基本情報

所属
大阪大学 大学院人間科学研究科 人間科学科 共生学系 未来共生学講座 共生の人間学

連絡先
u685518aecs.osaka-u.ac.jp
J-GLOBAL ID
202001014785640451
researchmap会員ID
R000005621

外部リンク

「政治」という活動とは何であるのか、それはいかにして思考されうるのか、いかに思考されるべきであるのかといった問いに関心を持っています。「政治」を思考する上では、存在論的な問い、認識論的な問い、規範的な問いを立てることができます。私はこのような問題系を形づくる機能的概念としての「政治的なものの概念」を軸にして、現代フランス思想史の研究を行っています。

 

この上で私が注目しているのは、1980年にパリ高等師範学校に設置された「政治的なものをめぐる哲学研究センター」での議論です。センターの活動にはジャン=リュック・ナンシー、フィリップ・ラク―=ラバルト、ジャック・デリダ、ジャン=フランソワ・リオタール、ジャック・ランシエール、アラン・バディウ、クロード・ルフォール、ジャコブ・ロゴザンスキーその他さまざまな知識人が参加していました。この研究会で議論された「政治」および「政治的なもの」に関わる議論を整理、分析することで、そこに見られる問題系を取り出すことが当面の課題です。現在取り組んでいる途上の課題は以下の3点です。

 

1.「1968年革命」の影響をめぐる思想史研究

1968年の「5月革命」のその後の政治思想への影響がセンターでの議論までつながっています。「68年」に代表される60年代の出来事が「マルクス主義の失効」を両義的に示す「資本論に反する革命」であったと考えるならば、その影響をマルクス主義についてなされる様々な議論の内に探っていかなければなりません。そのために私が注目しているのが、1970年代に「68年」の総括として現れた「新哲学派」です。「新哲学派」における「全体主義批判」、「人権論」といった諸論点を通してその反マルクス主義的な言説を検討することが、「68年」の影響を考察する前提となると考えています。また、フランスにおける「リベラル・モーメント」と呼ばれるフランスリベラリズムの勃興やリュック・フェリー、アラン・ルノーらの「68年の思想」批判についても視野に入れながら、60年代の思考の変遷を跡付ける作業を進めています。

 

2.「政治と存在論の関係」についての研究

先行研究においてしばしば指摘されるように、1970年代以降に構造主義やポスト構造主義の成果を引き継ぎながらキャリアを開始したフランスの哲学者には、政治と存在論の関係を問題化する傾きが見られます。この傾向はセンターへの参加者の一部において明確に見られます。そこで、「政治はいかに思考されるべきなのか」という問いをジャン=リュック・ナンシーとアラン・バディウの議論を中心に検討しています。バディウは『政治を思考することはできるか』(1985)、『諸条件』(1992)その他最近刊行されたセミネールでもナンシーらの「政治的なもの」についての哲学を批判しています。私はこの批判から出発して、ナンシーとバディウの差異を政治存在論の差異として再構成することを目指しています。この政治と存在論の関係についての議論はさらに発展の余地があります。スラヴォイ・ジジェクが論じるような「控除の政治」や「純粋政治」批判、スピノザに淵源しアントニオ・ネグリに代表されるような内在の存在論に基づく政治思想などに考察を広げ、存在論からいかなる政治が導かれうるのか、そして逆に政治が存在論的でありうるとはどういうことなのかといった問いを論じていかなければならないという問題意識を持っています。

 

3.「コミュニケーション」をめぐる共同体論の研究

ジャン=リュック・ナンシーおよびジャン=フランソワ・リオタールの「政治的なもの」をめぐる議論では「コミュニケーション」についての考察が中心的な部分を占めています。ナンシーはハイデガーの共存在分析を引き継ぎながら、リオタールはハーバーマスやルーマンらに対抗しながら「ポストモダン社会」における「コミュニケーション」を政治的思考の主題としています。この二人の哲学者の「コミュニケーション」の概念が「政治的なもの」の概念との関係でどのように位置づけられているのかを検討しています。彼らのコミュニケーション論がそれぞれの仕方で「政治的非意志主義」につながっていることを示すことがこの研究の目的です。

 

現代の社会運動と政治思想の関係についての研究

以上に示したような専門的に取り組んでいる研究とは別に左翼運動における組織性についての関心を持っています。左翼運動にとって組織化は最も重要な政治活動です。組織についての思考は様々な位相でなされうるものですが、私の主な関心は「党」の位置づけについてです。

a.      2011年のオキュパイ運動の左翼思想への影響について

オキュパイ運動はその後の政治思想にどのような影響を与えたのでしょうか。「抵抗から政治へ」と言われるように、アメリカにおいてオキュパイ運動はその後バーニー・サンダースの躍進につながり、DSAの党員増加や民主党内左派の形成へつながりました。それはオキュパイ運動を通して、抵抗運動を超え出ることのできない社会運動の限界が意識された結果だと評価することができます。このように「オキュパイ以後」において社会運動の組織性をいかに作り上げることができるのかという問題意識が現れています。この問題に対する反応をアメリカを中心とする英語圏での「コミュニズム」論の中に探っていくことで現代の状況を考えようと模索しています。

 

b.     日本の新左翼運動における「政治的なもの」の概念について

日本の新左翼運動における「党」的なものとそれ以外の大衆運動、市民運動の関係性はいかなるものであったのか。「党」についての新左翼の理論はいかなるものであり、それが実際にどのように種種の社会運動、理論の自己認識を形作っていったのか。そこに政治的思考あるいは「政治的なもの」についての思考をいかに見出すことができるのか。私は社会運動史や日本思想史を専門とはしていませんが、他の研究者の方々の研究成果や当事者の証言等を読みながら、こういった問いを探っていく方途を模索しています。


経歴

  1

学歴

  4

MISC

  2

講演・口頭発表等

  11

所属学協会

  2

共同研究・競争的資金等の研究課題

  4

学術貢献活動

  4

メディア報道

  2