錯視日誌では、数学、視覚、錯視に関する研究、数理科学教育、アート,その他のことについて、いろいろなことを書いています。数理視覚科学の研究から生まれた学術的な新しい錯視図形や錯視アートの新作も発表しています。
錯視についてならば錯視の科学館へどうぞ.入り口はこちら:
http://araiweb.matrix.jp/Exhibition/illusiongallary4.html
錯視日誌では、数学、視覚、錯視に関する研究、数理科学教育、アート,その他のことについて、いろいろなことを書いています。数理視覚科学の研究から生まれた学術的な新しい錯視図形や錯視アートの新作も発表しています。
デカルトの方法序説は哲学書ですが,一編の小説を読んでいるような錯覚におそわれます。一方,哲学原理はどう見ても学術書の体裁をとっているので,構えて読んでしまいます。旅に出るとき,どちらをポケットに入れて出かけるか。悩ましいところです。
Xで発信したもの
音楽では音そのものを楽しみ,小説では文章を楽しむ。一面的な捉え方と言われそうですが,これはこれで楽しいので良いのです。
Xで発信したもの
アリストテレスの万学ぶりはすごいですが,カントもすごい。カント・ラプラスの星雲説で宇宙の謎に迫り,そして純粋理性批判は,おそらく今後の人工知能研究にも影響を与えていくと予想できます。道徳論,永久平和,まだ読んでませんが自然地理学などなど。カント全集は座右に置き続けたいものです。
Xで発信したもの.
スクリャービンの作品のように,音そのものを味わえる楽曲があるのと同様,文そのものを鑑賞できる小説もあります。漱石の草枕は文も楽しめる稀有な小説です。緩むことない調子を貫徹した文章力には脱帽します。文章自体を目的に読みたい作品にはそうそう出会えません。
Leonard Bernstein を模して言えば,私の日付変更線は1900年ではなく,2000年です。心臓に直結する左足は20世紀に急成長した伝統ある純粋数学にどっぷりとつかり,一方右足は,21世紀の中,予想外の方向に広がりつつある数理科学という大地を踏みしめようとしています。
数理視覚科学とその応用は,数学を軸として,人の視知覚(理),錯視(心理 - 文系),画像処理(理),オプアート(芸術)などを横断的に研究しています。数学なのか,知覚心理学なのか,脳科学なのか,認知科学なのか,画像処理なのか,どの分野に属するものとして位置付けてよいのか迷ってきましたが,結局,これを『数学を軸とした文・理・芸術の未来型融合分野』と位置付けることにしました。
新井仁之
数理視覚科学とその応用に関する参考文献
人の視知覚に切り込む数学とその応用
- 調和解析,錯視,画像処理,アート -
新井仁之
数学通信 23 (2), (2018), pp.5-22.
⇊
http://araiweb.matrix.jp/Lectures/Arai-MSJ.pdf
If AI were to calculate and present what lurks in our subconscious, it would be like the ocean of Solaris, and we would find ourselves facing a Solaris of our own making.
The "ocean of Solaris" refers to the mysterious ocean that covers the surface of the planet Solaris in Stanislaw Lem's novel Solaris. There is no consensus on whether it is a living organism or possesses intelligence, and it is described as speaking the language of mathematics.
The ocean of Solaris, unlike AI, actively explores humans and seems to send us virtual realities (created from human memory data) to collect psychological data. While this remains within the realm of fiction, if AI were created for such a purpose, the issues explored in Solaris could become a reality.
We need to study what an AI that clarifies and manifests human emotions or the subconscious (let's call it Solaris for now) would be like. In other words, how such an AI would be created, and what kind of impact it would have on individuals and society if it were realized.
AIが人の潜在意識に潜むものもその人の嗜好として算出し,それを何らかの形で表出するならば,それはソラリスの海のようで,我々は人類が自ら作ったソラリスの海と対峙していくことになるのでは。
ちなみにソラリスの海は数学の言語を話しているという点でも類似しています。
それは原始的な形では,ある意味で現実となっている/なりつつあるともいえそうです。
なおソラリスの海はS.レムのSF小説「ソラリス」に出てくる惑星ソラリスを覆う海のことです.その海と今のAIの違いは,専門ではないので断言できませんが,海が自分の意思を持ってるらしいことかもしれません。
レムの小説では「ソラリス学」というのがあり,いろいろな方面からの研究がされており,数学者たちも高度な数学を使って研究していたようです。
ソラリスの海はAIと違って能動的に人を探索し,人の心理的データを採取する為と思われる(人の記憶のデータから作った)仮想現実を我々に送り込んできます。フィクションの域を脱しませんが,もしもAIがそのような目的で作成されるならば,ソラリスで扱われている問題は現実のものになるかもしれません。
人の心理あるいは深層心理を明確化し表出するAI(これを仮にソラリスと呼びましょう),これがどのようなものかを研究する必要があります。つまり,どのように作るか,そしてできたとしたらそれは個人や社会にどういう影響をもたらすか。
私は天文学の専門ではなく,まだ読んでいませんが,ラプラスの著書「宇宙体系解説」(竹下貞雄訳,大学教育出版)は,参考になります。何が参考になるかというと,ラプラスがこの本を著したということです。
自分の周囲の人を見て,あの人はあんな良い研究 / 仕事をしている,とか,巷ではこんなテーマが流行って盛り上がっている,それなのに自分ときたら,このようなことしかしていない。ときとして周りを眺めて思い悩み,いっそ今やっていることは止めてしまって,別の道を進もう,と思うことがあるかもしれません。それが発展的な転機に繋がることもあります。しかし,今日の「私の名作探訪」では少し反対方向の話をしてみようと思います。一人悪い状況になっても,今自分ができることに最善を尽くして成功した事例です。
