基本情報

所属
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域植物発生シグナル研究室 助教
学位
博士(理学)(2013年9月 東京大学)

研究者番号
20748355
J-GLOBAL ID
201701019586822954
researchmap会員ID
B000283159

私の研究は、陸上植物の生活環に固有の現象を分子基盤から解明することを軸としている。陸上植物は半数体の配偶体と倍数体の胞子体という二つの多細胞世代を行き来し、同じゲノムを共有しながら形態や発生プログラムが大きく異なる。この根源的な仕組みは植物進化の核心的課題であるが、その分子機構は十分に理解されていない。私は半数体世代が生活環を優占するコケ植物ゼニゴケ (Marchantia polymorpha) をモデルとして、配偶体の性分化、受精卵初期制御、エピゲノム動態という三つの側面からこの問題に取り組んできた。

 これまでに、ゼニゴケ配偶体の性分化機構の一端を明らかにしている。トランスクリプトーム解析により雌性生殖器官特異的に発現する転写因子 MpFGMYB を発見し、その欠損がメス株からオス株への性転換を引き起こすことを示した。FGMYB は被子植物にも保存されており、配偶体の性分化制御が陸上植物に共通する仕組みであることが示唆された。現在FGMYBの下流で機能し、雌性配偶子の分化を制御する因子の探索に取り組んでいる。

 ゼニゴケをモデルに受精卵の発生開始メカニズムを解明した。独自に確立したゼニゴケの試験管内受精系を用いて、卵細胞で発現する TALE 型転写因子 MpKNOX1 が受精卵発生に必須であることを発見した。MpKNOX1 は精子由来の MpBELL3/4 と複合体を形成して核へ移行し、転写因子として機能することから、雌雄因子の統合が発生開始を駆動する仕組みを明らかにした。現在KNOX/BELL複合体がどのように受精卵を活性化するかについて解析を進めている。

 また、ゼニゴケの胚において父性染色体全体が H3K27me3 により不活化される現象を見出した。この現象は受精卵において雄性前核にH3K27me3修飾が蓄積することで確立する。現在、受精卵においてどのように雄性前核が認識されて不活化に至るのか、その分子機構の解明に挑んでいる。

これらの研究はいずれも、従来の被子植物モデルでは到達し得なかった課題に対する新たな知見を提供し、植物の生活環やエピゲノム制御原理の理解を大きく前進させた。今後は、ゲノムとエピゲノムがどのように統合されて植物の世代交代や発生を制御しているのか、その普遍的原理の解明を目指し、植物科学の新たな基盤構築に貢献していきたい。


研究キーワード

  6

学歴

  1

論文

  18

MISC

  5

主要な講演・口頭発表等

  46

所属学協会

  5

共同研究・競争的資金等の研究課題

  8