論文

2014年

大循環モデルの開発とその同位体境界条件への応答

水文・水資源学会研究発表会要旨集
  • 岡崎 淳史
  • ,
  • 芳村 圭

27
開始ページ
100002
終了ページ
100002
記述言語
日本語
掲載種別
DOI
10.11520/jshwr.27.0_100002
出版者・発行元
水文・水資源学会

本研究では,同位体の境界条件の違いがGCMの同位体再現結果に与える変化を定量的に把握するため,陸面における同位体分別と海洋における同位体比の時間発展を考慮する同位体GCMを開発し,これを調べた. 使用したモデルはMIROC5で,この大気陸面部に同位体比を導入した.行った実験は以下の4つである:陸面の同位体分別を考慮しない実験をコントロール実験(CTL),陸面の同位体分別を考慮した実験,海水同位体比の空間分布を考慮するが時間方向に一定とした実験(OCN1),時空間変化も考慮した実験(OCN2)である.海水同位体比の計算にはボックスモデルを使用した.このモデルは降水・蒸発・深層水との混合による同位体比の変化のみを計算し,海流などを考慮するものではない. コントロール実験の降水同位体比の気候値をGNIPと比較したところ,よく知られる同位体の基本的な特徴を確認することができた.SWINGに参加したモデルと比較すると相関は最も低く,バイアスも最も大きかった.水蒸気同位体比を比較したところ,モデルは空間的な分布の特徴をよく再現した.相関係数を他の同位体GCMと比較すると低いが,バイアスについては9‰で他の同位体GCMと比較しても好成績であった.以上の比較から,同位体MIROCは空間的な特徴はよく再現できているものの,他の同位体GCMと比較すると成績はやや劣ることが分かった.現段階では同位体に関するパラメタをチューニングしていないためこのような結果になったと考えられるが,さらなる改良が望まれる. 結果については水蒸気の最大のソースである海水の同位体比変化を考慮した場合の変化について記す.注目する変数は,海洋から大気への直接の影響を見るため,海洋起源である蒸発同位体比である.一様0‰としたCTLに比べると,空間分布を与えたOCN1,時間変動も考慮したOCN2では結果が大きく変化することがわかった.なかでも空間分布を与えた影響が顕著であった(CTLとの平均二乗誤差:RMS=2.4‰).一方で時間変動を考慮した影響はこれに比べると小さかった(OCN2とOCN1のRMS=0.6‰).この結果は同位体GCMにとって同位体境界条件の空間分布が重要であることを示唆する.これらの結果が降水同位体比の再現性にどう影響を与えるのか,陸面の影響はどうか等の詳細な比較については発表で述べる.

リンク情報
DOI
https://doi.org/10.11520/jshwr.27.0_100002
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/130005481922
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  • DOI : 10.11520/jshwr.27.0_100002
  • CiNii Articles ID : 130005481922

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