話は大分昔にさかのぼります。江戸時代の歌舞伎役者に中村仲蔵という人がいました。1736年(元文元年)に生まれ,1790年(寛政2年)に亡くなった方です。私は歌舞伎に疎いのでよく存じませんが,歌舞伎は階級制度が厳しく,特段の血筋がないと出世していくのは当時難しいことであったようです。中村仲蔵はそんな中,歌舞伎の世界に入り,演技の才能により一代で「初代 中村仲蔵」の名を残すという偉業を成し遂げた人です。その芸に打ち込み,芸を極める姿勢は有名で,これまでに落語や講談,また最近ではテレビドラマなどにもなっております。
仲蔵には示唆に富むエピソードがいろいろあるのですが,その一つに,どのような姿勢で仕事に臨むのが良いか,お手本の一つを示してくれるものがあります。今回はドラマ [1] を参考にそれを紹介したいと思います。
頃は中蔵(後の仲蔵)が努力の末,人気も出てきて,若くして歌舞伎の「名題」というトップの位に昇った時分です。「仮名手本 忠臣蔵」が上演されることになりました。忠臣蔵はご存知のように,多くの魅力的な人物が登場する舞台です。役者さんたちにとって,どの役に付けるのかは重要なこととなります。その配役で,当時上り調子だった中蔵にはさぞや良い役が割り当てられるだろうと思いきや,「斧定九郎」というどうでもよい小さな役しかもらえませんでした。 [1] では中蔵のことをよく思わない人より嫌がらせをされたことになっています。
この冷遇に嫌気がさし,半ばどうでもよいと投げやりな気持ちになっていた中蔵ですが,妻の励ましにより,役づくりに全力を尽くす決意をします。
ー ここで話を少し中断して,斧定九郎がどのような人物設定かを述べておきましょう。詳しく話せば忠臣蔵を遡っていかねばならないので,結論だけ申しますと,彼はもともと藩の次席家老の息子でしたが,身を持ち崩し,盗っ人にまで落ちぶれ果ててしまいます。仮名手本忠臣蔵の舞台では,定九郎は山道でとある老人を殺害して50両を奪います(この老人と50両にもストーリがあります)。しかしその直後,運悪くイノシシに間違えられ,鉄砲で撃たれて死んでしまうという塵のような役です。この場面,もともとはどうでもよい幕だったそうです。どのくらいどうでもよいかというと,その幕では観客たちは弁当を食べたり,用を足しに行ったりする「弁当幕」と呼ばれるようなものでした。
誰も関心をもたないような詰らない幕で,どのように斧定九郎を演じればよいか。中蔵はひどく思い悩みます。そんなある日,通り雨を居酒屋でやり過ごしていると,少し破れた雨傘をさした,貧乏くさいボロボロ身なりの若い下級旗本が駆け込んできます。しかし,その立ち居振る舞いたるや粋なもので,その場にいた中蔵の目を奪います。中蔵は,これだ,とひらめきます。そしてそれを元に定九郎の衣装・演技に工夫を重ね,遂に迎える舞台の初日。中村中蔵演じる斧定九郎は,破れた和傘をもち,黒い紋付の着流しで,全身を白粉で白くした鯔背な姿で現れます。これまでの定九郎の格好といえば,髪は石川五右衛門のようなもじゃもじゃ頭で,山賊まがいの出で立ちをした野卑なものでした。それが中蔵の演技では一変し,落ちぶれて悪党に成り下がった哀れさを残しつつも,もとは育ちの良い家柄の出,驟雨に濡れた色白の「水も滴るいい男」となっていました。
これを見て驚いたのが観客たち・・・は言うまでもなく,共演者・スタッフなどプロの面々です。それまでの常識を吹き飛ばす衝撃を与えました。そしてこののち,定九郎は仲蔵の考案した衣装・演技に依るものとなり,忠臣蔵の見せ場の一つになったそうです。
補遺 [1] NHKドラマ「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」の印象記
私が中村仲蔵の話を知ったのは,小さいころで,テレビで放映されていた落語によります。落語家がどなたであったかは忘れてしまいました。記憶に鮮明に残っているのは,仲蔵が居酒屋で武士の立ち居振る舞いに出くわす場面です。話者がたいへん素晴らしく,その場面がまるで映像を見ているように現前に拡がったことを覚えています。
最近になってNHKのドラマ [1] を視ました。件の武士を演じているのは藤原竜也さんでした。すばらしい演技で,私の記憶に残っている頭の中の映像を遥かにしのぐものでした。この場面を見て,最初に期待したのが,武士が和傘の雨雫を振り落とすシーンです。藤原竜也さんが傘の上下をひょいと逆さに持ち直し,それを勢いよく振ったときには,なるほど和傘を逆さにして振り切るのはいかにも粋だと感心しました。そして酒の飲み干し方。これが絶妙な間の取り方で,まるで名人の落語を彷彿とさせるものでした。言葉がありません。
それから,仲蔵を演じた中村勘九郎さん。長いドラマでしたが,中村勘九郎さんの仲蔵が面白く,ドラマに見入ってしまいました。特に,最後の定九郎の演技。暗い背景に,黒い衣装,それに白いメイクという明暗の対比の中でひときわ映えており,そのさまには感動のあまり涙を堪えるほどでした。このドラマは素晴らしいものです。
今回探訪した作品
[1] 忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段,NHK,2022年12月17日初回放送
https://www.nhk.jp/p/ts/282VPZ4VY6/
[2] 昔聴いた落語
参考文献
今回の記事を書くにあたっては次の項目を参考にしました。
[3] Wikipedia 中村仲蔵(初代)
[4] Wikipedia 中村仲蔵(落語)
仲蔵の生没年は [3]、「弁当幕」、「下級旗本」の言葉は [4] に依ります。
そのほかの「私の名作探訪」は
http://www.araiweb.matrix.jp/BookReviews.html
をご覧ください。
好きな作家の本は数多く持っています。しかしそうでもない作家の本は,ほとんど持っていません。三島由紀夫は,その文体の装飾があまり好みではなく,好きな作家の部類には入っていません。しかし今日,本棚を整理していたら,三島の本がいろいろ出てきました。「永すぎた春」,「音楽」,「女神」,「豊穣の海」,「小説読本」,「作家論」,「文章読本」などです。いずれも読んだ記憶があります。特に「作家論」は面白く読んだことを思い出しました。好みでないといっても,この本の数からすると結局のところ,彼の文体に惹かれていたのかもしれません。
「作家論」(中公文庫)末尾に所収の関川夏央氏による解説によると,かつて三島由紀夫が太宰治の会合にわざわざ出てきて,「僕は太宰さんの文学は嫌いなんです」と言ったところ,太宰は「そんなこといったって,こうして来ているんだから,やっぱり好きなんだよな。」と答えたとか。
まだ読んでいません。後で時間のできたときに読んでみようと思います。内容については専門ではないので,語れません。
夏目漱石の「草枕」の最初の部分
「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」
「ただ人が作った人の世が住みにくいからとて,超す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。」
この小説は調子の良い文体のみからなっていて,ここまで書きとおしたことには驚嘆します。しかし,これは特異な存在とも言えます。つまりあまりに特徴的でお手本にはなりにくいでしょう。あるいは,がんばって草枕風の文体で完遂すれば,それはそれで案外面白いものになるかもしれません。
[1] からの孫引きです.
