から存在しており当該法で定められる緑地面積を工場敷地内に確保できず法制度上既存不適格となっている工場群に着目し、衛星画像や行政資料の分析により、不足緑地分を郊外の里山保全への基金として認定する制度のポテンシャルについて検討した。研究は大阪府の堺市を事例として進めた。具体的には、行政担当者へのヒアリング調査による制度制定プロセスの把握、GISを援用した衛星画像分類による緑被抽出と土地利用とのオーバーレイ解析、工場緑地および郊外里山生態系の現地調査を行った。その結果、堺市では工場立地法の敷地外緑地に関する規定を活用し、企業の敷地外緑地を堺南部丘陵に集約して里山保全に役立てることを検討していた。具体的には、企業が市に土地購入と管理の費用を出資、市はその資金で土地を購入、企業の緑地として認定する。管理については市が責任を持って民間に委託し、10年間の契約で1㎡あたり1万円を想定していた。将来的には樹林地だけでなく、里地の農地なども工場立地法の環境施設として保全できないか検討していた。GISによる空間解析では、近畿圏の工場立地法実施以前から存続していると推定された工場のうち、工場立地法の対象となる特定工場は16%存在し、そのうちの90%以上が既存不適格工場と推定された。大規模工場は臨海部の埋立地に多く、また小規模工場は大都市近郊の内陸部や河川付近に多く立地しており、生態的ネットワーク創出のポテンシャルも高いと考えられた。現地調査では、単一の樹種で工場を囲む列植や、管理不足の敷地内樹木が多く見られた。一方で郊外の里山は、管理されている場所では多様な樹種が確認され、良好な里山生態系を維持していた。当該制度を活用した場合の保全可能な樹林面積について試算を行った結果、 堺市の既存不適格工場の緑地の不足分を全て市の南部丘陵でまかなう場合、全体の5%近くを保全できると推算された。本研究で対象とした敷地外緑化制度など、オンサイトとオフサイトの緑地を人とお金で結び付ける制度を拡充・活用して良好な都市・近郊緑地の連続的な保全を目指すことは、立地適正化計画など人口減少時代のコンパクトシティの重要性が認知されている今、まさに現実的で重要な地域戦略だと考えられた。

リンク情報
URL
http://www.sumitomo.or.jp/html/kankyo/kantaisyo2014.htm

この研究課題の成果一覧

論文

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講演・口頭発表等

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