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招待有り 国際会議
2018年6月

カメルーン北部におけるスポーツハンティング観光と地域社会の関係

海外学術調査フォーラム
  • 安田章人

開催年月日
2018年6月18日 - 2018年6月18日
記述言語
日本語
会議種別
開催地
東京外国語大学
国・地域
日本

前半では、カメルーン北部におけるこれまでのフィールドワークの結果をもとに、その地域におけるスポーツハンティングと地域社会の軋轢について、報告をおこなった。スポーツハンティングに対して、野生動物保全政策と地域発展に寄与するというユートピア的な言説がしばしば展開される。しかし、このような言説が調査地の住民にも共有されているのか、またスポーツハンティングが地域社会に与える影響は肯定的なものだけかといった問いの実証的な解明はなされていない。調査の結果、調査地では、スポーツハンティングが地域社会にもたらす「光」(スポーツハンティングが地域社会に創出する雇用機会、スポーツハンティングによって生じる地域住民への利益分配など)と「影」(地域住民による狩猟の実質的な禁止、密猟を行った地域住民に対する厳しい処罰〔逮捕・罰金〕、猟区の創設に伴う地域住民の強制移住など)の分析から、地域住民に対する経済的便益の分配のみが優先されてしまい、地域住民と野生動物との多元的な関わりや彼らの生活実践の基盤が毀損されている点、されに彼(女)らの主体性が蔑ろにされている点を明らかにした。そして、スポーツハンティングに関わる観光事業者や政府関係者の発言から、地域住民は持続可能で科学的な資源管理を行うことができない存在と「断罪」され、彼らには経済的便益さえ与えておけばよいと考えられている点を指摘した。そして、こうした断罪がなされる原因として、観光事業者や政府関係者による「持続可能性」の概念と地域住民のニーズの固定化、植民地期に遡る歴史的要因、スポーツハンティングによって生じる雇用機会や外貨収入を容易には放棄できない地域社会の事情などを挙げた。
後半では、カメルーンでのフィールドワークにまつわる様々な情報を紹介した。具体的には、ビザや調査許可証の取得に関する情報、現地の治安状況、現地の調査において気をつけなければならない病気や安全管理に関する情報などを提示した。