2013年
桜島火山,2006~2010年の昭和火口噴出物の岩石学的特徴の時間変化(<特集>桜島火山)
火山
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- 担当区分
- 筆頭著者
- 巻
- 58
- 号
- 1
- 開始ページ
- 191
- 終了ページ
- 212
- 記述言語
- 英語
- 掲載種別
- DOI
- 10.18940/kazan.58.1_191
- 出版者・発行元
- 特定非営利活動法人 日本火山学会
九州南部に位置する桜島火山は,2006年6月に昭和火口における噴火活動を再開した.我々は,2006年6月~2010年9月に噴出した火山灰及び火山礫について岩石学的特徴を明らかにし,マグマの特徴とその時間変化,そして噴火活動との関係を検討した.その結果,2006年以降の昭和火口活動が以下の4つの活動期に区分されることが明らかになった.第1期(2006年6月~2009年8月):この期間は,爆発的噴火が少なく,小さな山体膨張・収縮が繰り返された.噴出物中に本質物は認められない.第2期(2009年9月〜2010年3月):この期間は,爆発的噴火の頻度・規模ともに大きくなり,明瞭な山体膨張が継続した.噴出物中には本質物(スコリア・軽石)が認められる.火山礫の全岩化学組成は,1955年以降の噴出物の組成トレンドと調和的で,且つ最も苦鉄質な組成を示す(SiO2=58.5-59.1wt.%).これは,桜島火山では1955年以降同じマグマ系が活動しており,珪長質マグマに苦鉄質マグマが注入していることを示唆している.また,火山灰中の本質物の量比は時間とともに増加し,その石基ガラス組成は時間とともにSiO2量が減少している.従って,第2期では,噴出マグマにおける苦鉄質マグマの割合の増加が活動規模を拡大させていると考えられる.第3期(2010年4月~5月):この期間は噴火頻度が極端に低下し,山体膨張もほぼ停止した.噴出物中に本質物は認められるが,その量は少なく,変質岩片が増加する.第4期(2010年6月~2010年9月):この期間になると,明瞭な山体収縮が始まり,火山爆発も再び活発化した.噴出物中に本質物が多く認められるようになるが,その石基ガラス組成はやや珪長質であることから,この時期の噴出マグマは苦鉄質マグマの影響が小さいと言える.つまり,2006年以降の桜島火山では,マグマ系に注入する苦鉄質マグマそのものが噴出しているのではなく,既に火山下に供給されている珪長質マグマが主体となって活動していると考えられる.
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