MISC

2019年3月

アジアにおける有機フッ素化合物の胎児期曝露が及ぼす児の健康影響

北海道公衆衛生学雑誌
  • 伊藤 佐智子
  • ,
  • 荒木 敦子
  • ,
  • 宮下 ちひろ
  • ,
  • 岸 玲子

32
2
開始ページ
43
終了ページ
54
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
北海道公衆衛生学会

有機フッ素化合物(Perfluoroalkyl Substances:PFASs)は、その撥水性・撥油性から、界面活性剤、食品パッケージなどに使われてきたが、残留性や生物蓄積性を示す。近年、アジア地域では急速に工業化・経済発展が進み、PFASsの製造や廃棄物処理などの問題に直面している。世界的なPFOS、PFOAの製造規制後も、代替の長炭素鎖または短炭素鎖PFASsの製造が続いている。本総説では、PFASsの胎児期曝露と児の健康を検討したアジアの知見を整理し、今後の研究課題を探ることを目的とした。2018年11月までに発表された論文をPubMedにて検索を行い、出生コホートを中心とした27編についてPFASsの曝露濃度および子どもの健康に与える影響をまとめた。欧米諸国と比較して日本、台湾、韓国、中国での胎児期PFOS曝露濃度は同等および低かったが、出生体格、甲状腺ホルモン値、アレルギー・感染症、神経行動発達、性ホルモン・ステロイドホルモン値に影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。しかし、アウトカムによっては結果が一致していないもの、また報告数が限られているものもあった。今後の課題として、生産量が増加している短・長炭素鎖のPFASsによる影響評価を行うことに加え、幼少期の健康影響がいつまで続くのか、コホートを追跡することが必要である。さらに、PFASs曝露によって攪乱された出生時の甲状腺や性ホルモン値が、その後の神経行動発達、思春期にどのように影響していくのかを明らかにすることが、PFASsの健康影響に対する生化学的な機序を明らかにすることにつながると考えられる。(著者抄録)