2018年4月 - 2021年3月
心血管形成・ヒト血管疾患に関与するシグナル伝達系の下流遺伝子群の意義
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B) 基盤研究(B)
血管系のシグナル伝達異常は先天性心疾患・難治性血管病の原因となり、虚血性疾患や癌に認められる病的血管新生においても重要である。私たちはこれまでに、ヒト心血管疾患に重要な意義を有するNotchおよびALK1シグナル伝達系の下流ターゲット因子として、Hey1転写因子・Tmem100膜タンパク質・Sgk1リン酸化酵素を同定した。私たちおよび他の研究者によって、これらの遺伝子の欠損がマウスにおいて重篤な心血管形成異常を引き起こすことが報告され、ヒト病態における重要性も注目されている。そこで今回の研究では、遺伝子組換えマウスモデルと分子生物学的手法を用いて、これらの因子の機能メカニズム・上流発現制御機構・生体における意義を明らかにすることを試みている。Notch受容体やリガンドの遺伝子変異は脳小血管病CADASILやAlagille症候群における先天性心疾患の原因となり、ALK1受容体および関連遺伝子の変異は遺伝性出血性毛細血管拡張症の原因、肺動脈性肺高血圧症の素因として重要である。これらのNotch・ALK1シグナル関連血管病は難病指定疾患であり、病因究明と診断・治療法の開発が強く望まれている。NotchおよびALK1シグナルの下流因子が血管形成・機能制御においてどのように働くかを明らかにすることは、先天性心疾患・難治性血管病の病態生理の解明のみならず、遺伝子変異等によって生ずる遺伝子発現・シグナル伝達の異常を正常化することによる新しい治療ストラテジー開発の基盤となると期待される。
- ID情報
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- 課題番号 : 18H02787
- 体系的課題番号 : JP18H02787