「テクノロジーとは,世界を体験しなくてもすむように,世界をアレンジするわざである」
(マックス・フレッシュ)
[1]『グレン・グールド 神秘の探訪』(ケヴィン.バザーナ著,サダコ・グエン訳,白水社)p343 より.
プログラミングと動画で学ぶ応用線形代数と深層学習のサイトです。どうぞご覧ください。 http://www.araiweb.matrix.jp/LinearDL.html
認識される世界は人がつくったものですが,その中で錯覚は,客観的な世界との差異がわかる「脳内の世界」と「客観的世界」との接合地点となっています。そのため,ここには数理研究の手掛かりがあり,錯視の数理的研究の可能性があると私は思っています。
哲学的には突っ込みどころ満載の言明ですが。
新井仁之
新井仁之著
数学者が書いた深層学習講義
畳み込みニューラルネット篇
を下記サイトに公開しました。
http://www.araiweb.matrix.jp/DeepLearning.html
CNNの深層学習の基礎について,計算を丁寧に展開しながら数学重視の解説をしました。
Appendix に DL toolboxを使わないMATLABプログラムもあります。
どうぞご覧ください。
ルベーグ積分のアルゴリズムによる積分の数値計算 - MATLAB版-
をアップしました。
表題のレクチャーノートをアップしました。
http://www.araiweb.matrix.jp/MATLAB/DCT_Tutorial_using_MATLAB1
最近はまっている MATLABのライブエディターを使って作成しました。MATLABを動かしながら数学理論を学べます。
目次
1.記号と用語
2.離散コサイン基底
3.正規直交基底
4.離散コサイン基底によるフーリエ展開
5.離散コサイン基底から離散コサイン変換(DCT)
6.離散コサイン変換と逆離散コサイン変換
7.データの解析例(東京の潮位)
8.データ圧縮事始め
興味のある方はぜひご覧ください.
No.2 では2次元データ(画像データ)を扱う予定です。
新井仁之著「ルベーグ積分講義 [改訂版]」(日本評論社,2023)と連動した動画サイトです。
AIによれば**です。それで多くの人は**を信じる。なにしろAIが計算したことだから。
しかし「AIによれば」と言ってだますAI詐欺だって起こり得る。また誤っていた場合,「AIが言ったことだから」という責任回避も。AIまかせは楽だが,人は科学的批判の精神を捨て,無知蒙昧になってはいけない。
第4次産業革命の渦中,数学のような基礎学問でも,大学が20世紀と同じことを教えているわけにはいきません。教員はこれからの科学・技術・社会の発展を見ながら,新しいものを取り入れる能力,そして過去の蓄積の何が必要かを取捨選択する能力を問われます。
#大学教育 #数学教育 #第四次産業革命
1時限 8:50~10:30
2時限 10:40~12:20
3時限 13:10~14:50
4時限 15:05~16:45
5時限 17:00~18:40
6時限 18:55~20:35
7時限 20:45~21:35
NHK総合「世界!オモシロ学者 スゴ動画祭5」(2023年3月16日放映)にビデオ出演しました.研究成果の一つであるオリジナル錯視も紹介されました.
最近,錯視日誌を更新していませんでしたが,そもそも researchmap のブログ機能は,現在どのくらい利用されているのでしょう。講義動画とかリンクではなくアップできるといいのですが。
chatGPTには,数十年前に数式処理 REDUCE を知ったときと同様のタイプの驚きを感じました.試しに微分方程式の少し難しめの初期値問題を解かせたら,その問題は,計算過程も付けて見事に正解を出してきました.ほかにも面白くていろいろなタイプの数学の問題を聞いてみたところ,証明問題などもほぼほぼ正解を出してきます.中には,学生が陥りやすいミスをおかしていることも少なからずありました。
chatGPTの利用方法としては,chatGPTがある時点で回答してきた証明の間違い探しをさせることが一つの有効なものと考えられます.ただ,chatGPTは毎回同じ答えをするわけではないので,あくまでも「ある時点」での証明です.
計算機支援型の授業は革新的な変革の場面にあるといえます.
