2017年11月
腸管と腸内微小生態系の変化が重症病態に及ぼす役割
日本救急医学会雑誌
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- 巻
- 28
- 号
- 11
- 開始ページ
- 827
- 終了ページ
- 834
- 記述言語
- 日本語
- 掲載種別
- 出版者・発行元
- (一社)日本救急医学会
腸管が多臓器不全を引き起こす"motor"である、という仮説は30年程前から提唱されてきた。腸管は生体内にありながら生体外と接し、常に病原菌にさらされている。腸管には生体のリンパ球のおよそ80%が存在し、常に腸管内容物を監視し、免疫寛容と異物排除の両面の役割を担っている。重症病態では腸管上皮細胞のアポトーシスの進行、タイトジャンクションの脆弱化、粘液の減少などにより腸管のバリア機能が崩壊する。さらに腸内細菌叢は多様性を失い、常在細菌叢は消失して病原微生物が異常増殖する。この微生物叢の変化はdysbiosisと呼ばれる。これらの病原菌、または毒素は崩壊したバリアを超え、生体の全身状態にも様々な影響を及ぼす。近年、メタゲノム解析技術の進歩に伴い、腸内細菌叢を含む腸内微小環境に注目が集まり、dysbiosisが生体に及ぼす影響が明らかになりつつある。腸内微生物環境がヒトの健康に与える影響は大きく、微生物叢と生体との間のホメオスタシスの破綻が各種病態を引き起こす。集中治療領域では急性肺障害、急性腎障害、肝機能障害、不穏などとの関連性が指摘されるが、現在のところdysbiosisに対する標準治療は存在しない。本総説では、高度侵襲による腸管と腸内微小生態系の破綻のメカニズムとそれが生体に及ぼす影響、さらに現行の治療法とその限界を概説し、腸管および腸内微小生態系を"積極的に"保護する治療戦略をまとめる。(著者抄録)
- リンク情報
- ID情報
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- ISSN : 0915-924X
- eISSN : 1883-3772
- 医中誌Web ID : 2018048658
- J-Global ID : 201802245314600010