共同研究・競争的資金等の研究課題

2010年4月 - 2012年3月

抗HIV薬の創製を指向した関連蛋白質の酵素反応の実時間モニタリングと構造解析

日本学術振興会  特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
10J01375
体系的課題番号
JP10J01375
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

HIV感染の拡大を防ぐには、従来のHIV自身を標的とした薬剤の開発だけでは不十分で、変異しにくい宿主側因子及び宿主因子-HIV間相互作用を薬剤の標的にすることが求められている。ヒトが保持するAPOBEC3Gタンパク質(A3G)は、HIVの粒子内へ取り込まれた後、宿主細胞内で逆転写されて生じたHIVの(-)DNA上のシトシンをデアミネーションしてウラシルへと変換する活性によって、抗HIV活性を発揮する。しかし、数多く連続するシトシンの区別やHIVのゲノムDNA上に散在するCクラスター内でのA3Gの作用機序は不明であった。そこで我々は、デアミネーション反応のリアルタイムモニタリングにより、A3Gの動的な作用機序の解明に取り組んだ。この手法を用いて、様々なssDNAのデアミネーション反応を解析した。その結果、A3Gは、CCCの3番目のCを好んでデアミネーションすること、このCCCのクラスターがDNA上に複数個存在する場合、より上流(5'側)にあるクラスターのCを優先的にデアミネーションすることを明らかにした。次にA3Gが5'側のCクラスターを優先的にデアミネーションする機構を明らかにするために、リアルタイムNMRデータの速度論的解析を行った。私達は、A3Gはブラウン運動でssDNA上を前後にスライドするが、Cに入る向きが3'からまたは5'からによって酵素活性が異なるというモデルを構築した。このモデルから導いた式に、測定した数種類のNMRデータをフィッティングした結果、3'からCに入った時の酵素活性は、5'から入った時の酵素活性よりも5倍高いことが明らかになった。すなわち、A3Gが3'から通る頻度の多い上流(5')の方が、デアミネーションされる確率が高くなるため、A3Gは位置依存的な反応速度を示すと言える。A3Gの基質はHIVの(-)ssDNAであるが、dsDNAを合成するHIVの逆転写酵素と競合しなければならない。そのため、効率良くHIVのゲノム上に変異を導入するためにA3Gはこのような方向性を持ったデアミネーション反応機構を獲得したと考えられる。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-10J01375
ID情報
  • 課題番号 : 10J01375
  • 体系的課題番号 : JP10J01375