共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年4月 - 2023年3月

M&A契約条項の機能と意義の研究

日本学術振興会  科学研究費助成事業  若手研究(B)

課題番号
17K13651
体系的課題番号
JP17K13651
担当区分
研究代表者
配分額
(総額)
4,290,000円
(直接経費)
3,300,000円
(間接経費)
990,000円

本年度は、欧州での比較契約法の議論状況の調査・研究を主として行った。欧州の比較契約法では、契約解釈の方法に主要法体系の間で明確な差があることが明らかにされている。
普通法(common law)の伝統的な解釈方法は、契約書の文言を重視し、契約書の文言とは異なる請求は認めない「文言主義(literalism)」と呼ばれるアプローチである(もっとも、英国でも1998年のInvestors判決以降、文言主義と後述する客観主義との間で解釈が揺れ動いている)。契約内容が争われる際に契約書以外の証拠を原則として認めないパロル・エビデンス・ルールが、文言主義と補完的な関係を形成している。
フランス法系では、契約当事者の意思を重視する「主観主義(subjectivism)」と呼ばれる立場が採られている。文言主義とは対極的に、契約書は契約当事者の意思を推測するための証拠方法の1つに過ぎず、契約交渉の経緯や口頭での合意内容も証拠として排除されない。
ドイツ法系では、契約の解釈において、契約書の表現を重んじる点では文言主義と共通するが、文言に拘泥せず、契約の目的や契約締結時の状況を考慮に入れることが強調されている。「客観主義(objectivism)」と呼ばれる立場である。他の2つに比べて、契約の解釈を通じた裁判官による契約内容の補充や修正を認める余地が大きいのもこの立場の特徴である。
日本の契約解釈の方法は、旧民法の起草当初はボワソナードの影響により主観主義の立場が採られていたが、1920年代頃から我妻栄によって主張されたドイツの客観主義の立場が支配的になり、現在でも裁判所に受け入れられている。これに対して、日本のM&A契約は、英米法での文言主義による契約解釈を前提としたドラフティングが行われており、契約書のドラフティングと解釈との間に、(明確に認識されていない)溝が生じている。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13651
ID情報
  • 課題番号 : 17K13651
  • 体系的課題番号 : JP17K13651

この研究課題の成果一覧

論文

  1

書籍等出版物

  1

講演・口頭発表等

  2