共同研究・競争的資金等の研究課題

2017年6月 - 2020年3月

脳内全シナプスの活動ダイナミクス測定に基づく神経回路動作機構の追究

日本学術振興会  科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)  挑戦的研究(萌芽)

課題番号
17K19439
配分額
(総額)
6,370,000円
(直接経費)
4,900,000円
(間接経費)
1,470,000円

本研究では、ショウジョウバエ幼虫をモデル系として用い、シナプス活動イメージング、統計的データ解析、遺伝学を駆使して、シナプス集団の活動ダイナミクスの解析を行なっている。
今年度は、シナプス集団の活動パターンの定量的解析と、そのパターンの各相を担うシナプスのデータ解析による同定を進めた。全ニューロンにカルシウムプローブを発現させた個体を用いて、中枢神経系におけるシナプスの蛍光強度変化を観測した。シナプスは細胞体に比べて高密度に存在するため、形態のみから個々のシナプスを分離することは容易ではない。そこで、単一のシナプスを構成する画像上のピクセルは、同じような蛍光変動するという過程に基づいて、統計力学的な最適化手法であるsimulated annealing法を用いてピクセルをシナプスにクラスタリングした。これによりシナプスの特徴的な形態と活動を抽出することに成功した。
ショウジョウバエ幼虫の中枢神経系は、動物の運動(前進運動、後進運動)を反映して、尾側から頭側へ伝播する活動波、および逆に頭側から尾側へ伝播する活動波、という回路活動パターンを示す。これらの活動パターンにおける個々のシナプスの活動を解析した。すると、単一の神経節内においてシナプスの活動順序は明確な時間構造を示すことが分かった。各神経節内では、大部分のシナプスはほぼ同時に活動し、他の部分ではその同時活動に続いて徐々に活動が伝播していく様子が観察された。さらに、この傾向は前進運動パターン、後進運動パターンの双方において見られたが、その同時活動するシナプス群が双方の間で部分的に一致しないことが分かった。このことから運動制御回路は、各行動に対する共有部分と特化した部分に分解可能であることが示唆された。
以上の結果から、神経回路内にモジュール構造が存在し、それらの組み合わせの違いによって異なる運動パターンが生成される、という回路描像が示唆された。

ID情報
  • 課題番号 : 17K19439