数理科学デジタルオープンレクチャーズ第30回配信
ディープラーニングの基礎入門 No.1 - 順伝播型ニューラルネット
講師:新井仁之(早大教授・東大名誉教授)
第31回配信
ディープラーニングの基礎入門 No. 2 誤差逆伝播法
講師:新井仁之(早大教授・東大名誉教授)
数理科学デジタルオープンレクチャーズ
これまでのコース別一覧はこちらです:
http://www.araiweb.matrix.jp/OpenLect.html
『実解析的方法とはどのようなものか』(新井仁之)
ハーディ-リトルウッド最大関数,カルデロン-ジグムント特異積分,
リトルウッド-ペイリー理論など調和解析の入門事項を2001年10月26日の
Encounter with Mathematics で講義したときのスライドです.
20年以上たっていて正に光陰矢の如し.
今年もよろしくお願いします.
画面をゆっくりと上下にスクロールしてください.文字が浮遊して動いているように見える錯視です.
早稲田大学教育学部数学科 数学序論2 第12回講義(担当:新井仁之)
で次の講義を行いました。
タイトル
脳が行う視知覚の情報処理と数理モデル -錯視の構造の数理解析から非線形画像処理まで-
【講義概要】
下の図をやや大きめにして,目の高さが円の中心にくるように正面からしばらく見ていてください(ただし気分が悪くなりそうな場合は,すぐに見るのをやめてください)。緑の4本の閉曲線がゆがんで見えませんか?
しかしそう見えるのは貴方の脳が錯覚を起こしているからです。緑の4本の曲線は本当は同心円です。これは2012年に新井仁之らによって発見された新しい錯視で「歪同心円錯視」といいます。
なぜこの画像を見たとき錯視が起こってしまうのでしょうか?
私たちの脳の中では一体何が起こっているのでしょうか?
これは一例で,他にも人の視覚や脳にはいろいろな謎があります。そういった謎に,脳が行う視知覚情報処理に関する独自の数理モデルを使って迫ります。もしも時間的な余裕があれば,更に視知覚の数理モデルを使って発明した様々な実用的な画像処理法や,視覚芸術への興味深い応用にも言及します。
今回の講義では,応用・計算調和解析,非線形画像処理,脳科学,視覚科学,知覚心理学などの数学や科学技術を使って行った研究の成果の一端を話します。いわゆる
STEAM (Science, Technology, Engineering, Arts, and Mathematics)
を融合して新理論を作る話です。
ただ本数学科には,こういった数学と諸科学に関わる数理科学の講義科目がありません。一方,本講義内容は本質的にその数学・数理科学を使うため,残念ながら数学の部分の話しはできません。その代わり,ビジュアルに楽しめる部分を主にレクチャーします。
それでは脳と視覚の神秘の世界を,数理の船に乗って冒険してみましょう。
早稲田大学教育学部数学科3年生に配布されたゼミ案内の原稿
新井仁之ゼミ(数学演習1A,2022年度)
定員6名以内
本ゼミでは応用調和解析学(applied harmonic analysis)という分野を基礎から学習します。調和解析学と応用とそれに関するコンピュータによる計算を勉強したい方を歓迎します。
1.学習内容
数学演習1Aと2A(23年度)では【テキスト1】を用いてフーリエ解析・離散フーリエ解析・ウェーブレットの数学理論及びディジタル信号処理,とりわけ画像処理への応用を学んでいきます。内容紹介が下記に記載のガイダンス動画にありますのでご覧ください。ゼミは皆さんにテキストを輪読してもらう形式で行います。
この他【テキスト1】にある信号・画像処理への応用例などを,MATLAB(*)を使って計算することも副次的にゼミで学びます(MATLABやプログラミングは未経験でも構いません)。その際【補助教材2】,【補助教材3】も輪読・実習します。
2.テキスト
【テキスト1】 新井仁之『フーリエ解析とウェーブレット』(朝倉書店,2022年1月刊行予定).http://www.asakura.co.jp/detail.php?book_code=11761
【補助教材2】 奥野貴俊・他『MATLABではじめるプログラミング教室』(コロナ社,2017).
【補助教材3】 J.M.Giron-Sierra, Digital Signal Processing with Matlab Examples,vol.1~3, Springer, 2017.(図書館電子ブック利用可)2Aではこの中から応用調和解析に関連する部分を適宜,補助教材として使う予定。
(*) MATLABについて このプログラミング言語は行列,離散フーリエ,ウェーブレット,画像処理等の計算に長けています。早稲田大学は2019年度よりMath Works社とMATLABの包括ライセンスを契約し,早大生はMATLAB及び MATLAB Online を無料で使えます。MATLAB Online はMATLABをパソコンにインストールしなくても標準的なWebブラウザーから実行可能です。ゼミの実習ではMATLAB Onlineを使います。
注意 本ゼミは応用調和解析学を学ぶゼミです。計算機は補助手段として利用するだけです。プログラミングそのものを学びたい方は本ゼミには向いていません。
教員紹介 早稲田大学研究者データベース
新井仁之のホームページ
新井仁之研究室のホームページ
主に書店あるいは古書店を歩き回り、そこに陳列されている膨大な本の中から今までに発掘した掘り出し物をスローペースで紹介していきます。
テーマは数学、アート、錯視、文学関係です。
これまでに発掘した名著一覧(順不同。タイトルをクリックすると本文をご覧頂けます。)
★ どのような環境にあっても全力を尽くした話
発掘本:NHKドラマ「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」印象記
★太宰治と発散級数論
発掘本:太宰治著『乞食学生』
★「少女終末旅行」の意志と表象としての世界
発掘本:つくみず著『少女終末旅行』(新潮社)&アニメーション
ショーペンハウアー著『意志と表象としての世界』(中央公論社)
ショーペンハウアー著『哲学入門』(旺文社文庫)
★私の微分積分法がすばらしい
発掘本:吉田耕作著『私の微分積分法 -解析入門』(ちくま学芸文庫)
★マルチンキーヴィッチの悲劇
発掘本:ジグムント著『作用素の補間に関するマルチンキーヴィッチのある定理について』(純粋・応用数学雑誌 1956年)
★ディーバーな関数論.笠原乾吉著『複素解析』(ちくま学芸文庫)
発掘本:笠原乾吉著『複素解析 1変数解析関数』(実教出版,ちくま学芸文庫)
★数理科学を学べる本がほしい
発掘本:アメリカ数理科学研究委員会編『数理科学の世界 数学の新しい可能性』
(ブルーバックス)
★『ロジ・コミックス』 ラッセルとめぐる論理哲学入門が面白い!
