山形 聡志
基本情報
- 連絡先
- yamagatamizu-shori.com
- 研究者番号
- 80883206
- J-GLOBAL ID
- 201401087062110003
- researchmap会員ID
- B000237062
■ 専 攻 領 域:「実定法学(民法学)としての法論理学」[1] ■ 主要な研究業績:「契約の解釈の法証明論【7. 02版】」法論理学研究7巻2号(2023年)1-137頁 ,「法論理学の方法が民法学に齎したもの─太田知行『当事者間における所有権の移転』(1963年)」経営実務法研究26号(2024年)87-138頁 ■ 座 右 の 書:太田知行『当事者間における所有権の移転─分析哲学的方法による研究の試み』(勁草書房,1963年)■
拙稿「契約の解釈の法証明論【7. 02版】」においては,法的思考の根底をなす法論理の形式化としての証明系 Lω LC を定義した上で,当該証明系に基づく数学的枠組のもとで「完備契約/不完備契約」概念を再構築すると共に抽象契約モデルを定立いたしました。同モデルは「契約」概念が一般的に内包すると想定される論理構造を特徴付けたものであることから,その規定対象たる抽象取引スキームに更なる特徴付けを付与することによって,その照準を多種多様な契約カテゴリに絞り得ることが期待されるところでございます。そこで,かくの如き視⾓からの各論を考察した結果,以下の如き研究に結実いたしました。
(1)抽象取引スキームに対してその法的論点間の組織的な結合関係についての特徴付けを付与することで複合契約モデルを定⽴すると共に,それが複合契約に特徴的な性質をシミュレートすることを証明した(完備複合契約定理)。また,同モデルの射程が多角的契約にも及び得る要件についても,最判平8・11・12民集50巻10号2673頁への還元的な手法によって考察した。
(2)同モデルの延⻑線上に継続的契約モデルを定⽴すると共に,それが継続的契約に特徴的な性質をシミュレートすることも証明した(完備継続的契約定理)。また,かかる性質に鑑みて継続的契約を複合契約の部分契約カテゴリとして定義付けた上で [2] 構成契約間に観念される「依存性」概念を経済合理性の判断軸から解釈し,もって当該定義を裁判実務に則した態様において特徴付けた。
(3)いわゆる「2つの法的三段論法」論 [3] が2つの類型に分けて論ずるところの「法的三段論法」概念について抽象契約モデルの描き出すところの論理構造に鑑みて〈法証明論の立場〉から法的三段論法モデルとして再構成するによって同概念の論理構造を浮き彫りにし,もって同学説の法論理学説としての特色如何を闡明した。
この度公刊されました「法論理学の方法が民法学に齎したもの」は,太田知行『当事者間における所有権の移転─分析哲学的方法による研究の試み』(勁草書房,1963年)において実践されたところの法論理学の方法(構造的アプローチ)による所有権の移転時期問題についての基礎理論的研究を再考したものでございます。
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[1] 「実定法学としての法論理学」者は,嘗ては太田知行に,そして,近時はおそらく山形に限られるのが実状でございましょう。
[2] ウンベルト・エーコ(川島英昭訳)『薔薇の名前(上)』(東京創元社,1990年)の冒頭において,修道士ウィリアムが,彼の弟子たるアドソに対し,以下の如く語る場面がございます。
仮におまえが遠くから何ものかを認めて,それが何であるかわからなくても,ひとまずは大きな物体だと判断するにちがいない。そしてその物体が近づいてきたときに,今度はそれが動物であると判断するだろう。たとえまだそれが馬か驢馬かはわからなくても,やがてさらに近くへ,その動物がやって来たときに,それを馬だと言い切ることができるだろう,たとえまだ青毛か鹿毛かはわからなくても。そしてしかるべき距離に接近したとき初めて,それが青毛だ(すなわち何という名前でお前が呼ぼうとも,他の馬でなくてあれだ)とわかるであろう。そのときこそは,それが,つまり個体への直観が,完全な認識になるのだ。(同書47-48頁)
仮に,この「距離」を概念の抽象度をいうものと解することにいたしますと,「契約」概念につきましても,認識主体が観念するところの「距離」に応じてその態様が様々に異なり得ると考えられますところ,抽象契約モデルは,いわばその「距離」が最長になった地点において,当該主体によって認識される契約の態様を表現するモデルということができるでしょう。では,当該主体がその「距離」を詰めたときに,当該契約は,いかなる態様の法現象として認識されることになるのでしょうか。この問題を考えるに際しましては,その前提として,あらかじめ諸契約カテゴリ間の〈タテ,ヨコの関係〉(この概念につきましては,小粥太郎「法的カテゴリの機能」『民法学の行方』(商事法務,2008年)83-114頁参照。)を明確化し,座標系上に各契約類型を位置付けておく必要がございましょう。と申しますのは,かくの如き認識は当該契約の性質決定の過程を経て醸成されるものであるところ,性質決定をするにおきましては,当該座標系を参照とせざるを得ないためでございます。本研究は,「継続的契約」概念を対象として,「複合契約」概念との〈タテ,ヨコの関係〉を考察し,もって同契約カテゴリの座標系上の相対的な位置付けを図ることを目的とするものでございます。
[3] 得津晶「法科大学院の教室における2つの法的三段論法」東北ローレビュー11号(2023年)2-29頁 をご参照ください。
論文
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経営実務法研究 (26) 87-138 2024年3月 査読有り筆頭著者
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法論理学研究 7(2) 1-137 2023年5月3日 筆頭著者
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経営実務法研究 (24) 83-104 2022年3月 査読有り筆頭著者
MISC
2-
2021年4月20日
講演・口頭発表等
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日本経営実務法学会第26回総会 2023年8月5日 日本経営実務法学会
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日本経営実務法学会第24回総会 2021年8月7日 日本経営実務法学会
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日本経営実務法学会第23回総会 2020年8月1日 日本経営実務法学会