共同研究・競争的資金等の研究課題

2020年4月 - 2024年3月

海鳥類を利用した日本周辺の水銀暴露ホットスポット海域の解明

日本学術振興会  科学研究費助成事業 基盤研究(B)  基盤研究(B)

課題番号
20H04379
体系的課題番号
JP20H04379
配分額
(総額)
18,070,000円
(直接経費)
13,900,000円
(間接経費)
4,170,000円

海洋環境中に存在する有機水銀は生物濃縮によって高次消費者に蓄積され,たとえ低濃度の蓄積であっても神経障害などの悪影響を与える.低濃度の水銀汚染の場合,高次捕食動物の行動,生理,生態への影響を評価することは難しい.本研究では海洋生態系の高次捕食動物であるウミネコを研究対象種とした.異なる時期の水銀暴露を反映する血液と羽を用いて,栄養段階の指標となる窒素安定同位体比と水銀濃度を測定することで,餌の栄養段階の違いを考慮した水銀暴露を評価した.青森県蕪島,弁天島と新潟県粟島のウミネコ組織の水銀濃度と窒素安定同位体比を分析したところ,餌の栄養段階の違いを考慮した水銀濃度は繁殖期の水銀暴露を示す血液と非繁殖期の水銀暴露を示す風切り羽(PL10),胸羽,頭羽においてどちらも粟島の個体で有意に高かった.ウミネコは繁殖期では繁殖地周辺海域で採餌を行うこと,粟島の個体は非繁殖期には主に日本海側を,蕪島・弁天島の個体は太平洋側を移動していることを考慮すると,太平洋沿岸に比べて日本海で水銀濃度が高いことが示唆された.この結果は先行研究とは異なる新しい知見である.調査範囲が限定されているが,新潟県粟島や越冬域と推定される海域が水銀のホットスポットとなっている可能性が考えられる.非繁殖期期の水銀暴露を示す羽において,粟島で繁殖する個体は瀬戸内海や韓国の南海などで越冬するという報告があり,これらの地域で水銀を暴露した可能性が考えられる.また,生物個体の生物学的年齢の指標となる染色体の末端に位置するDNA部位のテロメアを測定したところ,水銀濃度が血液より肝臓では,同一個体内で肝臓のテロメアがより短縮したという,新たな知見を得ることができた.この結果は,低濃度の水銀汚染による高次捕食動物の生理的な影響としてテロメア短縮が起こることを示唆する.

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20H04379
ID情報
  • 課題番号 : 20H04379
  • 体系的課題番号 : JP20H04379