発掘本:ドクシアディス他『ロジ・コミックス ラッセルとめぐる論理哲学入門』
(筑摩書房)
★印象深い確率論の本と伊藤清著「確率論」幻の1953年版
発掘本:伊藤清著『確率論』(岩波書店、1953)
伊藤清著『確率論』(岩波講座「基礎数学」)
コルモゴロフ著『確率論の基礎概念』(東京図書版、ちくま学芸文庫版)
★落語と美しい日本語
早稲田大学学芸会,古今亭志ん吉師匠,金原亭馬生師匠の落語
★ 学問をするということ 吉田松陰をめぐって
発掘本:司馬遼太郎「世に棲む日々,一,二」(文春文庫)
吉田松陰「留魂録」(青空文庫)
★グレン・グールドから思うこと
発掘本: ジョン・P. L. ロバーツ編『グレン・グールド発言集』(みすず書房)
ティム・ペイジ編『グレン・グールド 著作集2』(みすず書房)
★微分積分学の誕生とニコラウス・クザーヌス
発掘本:高瀬正仁『微分積分学の誕生』(SBクリエイティブ, 2015)
★ 今はなき確率論のコンパクトな名著 - 鶴見茂著「確率論」
発掘本:鶴見茂著『確率論、近代確率論への入門』(至文堂)
「近代数学新書」シリーズ(至文堂)
★音の記憶 - 脳の神秘,そして音を楽しむとりとめもない話
発掘録音:ラヴェル『ピアノ協奏曲』L. バーンスタイン指揮・ピアノ,サボイ交響楽団(CAMDEN)
ラヴェル『ピアノ協奏曲』P. ブーレーズ指揮,ピアノ C. ツィメルマン,クリーヴランドO(Deutsche Grammophon)
★出版社とともに消えた名著 測度と積分、関数解析
発掘本:鶴見茂著『測度と積分』(理工学社)
宮寺功著『関数解析』(理工学社)
★われ童子の時は・・・の句を聞いて。文語体と口語体
発掘本:文語訳新約聖書(岩波書店)
Ghost in the Shell / 攻殻機動隊(アニメーション)
★アイヴズの答えのない質問
発掘本:L. バーンスタイン『答えのない質問』(1973年ハーバード大学での講座
と実演)(ニホンモニター)DVD(*通販で入手)
★数学書売り場が寒い時代に復刊:コルモゴロフ・フォミーンの函数解析の基礎(オンデマンド)
発掘本:コルモゴロフ、フォミーン著『函数解析の基礎』(岩波書店)
★お薦めの錯視の本
発掘本:ニニオ著『錯覚の世界 古典からCG画像まで』(新曜社)他4冊
★文庫で復刊 現代数学への招待 多様体とは何か(志賀浩二著)
発掘本:表題のもの(岩波書店、ちくま学芸文庫)
★翼よ、あれがパリの灯だ
発掘本:リンドバーグ著『翼よ、あれがパリの灯だ』(旺文社文庫、恒文社)
★オリジネータの本は違う!メイエの『ウェーブレットと作用素』
発掘本:Y. Meyer著 "Wavelets and Operators" (Cambridge UP)
★ウェーブレットの数学書、この一冊
発掘本:P. Wojtaszczyk著 "A Mathematical Introduction to
Wavelets" (Cambridge UP).
