2020年4月 - 2024年3月
ブラックホール時空の有質量摂動論
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
今年度は、引き続き背景時空が局所的に反ドジッター(AdS)時空となる、いわゆるトポロジカル・ブラックホールおよびその特別な場合について、様々なボソン場の線形摂動のマスター方程式の大域解の構成と安定性解析を行った。すでに様々な有質量および零質量線形摂動場に対して、一部の力学自由度に関しては、各自由度を表す力学変数が独立した形式のマスター方程式は得られており、その一般解も超幾何関数を用いて具体的に求めることに成功している。本年度は、それらの一般解から、適切な境界条件を満たす大域解を構成する際に、境界条件と波動(特に不安定モード)の関係を精密かつ網羅的に決定することを行った。また、厳密繰り込み群的手法に基づく量子補正したブラックホール時空の構成を、静的荷電ブラックホールの場合に試みた。そして、重力相互作用と電磁気相互作用の両方の結合定数の量子補正により、古典的な時空の大域構造がどのように変更されるかを詳細に調べた。特に、古典的時空の中心にある曲率特異点が、量子補正によりドジッターや反ドジッターなどの正則な時空領域となる場合、あるいは弱い特異点が発生する場合があり得ることを示した。このような量子補正ブラックホールや、それらと類似の古典論における正則ブラックホールは、ブラックホール表面である事象の地平面の他に、内部に別の地平面(コーシー地平面)を持つ。この様なコーシー地平面の存在は、一般相対論・重力理論における未解決問題である宇宙検閲官仮説に反する。そこで、正則ブラックホール内部のコーシー地平面の安定性解析を目的として、正則ブラックホールを模倣する時空を、ドジッターや反ドジッター時空領域と古典的荷電ブラックホール解との時空接続により構成することを試みた。以上は、申請者の指導する大学院学生とともに遂行した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K03938
- 体系的課題番号 : JP20K03938