論文

査読有り
2021年7月

北海道の渓流魚を対象とした治山ダムの改良効果の検証:長期モニタリングによる検証と環境DNAの活用可能性

応用生態工学
  • 速水将人
  • 石山信雄
  • 水本寛基
  • 神戸崇
  • 下田和孝
  • 三坂尚行
  • 卜部浩一
  • 長坂晶子
  • 長坂有
  • 小野理
  • 荒木仁志
  • 中嶋信美
  • 福島路生
  • 全て表示

24
1
開始ページ
61
終了ページ
73
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
DOI
10.3825/ece.20-00043
出版者・発行元
応用生態工学会

河川上流域に多数設置された治山ダムは,渓流や森林の荒廃を防ぐ重要な役割を果たす一方で,渓流魚の河川内の自由な移動を阻害している.こうした状況に鑑み,河川生態系の保全を目的とした改良事業(魚道の設置,堤体の切り下げ)が国内の多くの治山ダムで実施されている.本研究では,北海道 3 河川に設置された治山ダムを対象に,魚道設置と切り下げによるダム改良工事が,その上下流の渓流魚類相に与える影響について,改良工事前後で行われた採捕調査によって検証した.同時に,ダム改良後の採捕結果と環境 DNA メタバーコーディングによる魚類相推定結果を比較し,治山ダム改良事業における環境 DNA メタバーコーディングを用いた魚類相推定の有効性を検討した.採捕調査の結果,治山ダムの改良事業によって,遡河回遊魚であるアメマスとサクラマスのダム上流への移動を可能にし,10 年後においても効果が確認された.環境 DNA メタバーコーディングでは,採捕された全 9 種に加え,採捕では確認されなか ったニジマスの計 10 種が検出され,治山ダム上下流に設定した各調査地点における遡河回遊魚のアメマス・サクラマスや,ハナカジカの採捕結果との一致率は 70-90 %であった.環境 DNA メタバーコーディングを治山ダム改良事業に適用する場合,評価対象魚種の特性や過去の採捕記録を考慮する必要はあるものの,改良前の治山ダムにおける魚類の遡上阻害の推定や,改良後の河川の魚類相・生息状況の推定に有効であることが示唆された.但し,治山ダムの切り下げを例にとると,遡上阻害の改善効果が維持される期間は工法によって異なる可能性もあり,正確な評価には様々な河川・工法を対象としたさらなる研究の蓄積が必要である.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.3825/ece.20-00043
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11528360
CiNii Research
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390008089767602048?lang=ja
URL
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ece/24/1/24_20-00043/_pdf
URL
http://id.ndl.go.jp/bib/031641160
ID情報
  • DOI : 10.3825/ece.20-00043
  • ISSN : 1344-3755
  • eISSN : 1882-5974
  • CiNii Articles ID : 130008095704
  • CiNii Books ID : AA11528360
  • CiNii Research ID : 1390008089767602048

エクスポート
BibTeX RIS