★バナッハの線形作用素論とサクスの積分論雑感
発掘本:S. Banach, Theory of Linear Oprations(Dover)
S. Saks, Theory of the Integral (Dover)
★宮寺功著「関数解析」の解説
発掘本:宮寺功著『関数解析』(ちくま学芸文庫)の解説
★お薦めの関数解析とウェーブレットの本
発掘本:W. Rudin, Functional Analysis (McGraw Hill) 他
--------- 自著紹介 ----------
☆応用重視の線形代数はどのような内容を講義すればよいか
新井仁之,線形代数,基礎と応用(日本評論社)
------------------------
『展覧会の絵 ー「見る」ことを研究し始めた数学者が見た美術の世界』はこちらからご覧ください。
みなさんよくご存じのように,幕末・明治維新は様々なタイプの人がほぼ同時に歴史に登場し、日本を守るため、そして日本を変えるために身を粉にしてそれぞれの役割を果たしました。この時代を題材にした小説を読んでいると、それを読んだ時期、自分を取り巻く環境によって、共感できる人物がそのときどきで出てくるようです。
最近では吉田松陰に強い感銘を受けています。ただ、昔から吉田松陰への憧れがあったことは確かです。
吉田松陰を最初に知ったのはいつの頃かは憶えていませんが、母校の獨協中学校に入学した当時には、獨協の前身の獨逸学協会学校の創始者が西周と、吉田松陰の弟子の品川弥次郎であることは認識していたので、その頃だったかもしれません。もう少し後になって、高校生の時分に司馬遼太郎原作のNHK大河ドラマ「花神」を見ていて、篠田三郎演ずる吉田松陰をカッコイイと感じ、非常に大きなインパクトを受けたことははっきりと記憶しています。とりわけ、小伝馬町の牢で罪人沼崎吉五郎に留魂録を託すシーン。篠田三郎が(正確な台詞は覚えていないが)留魂録の一節、人にはそれぞれ春夏秋冬の四季があり、十歳で死する者にも自ずと四季があり、また長寿の者にもその四季がある、自分にも四季があり、実を結んでいるはずだがそれが秕なのか栗なのかはわからない、と言う件は涙と共に強く心に刻み込まれました。
吉田松陰は人より少し早過ぎる考えを持っていました。最もよい例は黒船に乗り込むことを決意して、実践したことでしょう。このときはまだ出国はご法度であったので、結局、牢に繋がれてしまいました。1854年のことです。しかし、そのおよそ六年後の万延元年(1860年)、勝海舟らが幕府公認のもと堂々と咸臨丸で渡米し、米国の文明に触れています。時代の激変期とはいえ、たった六年の違いです。何かを人より早くすると風当たりが強いのは、大事小事にかかわらずいつの時代でも同じことと言えましょう。そして種々の障壁に阻まれやめてしまうのか、あるいはどうしてもやらざるを得ない気持ちになって行うのかは、その人の志の強さによるものです。
その後、司馬遼太郎の『世に棲む日々』を読み、吉田松陰についてより詳しく知ることができました。この本を読んで、松陰を作ったのは幼少時に受けた教育に違いないと確信しました。「世に棲む日々」によれば玉木文之進という叔父が訳あって松陰の個人教師になったのですが、この人の教育が体罰を伴う徹底したものでした。現在だったら明らかに犯罪ものです。印象的なのは、松陰の頬に蠅がたかりかゆかったため、掻いたとして文之進から体罰を受けたことです。
「えっ、何で。」
何でそんなことで体罰を受けなければならないのか。本を読んでいて思わず声を出してしまいました。もちろん体罰は良くないことで、してはならないのですが、続きを読むと文之進が教えたかった思想は理にはかなっています。文之進が怒った理由はこうです。
「学問を学ぶことは公のためにつくす自分をつくるためであり、そのため読書中の頬のかゆさを掻くことすら私情である」、
「痒みは私。掻くことは私の満足。それをゆるせば長じて人の世に出たとき私利私欲をはかる人間になるのだ」
(司馬遼太郎「世に棲む日々」より)
確かに学問をするということは、公のためのものであり、だからこそ学生という身分を社会は許容しています。もちろん言うまでもなく学者も同様です。学生も学者も全身全霊をもって学問に勤しみ、世の中に資するようでなければなりません。改めて学問をするということは公のためであるという心がけを身に染みて感じました。
吉田松陰については他にも書きたいことはいろいろありますが、長くなってきたので、この辺で「世に棲む日々」で知った話をもう一つ紹介して今回のブログを閉じることにいたします。
母校の創始者の品川弥次郎ですが、松陰に入門したのは十四歳のときでした。入門理由は、弥次郎の家が検断人の家であったので、人を助ける人間になりたいということだったそうです。松陰は入門を許しましたが、
「自分は人の師になりえない人間であるが、兄弟になったつもりで一緒に学ぼう。それでよければ来てもよい」(「世に棲む日々」より)
と言ったと書かれています。ちなみに松陰はこのような少年にも敬語を使っていたそうです。
私自身も学生さん、生徒さんには敬語を使っています。彼らは若いといっても一個の独立した人格を持っているからです。
今回の発掘本
司馬遼太郎「世に棲む日々,一,二」(文春文庫)
吉田松陰「留魂録」(青空文庫)
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他の書評は『私の名著発掘』へどうぞ
深夜にラヴェルのピアノ協奏曲をヘッドフォンで聴きながら,数理科学デジタルオープンレクチャーズのホームページの整備をしています。
この作業をしながら,個人的なある小さな事件を思い出しました。まずそのことから始めましょう。
私がラヴェルのピアノ協奏曲を知ったのは,もう何十年も前,中学か高校のときにFMラジオから流れてくる曲を聞き流していたときでした。躍動感があって音の組み合わせが面白い曲だなあと思いました。しかしその楽曲よりも印象に残ったことがありました。それは演奏が終わった後に進行役の方が発した「演奏は・・・サボイ交響楽団でした」という言葉でした。
サボイ。
この言葉が何故か頭の中で何かと共鳴したかのように響き,印象深く思えました。ただその後,サボイ交響楽団という名前を耳にすることはなく,またラヴェルのピアノ協奏曲は何度も聴くことがあったものの,ラジオで流れていた録音を聴く機会もありませんでした。
ところが数年前,バーンスタインが指揮とピアノのいわゆる弾き振りをした録音を,ある商用音楽サイトで聴くことがありました。
「あっ,これだ」と出だしのオーケストラのパートを聞いてすぐにわかりました。
