論文

査読有り
2018年3月

妊娠・分娩を契機に診断され鑑別に難渋した先天性胆道拡張症合併妊娠の1例

北海道産科婦人科学会会誌
  • 石田 久美子
  • ,
  • 中西 研太郎
  • ,
  • 小野 方正
  • ,
  • 早坂 美紗
  • ,
  • 村上 幸治
  • ,
  • 野澤 明美
  • ,
  • 北村 晋逸

62
1
開始ページ
41
終了ページ
46
記述言語
日本語
掲載種別
出版者・発行元
北海道産科婦人科学会

妊娠後期から分娩後にかけて突然強い腹部症状をきたした場合、様々な疾患が鑑別に挙がるが、その一つに先天性胆道拡張症がある。今回我々は妊娠を契機に発症し、鑑別に難渋し分娩後に診断に至った先天性胆道拡張症合併妊娠の1例を経験したので報告する。症例は27歳、未経妊、既往歴と妊娠経過に特筆すべき所見を認めなかった。妊娠36週4日に突然嘔気が出現し、食事摂取が困難となったが自宅で様子を見ていた。妊娠37週1日に前期破水で入院、微弱陣痛のため促進を行い同日経腟分娩した。児は男児、出生体重2,480g、アプガースコアは1分値8点/5分値8点であった。分娩中より血圧は上昇傾向を認め、産後も高血圧が持続していたため血液検査を施行し、軽度の肝機能障害と高ビリルビン血症を認めた。産後約10時間で心窩部痛を訴えたため、子癇発作の予防として硫酸マグネシウムの投与を行った。産後3日経過しても症状の改善はなく、血液検査で高ビリルビン血症の増悪があり画像検査を施行したところ、肝臓周囲に154×89×100mmの巨大な嚢胞を認めたため消化器内科に紹介し、先天性胆道拡張症(戸谷分類IV-A)と診断された。産後4ヵ月後に開腹総胆管嚢腫切除術と胆管空腸吻合術を行い、術後経過は良好である。先天性胆道拡張症の初発症状はHELLP症候群や急性妊娠脂肪肝と類似していた。妊娠後期から産褥期にかけて突然の嘔気・腹痛など消化器症状を訴える妊産婦に対しては、母体・胎児に重大な影響を及ぼす疾患であるHELLP症候群や急性妊娠脂肪肝といった妊娠合併症のみならず、先天性胆道拡張症などの偶発合併症も考慮しながら広く鑑別にあたることが肝要である。(著者抄録)

ID情報
  • ISSN : 0367-6277
  • 医中誌Web ID : 2019167367

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