2017年6月 - 2022年3月
多環芳香族炭化水素類の複合反応と疾病との関係に関する開拓研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(開拓) 挑戦的研究(開拓)
- 課題番号
- 20K20309
- 体系的課題番号
- JP20K20309
- 担当区分
- 研究分担者
- 配分額
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- (総額)
- 24,960,000円
- (直接経費)
- 19,200,000円
- (間接経費)
- 5,760,000円
- 資金種別
- 競争的資金
肺がんの要因として,喫煙の他に都市域の大気汚染が指摘され,さらに都市域ではぜん息などの呼吸器系疾患も多い。これら疾病との関連が疑われる有害化学物質に,PM2.5に含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)とそのニトロ体(NPAH)がある。我が国の都市域におけるPAHやNPAHを含有するPM2.5の主要発生源として,自動車の排ガス粉塵や工場の排煙などがあげられる。一方,中国の華中・華北や極東ロシアでは冬の石炭暖房からPAH,NPAHを含む大量のPM2.5が大気中に放出され,季節と場所によって自然由来の黄砂などと一緒に長距離輸送される。その結果,PAH,NPAHが輸送中に共存する黄砂との二次反応(触媒作用)によって,より強力な毒性物質に変化することも明らかになった。しかし,現行のPM2.5測定は粒子の大きさに基づく物理的方法のみが用いられており,健康影響との関連性を明らかにするには不十分である。本研究では,これまでにピレン(Pyr)と1-ニトロピレン(1-NP)を測定するだけでPM2.5及びPAH,NPAHの主要発生源の寄与率を求める画期的なNP法を開発し,更にPAHの水酸化体(OHPA)やキノン体(QPAH)等の酸化体を追跡できる方法も開発できた。一方,能登半島(輪島市西二又)と金沢市内(金沢市山科)において大気粒子状物質(TSP,PM2.5とPM2.5-10)の分別捕集を継続している。これら大気試料のPAHとNPAHを測定して,これら有害化学物質の長距離輸送を含む環日本海域の大気質の長期変動解析を継続するとともに,開発できた上述の方法を適用して主要発生源である自動車と石炭燃焼の寄与率も明らかにできた。引き続き,これらと大気中の二次反応の解明研究を継続するとともに,咳嗽症状を中心に病院通院患者を対象に継続しているアンケート調査結果を総合して,疾病との関連性を追求する。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K20309
- 体系的課題番号 : JP20K20309