擦り切れた布にかすれた色を急いで塗ったような音の敷物はまさしくFMラジオで昔聴いた演奏そのものだったのです。そのサイトには演奏の詳細データが記されていませんでしたが,レコードジャケットの画像が貼ってあり,それを拡大して見ると,確かに楽団は Savoy symphony orchestra とありました。何十年ぶりの再会でしょう。こんなことってあるものなんだ,しばらく思考が停止しました。そして,演奏を聴いていると,昔住んでいた家の自分の部屋で FMラジオのクラシック音楽を聴いていた頃の情景も蘇りました。その家は今はもうありません。
ところでバーンスタインの演奏としては,十年近く前に彼の指揮・ピアノ,そしてフランス国立管弦楽団の演奏のDVDを購入して視聴したことがありました。ですがそのときはFMラジオから流れてきた演奏の記憶は全く起こることはありませんでした。同じ指揮者・ピアノ演奏でも,演奏の年代,オーケストラ,録音が異なると,傾向が似ていることはわかりますが,まるで違って聞こえるようです。
音の記憶というのは驚くべきものです。一度聴いた演奏が記憶の底に眠っていて,その記憶は同じ楽曲,しかも同じ演奏家のものでも何も反応しないのに,昔聴いた録音がなり始めた途端に,その記憶が突然出現するのです。隠れていたものが現れたというよりも,どこかに四散していた片割れが急に沸き起こってきて,結合したといった方がよいかもしれません。それも何十年も前からほったらかしていた断片が。
さて,今聞いているのはじつはバーンスタインの演奏ではなく,ブーレーズ指揮,ツィメルマン(ピアノ),クリーヴランド管弦楽団演奏の録音です。これにはバーンスタインのような躍動感はなく,最初にこの演奏を聴いたときには,今から思えば小さめの音で聴いていたため,あまり好きになれませんでした。しかし,よく聴いてみると,ある音が別の音に隠れるということがなく,陳腐な表現ですが汚れのない音(他の音からでる膜に汚染されていない音)がくっきりと目の前に出てきて長い間持続しているのです。これは後期のブーレーズの演奏の特徴のように思われます。
ブーレーズといえば,一部の音楽評論家の先生方が昔のブーレーズは良かったが,後期のブーレーズは良くないといった主旨のことを言われています。専門家の方がそうおっしゃるのだから,正当な理由が有るのでしょう。しかしながら,素人が申すのははばかられますが,やはり人の好みというのは専門的な理屈ではとらえきれないもので,ブーレーズの後期の演奏にも素晴らしいものがたくさんあると思います。例を挙げますと,ラヴェルの『ダフニスとクロエ全曲』(クリーヴランド),ヴァレーズの『アルカナ』(シカゴ),マーラーの『交響曲第3番第1楽章』(ウィーン)などです。録音のせいもあるのかもしれませんが,音のもつ立体感を伴う色が心地よく,一つ一つの音が独立に空間を飛び交う姿が鮮やかに見えます。たとえば『アルカナ』の旧録(NYP)と新録(シカゴ)を比較すると -言葉では表し辛いのですが,あえて言えば -旧録の音は薄い茶色で,それがほんの少しだけ食道から胃にかけて不快感を伴う一方,新録は濃紺と黒の間の澄んだものとなっています。ただ旧録の方が見た目まとまっていて分かり易いという優位点はあります。もちろん個人の印象です。また旧録が良くないということでは全くありません。
音や音楽を聞いてイライラすることがときどきあります。ブーレーズの後期の演奏はそういったことがなく(前期にもありませんが前期以上に),すべてがすっきりと心地よく響きます。一般にどのようなときイライラするかというと,音が本来収まるべき場所ではなないところで自己主張しているときです。このような音は金属が脳に切り込んでくるように感じます。これは比喩的な表現ではありません。しかしブーレーズの演奏では,すべての音が漏れなくあるべきところにあり,形状もきれいで見ていて気持ちが落ち着くのです。
おそらくブーレーズの演奏を聴くときは,音楽的な興奮や陶酔,ストーリー性というよりは,音そのものを楽しんでいるのだと思います。楽曲を楽しめる演奏はいろいろありますが,ブーレーズの演奏は音そのものの姿に不安定さがなく,音の形と色の流れ,そして音の空間的な配列を堪能できます。
今回はとりとめのないブログになってしまいました。きっと私自身が今日は混濁しているのでしょう。
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数学,数理視覚科学によるイノベーション創出に関連して,次の新井研究室発行のパンフレットがあります。ご興味のある方,企業の方は早稲田大学特許・研究シーズよりお問い合わせください.
数理視覚科学の概説と産業活用のために(新井研究室発行・非売品)
全32ページ・オールカラー・A4版
世界中のさまざまな教育・研究機関において、授業のオンライン公開配信、すなわちオープンコースウェア(Opencourseware, OCW) が行われています。 数学・数理科学専用の OCW をぜひ作りたいと思い、
数理科学オープンレクチャーズ
Open Lectures in Mathematical Sciences
https://www.youtube.com/channel/UC1lFftT-LKp34mNbV0pjkRw/videos
を始めました。ただし本企画は、大学での授業を配信するのではなく、オンライン公開用のオリジナルコンテンツを制作し配信します。
オンライン授業の良さは,いつでも,どこでも,誰でも視聴できることです。ぜひ,お時間のあるときにご視聴ください。もちろん視聴無料,事前登録なしです。
なお数理科学オープンレクチャーズは個人企画のため不定期配信になりがちですが、数学・数理科学に関する
一般向け講義、大学/大学院レベルの講義、専門的な講演
を増やしていく予定です。皆様の学習の一助になれば幸いです。
*)YouTubeを使っておりますが,本チャンネルの収益化は行っておりません。
数理科学オープンレクチャーズ
わかりやすい入門講義動画がいろいろあります.もちろん視聴無料,登録不要です。
・ルベーグ積分と実解析
・応用線形代数
・フーリエ解析
・超関数
・ウェーブレット
・画像処理入門,etc
講師:新井仁之
続編や他のテーマも適宜公開予定。
URL: https://researchmap.jp/araiH/OpenLectures
離散ウェーブレット解析で重要な多重解像度解析について,その考え方をハール・ウェーブレットを使って丁寧に説明します.また,連続ウェーブレット変換から離散ウェーブレット変換への移行にはどのようなメリットがあるのかを述べます.ウェーブレットの本格的な入門講義第2段です.
『WASEDA University GUIDE BOOK 2022』の科目紹介「こんな学びが面白い!」で私の担当科目『微積分1A』が取り上げられました.
https://www.waseda.jp/nyusi/ebro/ug/admissions_jp_2021/html5.html#page=65
アップしました。
ウェーブレットへの誘い - プロローグ:窓付きフーリエ変換から連続ウェーブレット変換へ,講師:新井仁之,数理科学オープンレクチャーズ
概要:ウェーブレットへの誘い,序章です。連続ウェーブレット変換についての入門講義をします。特に窓付きフーリエ変換の欠点を連続ウェーブレット変換がどのように補っているかを解説します。
ルベーグ積分の本として,古くから有名なものはサックスの『Theory of the Integral』です。また日本では,伊藤清三『ルベーグ積分入門』(裳華房)が良く知られています。私自身も大学1年の夏休みに『ルベーグ積分入門』を読みました。サックスや伊藤先生の教科書は抽象的測度論から入っているという点で,ルベーグ積分の本としては近代派と言えるでしょう。
これに対して一昔前,積分を極度に抽象化して線形汎関数として捉える急進的なブルバキ流の教育方法が提唱されました。これは(20世紀の)現代派です。
ルーディンの『Real and Complex Analysis』は近代派と現代派の折衷派といえるでしょう。
これらと比較するのは恐れ多いですが,私の講義動画(下記動画 (1), (2) 参照)や「ルベーグ積分講義」は古典への回帰かもしれません。
なお線形汎関数の方法としてのダニエル積分については下記の講義動画 (3) をご覧ください。積分が抽象化され,そのため無限次元空間上の測度や積分も見通し良く扱えるようになってます。
講義動画(1):ルベーグ測度入門
講義動画(2):ルベーグ積分入門
講義動画(3):ダニエル積分と無限次元空間上の測度(確率論への応用)
アップしました。
一般逆行列の入門講義です。特にムーア・ペンローズ一般逆行列に焦点をあてて解説し,最小2乗解への応用,多項式曲線によるデータフィッティングへの応用について述べます。応用線形代数講義 No. 1「特異値分解入門 基礎から画像処理への応用まで」もあわせてご覧ください:
応用線形代数講義 No.1 https://youtu.be/2kJmGyEGwJU
参考書:新井仁之『線形代数 基礎と応用』(日本評論社)
実解析学講義番外篇です.
確率論や統計学では,与えられた分布をもつ独立確率変数の無限列がよく使われます.このような無限列の存在を保証する定理を一般化したものに角谷の定理があります.伊藤清先生がこの角谷の定理にダニエル積分を用いた別証明を与えています.この証明を本講義では,ダニエル積分とその使い方を述べつつ解説します.
アップしました.
5月12日に東京大学理学系研究科卓越大学院プログラム(FoPM)の4PMセミナーで講演をしました.
題目は「錯視の数学的研究」です.Zoomによる講演でしたが,活発な質問がたくさんありました.
新井仁之研究室 案内
早稲田大学教育学部数学科・大学院教育学研究科
【研究テーマ】
数理視覚科学とその応用の研究をしています。人工知能とも関連しつつあります。このほか解析学、応用解析学、確率過程論の解析学への応用も研究しています。
このうち特に数理視覚科学は新井が創始した理論で、他では見ることのできないものといえます。現在流行しているものを後追いして研究するというスタイルではなく、自ら理論体系を創始し、最先端を切り開き、さまざまな成果を上げていくというスタイルです。
【担当教員紹介】
早稲田大学研究者データベースより
【研究室で学ぶ内容】
新井研究室では、数学を単に学問のための学問として研究するだけではなく、諸科学技術、社会に応用しうる研究も目指します。
学部ゼミでは専門にとらわれず解析系の数学、応用数学を広く学んでいきます。
大学院ゼミでは主に応用調和解析、あるいは数理視覚科学を研究します。
【担当教員の主な研究内容】
私自身の研究テーマは、解析学、応用解析学、数理視覚科学、数理視覚科学とAI(人工知能)との関係、画像処理、解析学の確率論的方法による研究,アートといった分野の研究です。
数理視覚科学に関する研究概要については、大学初年級・高校生向けに紹介したビデオ (早稲田大学体験Webサイトより)がありますのでご覧ください:
をご覧ください。
【学部ゼミの内容】
ゼミの内容は年度によって異なることがあります。本ゼミに入ることを検討する際は、数学科で配布(例年11月頃配布)の学部ゼミ案内をご覧ください。
ゼミは3年次(数学演習1A)、4年次(数学演習2A)の2年間継続です。基礎テキストは1Aで、テキストは2Aで学びます。
2021年度新3年ゼミ
基礎テキスト・テキスト:J.J.Duistermaat and J.A.C.Kolk, Distributions Theory and Applications, Birkhaeuser, 2010
2021年度4年ゼミ
基礎テキスト(20年度):久保川達也著『現代数理統計学の基礎』(共立出版).
2020年度4年ゼミ(修了)
テキスト(20年度後半):増田久弥編著『応用解析ハンドブック』(丸善)の第I部基礎編
基礎テキスト(19年度~20年度前半):山田功著『工科のための関数解析』(サイエンス社)
2019年度4年ゼミ(修了)
テキスト(19年度):新井仁之著『ウェーブレット』(共立出版)
基礎テキスト(18年度):A. Bogges and F. J. Narcowich, A First Course in Wavelets with Fourier Analysis, 2nd ed., Wiley.
2018年度4年ゼミ(2017年度石井仁司先生の3年ゼミを引き継ぎ)(修了)
テキスト:E.M.Stein and R. Shakarchi, Real Analysis, Measure Theory, Integration, Hilbert Spaces, Princeton Univ. Press.
関連サイト
新井仁之のホームページ